よく言葉をかわすようになったけれども、
そういえば一度も聞いていなかった
カーリーとビリヤードの出会い。
後に世界チャンピオンになることに
なる赤狩山少年は、中1のある日、
いつものようにゲームセンターへ
テトリスをやりに行ったーー。
取材・写真・文:B.D.
ーービリヤードに出会ったのはいつですか?
中1ですね。偶然の出会いでした。よく行っていたゲームセンターがある日ビリヤード場になっててね。ゲームしようと思って行ったら、ビリヤードがあったという。
――ちなみに赤狩山少年が好きだったゲームは?
テトリス。安く長く遊べたから(笑)。
――突然そこに出現したビリヤード台を見て「じゃあ、やるか」と?
そう、友達と一緒に「じゃあやってみるか!」と。
――その時すぐに面白いと思いましたか?
そう……だったと思います。「音がいいなぁ」と思ったことは覚えてます。
――音。
ボール同士の当たる音も良かったし、的球がポケットに入る音も良くて、その音にすぐ惹かれました。
――その時はどんなゲームを? ナインボール?
ゲームをやったのかな? 覚えてないなぁ。見様見真似で何かをやった気はします。そして、結構強く撞いてたと思う。
――今のスタイルから全く想像できない(笑)。それはなぜ?
音を出したくて。ほら、今でも一般のお客さんでいるじゃないですか。とにかく強く撞いて、大きな音をさせる人。あんな感じです。僕、すごいうるさかったやろうなぁ(笑)。
――意外でした。その日以来、ビリヤードにどっぷりと?
何回かやる内にハマっていった感じですね。同じ店に繰り返し行って。
――まだあるんですか? そのお店は。
もうないんですよね。
――バッチンバッチン撞いてた赤狩山少年は、いつプレイヤーっぽくなっていったんですか?
その後、そのお店のアルバイトの人に教わってからかな?
――巧い人?
ちゃんとした経験者です。その人は強く撞いてなかったんですよ。「どうやってるんだろう?」ってチラチラその人の方を見たりしてね(笑)。その後、その人と喋るようになって色々と教わって。
――その頃教わったことって今も残っていますか?
そんなにないかなぁ(笑)。その時から身長も伸びたからフォームも違うだろうし。
――当時、何を目標に撞いてたんですか?
「巧くなりたいな」です。巧くなっていくことが面白かったですし。
――ビリヤードのプロがいて、競技の世界があるってことは知ってましたか?
中3の時には知ってましたね。奥村健プロとか戸田孝プロとか、有名なプロの名前も知ってました。
――そうだったんですね。
中3の時、プロの試合も見に行きましたからね。その時のファイナルが片岡久直プロとロサリオ(フィリピン)だったことも覚えてます(笑)。その頃僕はBクラスぐらいになってましたけど、「ああ、プロってすげーなぁ」と驚きました。
――その10年後、自分が24歳でプロ入りすることは想像できた?
まさか(笑)。その時はまだこの道に来るとは思いもしなかったですよ。
始めた当初と今ではプレースタイルは
だいぶ違うと本人は語る。
では、ビリヤードに対する想いは
どうだろうか?
――ビリヤードを始めた頃と今、ビリヤードに注ぐ情熱に変化はありますか?
いや、そんなに言うほど変わってないです。純粋に楽しくて、面白くて、巧くなりたくて。これは昔も今もそう。その時その時の「一歩上の世界」を見たくなるところも変わりません。Bクラスで撞いていたらAクラスになりたくなり、Aの時はプロの世界を見たくなり、プロになってからは海外で戦いたくなるという。
――今はビリヤードのどんなところに魅力を感じていますか?
自分の考えと実際のプレーが一致するかどうかというところかな。例えば、ナインボールで1番から9番まで取り切って行くその取り方も、考えたプラン通りにできた時は嬉しい。
――取り切れたら結果オーライではなく?
そうですね。考えたプラン通りにならなかった時は、頭と腕、どっちに原因があるのか。そこを分析します。
――例えば、あの優勝した世界選手権のファイナルの時は、頭と腕は一致していた?
世界選手権の時? あんなん全部違いますよ!(笑) 最後の8番と9番だけですよ。
――単純に、今も的球が入ったら「楽しい!」って気持ちはあるんですか?
うーん、昔はそうだったと思いますけど、今は楽しみ方が変わってきたというか。ああ、でも、勝てば楽しいですよ、それは。でも、それだけでは物足りなくなって、より内容を見るようになったんでしょうね。自分で「うむ」っと頷けるようなプレーができた時が嬉しいですね。
――それはよく実現できているんですか?
いや、なかなかないです。難しいですよ。でも、それを増やしていかないと「形」ができませんから。
――最後に、ビリヤードを始めたばかりの人に向けて、上達のコツを教えてもらえませんか。
間隔を空けずに撞くことです。球を撞く数、撞く時間を増やすことです。それと、できれば誰かに教わった方が良いです。フォームやキューの持ち方など最低限だけでも。
――その心は?
ビリヤードはまともに手球を撞けないと面白くないので。そこだけでも早く越えた方が良いと思います。
――そこを越えた人にはどんなアドバイスを?
僕もそうでしたけど、自分より巧い人と一緒に撞くことでしょうか。巧い人のプレーを見て、撞き方やボールの動かし方を頭にインプットすることです。それを一人の時に練習すると良いと思います。
――ありがとうございました。
赤狩山幸男プロはこんな人→
2011年ナインボール世界チャンピオン。
ニックネームは「カーリー」。
1975年3月13日生まれ。
大阪府出身・東京都在住。
JPBA(日本プロポケットビリヤード連盟)32期生。
所属・スポンサーは、
TⅡFactory、Kamui、JAPAN FOOT WEAR、BAGUS、Just Do It、JPA