喜島安広・第62期名人位

待ち望んでいた対戦。想像していた長丁場

2023年9月

 

 

2014年2017年の球聖位決定戦と

2019年の名人位決定戦。

 

今回も過去の名勝負に勝るとも劣らない

見応え十分の激闘となった。

 

ゲームボールを入れた直後、

防衛に成功した喜島安広は

安堵の表情で拳を振り上げた。

その姿はまるで初タイトルを

手にした挑戦者のようだった。

 

敬愛する大坪和史との対戦が楽しみで、

「最近ないぐらい練習していた」

という喜島名人。

 

本番では思うようには撞けなかったが、

そんな自己を受け入れた上で

出せるものは振り絞ったかのような

充足感が、その表情に現れていた。

 

→ レポートはこちら

 

練習とは違い、本番が始まったら全然で(苦笑)


 

――今回も大激戦になりました。

 

喜島:大坪さんとの決定戦は毎回こうなりますね。とにかく今はホッとしたというのが率直な気持ちです。

 

――疲れは?

 

喜島:全然なくて、まだまだやれます。今日は体力的には最後まで良い状態のまま撞けたと思います。

 

――フルセットまで行くことは想定していましたか?

 

喜島:そうなることも覚悟してました。今日の前半は自分があまり良くなかったですけど、後半少しずつ良くなってきたと思います。今回は大会前にだいぶ練習していて、自分では「今回はいけるかな」と結構手応えがありました。でも、始まってみたら全然で(苦笑)。緊張もありましたし、選択ミスもちょっと多かったなと思います。

 

――ブレイクショットには終始苦しんでいた印象です。ノーインが多くありました。

 

喜島:そうですね。練習の時もなかなかブレイクの入る場所や打ち方が見つからなかったし、今日もあんまり合ってなかったですね。ツー出しの時に手球の場所(「現状ブレイク」のための手球ポジション)を変えてみたり、ブレイクキューを2本持っていたのでキューを変えながら打ってました。「あ、入りやすくなったな」と思った時もあったんですけど、その逆もありましたし、結局わからずじまいでしたね。

 

――2-3から3-3に追い付いた第6セットあたりから、球の状態が良くなっていたように見えました。

 

喜島:あのあたりでだいぶ感覚的に合ってきたかなっていう感じはありました。でも、その一つ前のセットかな。僕がブレイクノーインを2回したり、5番でセーフティミスをしたセットがあると思うんですけど……

 

――ええ、第5セットですね。

 

喜島:あのセットは自分の得点は低かったですし、大坪さんに取られてますけど、自分としてはあのセットから良くなってきたかなと思います。

 

最後は無茶攻めに思える球も決まってくれました


 

――喜島選手は以前からBDのインタビューでも大坪選手へのリスペクトを公言しています。今回大坪選手と対戦することが決まった時、どう思いましたか?

 

喜島:楽しみにしていました。すごい選手だということは言うまでもないですし、負ける可能性が一番高い方だと思ってます。2019年にも名人位決定戦で対戦して、その時は僕が防衛できました。2020年はコロナで開催されなくて、2021年は大坪さんが挑戦者になられたけど、腰痛の影響があり辞退されました。今回大坪さんが挑戦者に決まってから(8月『A級戦』勝利)、僕は1日も欠かさず練習してました。「大坪さんがここに座ってる」というイメージもしながら。いざ本番が始まってみたら予想以上に僕がダメだったんですけど……(苦笑)。

 

――大坪選手と久しぶりに撞いてみていかがでしたか?

 

喜島:球の内容的に大坪さんの方がきれいというか美しかったと思います。大坪さんの腰の状態は、『A級戦』(8月)の時はキツそうに見えたんですけど、今日は大丈夫そうに見えました。

 

――喜島選手から見て大坪選手のどういったところが参考になりますか? 技術的にでも、それ以外でも。

 

喜島:まず、技術的には「球なり」の取り方が美しいというか、間違えることがなくて、ポジションの距離感が絶妙だと思います。僕も練習では近くに出せてるなと思うんですけど、試合になるとやっぱり遠くになりがちです。大坪さんは……本当にご本人が狙った形になってるかどうかは僕にはわからないですけど、それをきれいにやっているように僕には見えます。佇まいもあんまり緊張してないように見えるというかポーカーフェイスというか、すごく落ち着いて見えますね。

 

――喜島選手自身が良かったと思うセットや印象に残っている場面とは?

 

喜島:今日は印象に良い意味で残っている場面はあまりないです。だから……やっぱり最後のセット(第9セット)になっちゃいますね。ツイてたなと思いますけど、無茶攻めに思える球も全部上手く決まってましたし、よく取り切れたなと思います。例えば、3マス目で7番と手球がくっついたけど7番がそのままサイドに狙えたり、4マス目でジャンプで2-6キャノンを入れた後、2番がピンポイントで見えてたり……。そういうショットがすごく大きかったなと思います。

 

――ちなみに、名人位決定戦が近付くと練習ではローテーションだけ撞くんですか?

 

喜島:今回はそうでしたね。SPA(埼玉ポケットビリヤード連盟)の方が何人かローテーションを付き合ってくれましたし、一人で撞く時もほぼローテーションでした。

 

結局はまだ技術不足なんだと思います


 

――名人位決定戦は名人のホーム店(所属店)で開催します。テーブルコンディションへの慣れという意味では名人にアドバンテージがあります。しかし、当日は応援団やギャラリーも多く詰めかけますし、コンディションは変化するのでしょうか?

 

 

喜島:今年は……今日のテーブルはたぶん誰が撞いても撞きやすいと思うコンディションだったと思います。ただ、その場でニューボールをおろして使うので、慣れているテーブルとはいえどうしても球の動きに違いはありますし、練習と同じ感覚では撞けません。

 

――今回の勝利で名人位在位が通算6期目となりました(2014、2018、 2019、2021、2022、2023)。そして、4期連続防衛です。

 

喜島:何連続とか何期というのはあまり気にしてないですけど、応援してくださる方がいますし、防衛できると喜んでもらえますので毎回嬉しいです。毎年決定戦の日が近付くたびに寿命が縮まる思いはしてますけど(笑)。

 

――喜島選手が今後磨いていきたい部分とは?

 

喜島:今回は練習と本番でかけ離れた内容になってしまったので、まずその理由を追求したいです。さっきも言ったように、今回は今までの決定戦の前よりも練習してました。でも、当日になるとこうなってしまう。それは結局は技術不足なんだと思います。だから、純粋にまだまだレベルアップしていきたいですし、時間があればオープン戦などプロの試合にも今まで以上にチャレンジしたいと思っています。

 

――わかりました。最後に応援してくれている方々へのメッセージをお願いします。

 

喜島:毎回同じような内容になってしまいますが、『セスパ東大宮』と『5&9』のお客さん、SPAの皆さん、他県から応援に来られた方々、そして運営の方々。皆さんには本当に感謝しかないです。こうやって皆さんに見守っていただいている中でビリヤードができることは本当に幸せなことだなと毎年感じています。今年はSPAメンバーの建川(雄司)選手の敵討ちもできて良かったです(※『A級戦』の敗者最終で建川選手が大坪選手に敗戦)。また来年も防衛が出来るように腕を磨きます。今後もよろしくお願いします。

 

(了)

 

 

喜島安広 Yasuhiro Kijima

 

1983年1月7日生 埼玉県出身・在住

所属:『セスパ東大宮店』、『5&9』(ともに埼玉)、SPA

プレーキュー:ミステリーブラック(シャフトはノーマル、タップは締めたブルーナイト)

ビリヤード歴:約25年

現在ある「アマ個人全国タイトル」6つ全てを獲得↓

『第55期、第58期、第59期~第62期名人位』

『第19期~第22期、第26期、第27期球聖位』

『プレ国体』(全国アマチュアビリヤード都道府県選手権大会)

『アマローテ』(全日本アマチュアポケットビリヤード選手権大会)

『アマナイン』(全日本アマチュアナインボール選手権大会)

『マスターズ』優勝5回

また、2016年、2017年、2022年『都道府県対抗』の優勝メンバー(埼玉県。SPA)

 

 

※喜島名人の過去の談話記事も多数掲載。

「聞いてみた!」の他のインタビューはこちら

 


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