小宮鐘之介・第30期球聖位

「テンポとシュート」際立つ初防衛

2022年5月

 

もし敗れていたら――。

 

コロナ禍のイレギュラーな

日程のせいではあるが、

2021年秋戴冠→2022年春失冠で

球聖戦史上最短の

「在位期間・半年」となる

可能性もあった小宮鐘之介。

 

それは本人も認識していたはずだが、

蓋を開けてみれば、

第30期球聖位決定戦』で小宮は、

 

まるで何年も在位している

ベテランのように、

序盤から小気味いいリズムで

正確なショットを放ち続け、

落ち着いてゲームを作っていた。

 

毎セット先行し、

競り合う場面をほとんど作らず

5セット連取での初防衛。

そこに冷静で周到な気構えを感じた。

 

 

これでまたあと1年球聖位でいられるのも良かった


 

――『球聖位』初防衛に成功しました。

 

小宮:自分のホームグラウンド(千葉『エニシング』)で防衛できて嬉しいです。去年の秋に球聖位になって半年しか経ってなかったので、これでまたあと1年球聖位でいられるのも良かったです。

 

――最後はまさかの9番フロックという結末でした。

 

小宮:あの1番から2番にポジションする時に手球が9番に軽く触るのはわかっていました。1番が外れて、まさかあんな当たり方で9番が入るとは……。さすがに申し訳ない気持ちもありましたし、応援してくれた人達には「フロックかよ!」と突っ込まれましたけど(苦笑)、あれが9ボールというゲームなのかなと思います。

 

――昨年11月に球聖位になり、わずか半年での今回の防衛戦でしたが、球聖位という立場で過ごしたこの半年は?

 

小宮:たまに周りから茶化される感じで「球聖」と言われることはありましたけど(笑)、自分ではそんなに意識してなかったですし、特に心境の変化もなかったです。『防衛戦は5月か。すぐその日が来るんだろうな』ぐらいで。

 

――本番に備えてどんな練習や準備を?

 

小宮:回数は撞いてましたけど、だいたい普段通りで特別なことはしてないです。ただ、1ヶ月ぐらい前はあんまり調子が良くなくて、そのまま撞き続けてもすぐには直らなさそうだったんで、スリークッションを撞いてました。前から状態が良くない時にはたまにやってます。

 

――それは気持ちのリフレッシュの意味で?

 

小宮:いや、キャロムのボールってポケットより大きくて重いじゃないですか。だから、自分のタッチを確かめたり回転を上手く掛けられるように意識したりするのにすごく良くて。スリークッションをやると自然とポケットの感覚も良くなっていくんです。

 

自分がゼーゼーしてたら応援団に心配かけちゃうので


 

――迎えた本番。5セット連取でスピーディーに勝負を決めました。高いレベルで安定したプレーを続けていたように思いますが、自己評価は?

 

小宮:自分ではめちゃめちゃ良かった訳でも悪かった訳でもなく、普通ぐらいだったのかなと思います。展開が良くて毎セット僕が先行できてましたし、競り合う場面はそれほどなかったから、周りから見ると良い感じに撞けていた様に見えたのかもしれないです。

 

――もし相手に先行されたり追い込まれたりしていたら……

 

小宮:また違ったものになっていたと思いますし、もちろんそうならないようにしたいと思ってました。自分のミスがきっかけで追い込まれたりしないように丁寧に撞いていた感じです。かといって時間を掛けすぎるといろんな選択肢が出て来てしまうので、最初にイメージしたものをちょっと深く考える程度にして、全体的に早めのペースで撞くようにしてました。

 

――確かに一定の早めのテンポでした。

 

小宮:テンポとシュートで応援団を盛り上げたいという気持ちもありました。自分がゼーゼーしながら撞いてたら応援団に心配かけちゃうので、出来ることならシュッと撞いて勝ちたい。悩みすぎるのは良くないなと。特に新ラシャは悩んだらどんどん難しくなっていくものだと思うので、例えばポジションにしても、精度にこだわるよりも、OKな範囲を広く考えて、広めに取って次の球で頑張ればいいと思ってました。なるべく早めでパパッと撞いて、必要なところだけ考えようと。それが上手く行ったのかあまり難しい球にならなくて、エクステンション(時間延長)を使うこともなかったです。

 

――そうでした。エクステンションを使ってない。

 

小宮:早撞きを意識してた訳じゃなくて、ポジションとかある程度妥協するところは妥協して、難しく考えすぎないようにしていたら早くなったという感じです。試合前からなんとなくそうしようと思ってました。

 

なるべく下めの撞点で組み立てようと決めていた


 

――他にも試合でのテーマはありましたか?

 

小宮:テーマというほどでもないですけど、テーブルコンディションを観察しながら撞いてたのが良かったのかもしれません。ラシャを張り換えたのが金曜日(前々日)で、事前にあのコンディションではそんなに長い時間撞けなかったんです。なので、試合中は落ち着いて相手と自分の球の動きを見ながら撞いてました。それが良かったのかなと思います。

 

――ホーム台だけど新しい台のような。

 

小宮:そうです。新ラシャに張り変わったし、色も変わったので(グリーンからブルーへ)、それまでの台の癖とか景色とかは全然通用しないと思ってて、完全な新台に向き合うような感覚でやってました。そのおかげか、試合中のテーブルコンディションの変化にも割と落ち着いて対応出来たと思います。

 

――新ラシャへの対応に手を焼いている様子もさほどなかった印象です。

 

小宮:新ラシャはちょこちょこ撞いてるのと、個人的には例えばクッションでの回転の死に方とか、カーブの出方とかがキャロム台に似てるところがあるなと思っているので、それでイメージしやすかったのかもしれないです。他の人よりは少しは新ラシャ特有の動きに慣れてるのかもしれません。

 

――技術面で良かったなと思う点は?

 

小宮:新ラシャの話に繋がるんですけど、押し球って新ラシャでは動きが読みにくいし、イメージと変わりがちな球だと思ってます。バンクなんかもそうですよね。だから、今回はなるべく下めの撞点で組み立てようと試合前から決めていて、結構その通りに撞けました。割合で言ったら8割ぐらいは下めの撞点。押し球を少なくしたことで、自分にプレッシャーを掛けずに済みました。

 

――逆に、今回あまり良くなかった点は?

 

小宮:セーフティです。上手く撞けたのもあるんですけど、悪くなったのが多かったです。自分なりに動きを読んで撞いたセーフティが、クッションで思ったほど死んでくれなくて出て来ちゃったり……たぶんセレクションも良くなかったんでしょうね。セーフティをもうちょっと上手く決められたら、もっと自分の展開に出来たのかなと思います。

 

――1日の中で印象に残っている場面は?

 

小宮:第2セットの中盤です。僕が4-1とリードして、次のラックで僕は試したいブレイクがあって、それで打ったらイリーガルになりました。そこから相手が取り切り・マスワリで1点差まで追い上げて来た。そして第8ラックは僕のブレイク。僕は「ちゃんとブレイクを当てて、展開を作るなりマスワリするなりしてまた差を広げよう」と思ってたんですけど、そのブレイクが完璧に近い感じで決まったんです。

 

――そしてマスワリで5-3にしました。

 

小宮:しっかりマスワリできた時に『今日はいける』と自信を持てました。ブレイクを含めてあれがあの日一番良かったひとマスだったと思います。あそこで思った通りにちゃんと撞けたから、それ以降も苦しんで撞くようなことがなかったと思います。

 

応援団はみんな良い人達だなって改めて思いました


 

――『エニシング』には観客席スペースも設けられ、特別感のある舞台になっていました。応援団の拍手は力になりましたか?

 

小宮:はい、前回(2021年球聖位決定戦。『AZ Place』開催)よりも多くの人に間近で見てもらえたし、暖かい雰囲気で見守ってくれたので、とても力になりました。お酒が好きな人達なんで大丈夫かなという心配もありましたけど(笑)、プレー中は静かに見てくれてましたし、やっぱり皆すごく球が好きなので、お店での開催を楽しんでくれたと思います。セットの合間の休憩の時は、僕も含めていつも通りワイワイやって過ごしてましたけど、みんな良い人達だなって改めて思いました。

 

――防衛を達成した今、次の目標は?

 

小宮:特にこれというものはないですけど、大きく自分のスタイルや意識を変えていこうとは思ってないので、このスタイルのままプレーし続けて、次回も球聖位を防衛出来たらと思います。他は……大きい大会に出ながら目標を設定したいと思います。とりあえずは『全関東』や『マスターズ』に出る予定です。

 

――わかりました。最後に応援団に向けて一言。

 

小宮:来年また『エニシング』で防衛戦があるので、また今回みたいに応援してもらえたら嬉しいです。それまではみんな、お酒を飲みすぎず、体を壊さないように気を付けてください(笑)。来年もよろしくお願いします。

 

(了)

 

 

Shonosuke Komiya

1994年12月6日生まれ・東京都出身

所属店:『ANYTHING』(千葉)

プレー歴:約15年

職業:会社員

プレーキュー:『EXCEED』(シャフトは『Z-2』、タップは『エルクマスター』)

ブレイクキュー:MEZZ『POWER BREAK G』

ジャンプキュー:『J. FLOWERS』ジャンプ&ブレイクキューをジャンプ専用で使用

タイトル:

アマ『球聖位』(第29期&第30期)

アマ『全関東』優勝

アマ『9ボールクラシック』優勝

プロトーナメント『Grand Prix East』準優勝1回(2016年)、

他、入賞多数

 

※2021年球聖位初戴冠時(第29期)のインタビューはこちら

 

 

※「聞いてみた!」の他のインタビューはこちら

 


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