東京オリンピックと足並みを揃えて
1年延期になっていた
初めて日本代表としてワールドゲームズに
出場した平口結貴は、
プール女子9ボールで銅メダルを獲得した。
自身初・日本女子ビリヤード選手初の
ワールドゲームズでのメダルとなった。
帰国した平口は、メダルを獲れた安堵感と
金に届かなかった悔しさをにじませながら、
千々に乱れていた試合中の心境を明かしてくれた。
※こちらは【前編】です。【後編】はこちら
――おかえりなさい。銅メダル獲得おめでとうございます。メダルはどうやって持って帰ったんですか?
平口:ありがとうございます。メダルのケースはなかったので、裸のままカバンに入れて機内持ち込み手荷物で持ち帰って来ました(笑)。
――銅メダルを獲得して2、3日経ちました。今、平口プロの中にある思いとは?
平口:一番欲しかった色ではないですが、メダルを獲れたことは嬉しく思っています。準決勝で負けた直後はすごく落ち込みましたけど、銅を獲れるかメダルなしで終わるかでは大きな差があると思ったので、なんとか気持ちを整え直して3位決定戦に臨みました。接戦になりましたけど、終盤はよく撞けて銅メダルを獲れたので、そこは自分を褒めてもいいかなと思っています。
――普段のビリヤードの大会のトロフィーと、ワールドゲームズという総合競技大会のメダルは重みが違いますか?
平口:そうですね。ビリヤードが総合競技大会の種目になることは少ないですよね(※下記)。今回初めてワールドゲームズに出場しましたが、4年に1回しかない大会ですし、日本代表として出る大会なので、本番に向けて自然と力が入っていたと思います。
(※近年日本のビリヤード選手が出ている総合競技大会は『ワールドゲームズ』、『アジアインドア&マーシャルアーツゲームズ』、『ユニバーシアード』など。『アジア大会』では2030年『ドーハ・カタール大会』でビリヤードが復活する予定)
――バーミングハムの街の雰囲気は?
平口:もう街をあげてのお祭りみたいな感じでした。色々な所で競技が行われていて、選手もスタッフも観客も多くて、ビリヤードの会場にも多くの人がいました。開会式・表彰式・閉会式もしっかりと行われていて、いつものビリヤードの大会とはかなり違う雰囲気でした。オリンピックはもっと規模が大きいと思いますけど、私にとっては今までで一番大規模なスポーツイベントだったので全てが新鮮でした。
――平口プロは今までアメリカには?
平口:今回が初めてでした。アメリカの人もスポーツが好きな人が多くて、結果を残すと認めてくれるんだなって実感しました。私が勝ち上がるにつれて観客がどんどん話し掛けてくれたり、「Good Luck!」って応援してくれたりしました。
――向こうで体調は?
平口:身体のコンディションはずっと良くなかったです。ご飯をちゃんと食べられなかったし、時差ボケ対策も上手く行かなくて、どこにいてもずっと寒さを感じてました。会場も宿舎も移動のバスも全て寒かったです(苦笑)。
――選手宿舎はシングルルームでしたか?
平口:ケリー(・フィッシャー。イギリス。金メダル)とブリタニー(・ブライアント。カナダ。5位タイ)と3人で1部屋でした。リビングが真ん中にあって周りにそれぞれの寝室があるんですけど、ケリーが「部屋のベッドが合わなくて腰が痛い。ソファで寝る」と初日に言い出して、それから毎晩ソファーをベッドメイキングして寝てました(笑)。大会が終わってケリーに「ずっとリビングのソファで寝てたけど優勝出来た!」って言われた時、私は「すごいね!」としか言えませんでした(笑)。でも、あの部屋から2人メダリストが生まれたのは不思議な感覚です。
――今回プール競技のテーブルはRASSON(ラッソン)でラシャはANDY(アンディ)でした。
平口:私は新品のラッソンに新ラシャを張った状態で撞いた経験がなかったので初めは緊張していました。ボールの動きを観察しながらなんとか合わせられたという感じです。たくさん海外で撞いている人ならなんてことないのかもしれませんが、自分ではよく対応出来たなと思います。
――4試合プレーしました。内容の自己評価は?
平口:「銅メダル獲ったのにその点数?」って思われるかもしれないですけど、大会トータルで35点~45点ぐらいです。どの試合も気持ちのアップダウンが激しくて全く満足は出来ません。
――ベスト16(vs モルルディー・カセンチャヤナン)は9-0の完封勝利でした。
平口:スコアはいいですけど、自分の状態は全く良くなかったです。ただ、頭はちゃんと回っていて攻守の判断もよく出来ていたし、セーフティが上手く決まっていたのが大きかったと思います。相手どうこうは関係なく、しっかり順序立てて考えられていました。
――ベスト8(vs オリビア・ザレフスカ。9-6)は?
平口:今回一番良くなかったです。気持ちの波がすごく大きくて、試合中は「ここで勝てばメダルにかなり近付くな。いやダメダメ、目の前の球に集中しないと…。金メダル、獲りに来たんだろ。いや、メダル獲れなくてもいいからまず準決勝に行きたい」……本当にこんな感じで揺れまくってました。
――それでも勝てたのは?
平口:ベスト16と同じで大事な所での判断が良かったと思います。日頃から「ここがキーポイント」とか「ここ、しっかり考えよう」と頭を働かせながら練習するようにしているんですけど、それが活きたと思います、あんな精神状態でも(苦笑)。
――身体に刷り込めていたのかもしれないですね。
平口:そうかもしれません。それで言うと、以前は撞く時に「あ、今身体が動いたな」と思った時はだいたいインパクトする前に上半身が上がっていてミスに繋ってました。でも、今は「動いた」と思っても、インパクト後に体が上がっていてショットには影響してないことが多いです。そんな感じで「普段のプレー」の質が良くなっている実感はあります。
――そして、準決勝(vs ケリー・フィッシャー。5-9)。
平口:準決勝も気持ちが不安定で、自己採点すると25点ぐらいから始まって終盤は75点ぐらいまで上がったんですけど、上がり切った頃にはもう間に合わなかった感じです。
――序盤からケリーに走られましたね。
平口:交互ブレイクで最初にケリーがマスワリ。2ラック目は私のブレイクでスクラッチ。その後も私のブレイクは全然当たらなくてイリーガルばっかりで、完全にケリーのペースになってしまいました。私はそれまでと同じように、「セーフティを挟みながら上手く繋げて行こう。きっとターンは回って来る」と思いながらやってたんですけど、今のケリーはどんな局面でも落ち着いてますね。ハイレベルなセーフティ戦だと私の方がキャパオーバーになる時もありました。
――ラックはレフェリーラック?
平口:そうです。最初だけレフェリーが木ラックで組んで、コンコンと的球を叩いてラシャに跡を付けて、それからは手ラックでした。大会序盤はラックチェックが出来たので少しは割り方を考えられたんですけど、途中からラックチェックが出来なくなったので、もう「入ってくれー!」って運勝負でした。私はイリーガルが少ない方だったんですけど、準決勝では前半だけで3回ぐらいしましたね。「呪われてんのかな」と(笑)。
――そのラックだとどのプレイヤーもブレイクに苦しんだでしょうね。
平口:そう思います。でも、ケリーは準決勝の初めからブレイクがいい感じでした。私も途中で気持ちを切り替えたらブレイクのタッチ感が良くなり、球が入るようになってマスワリも出るようになりましたけど、そうなるのが遅かったです。
(前編・了)
【後編】はこちら
…………
Yuki Hiraguchi
JPBA50期生(2016年プロ入り)
1997年7月11日生
北海道出身・東京都在住
アスリート事務所 A’s land所属
所属店:NIKKA5(東京・武蔵小山)
主な戦績:
アマ時代:
2013年『全日本ジュニア』
(JOCジュニアオリンピックカップ)優勝
2013年『世界ジュニア』(南アフリカ開催)準優勝
2015年『アマナイン』優勝
2015年『アジア選手権』ジュニア女子の部3位
2016年『第8女流球聖戦』球聖位
プロ入り(2016年7月)以降:
2016年・2020年『関東レディースオープン』優勝(2016年大会は最年少優勝記録)
2017年『ジャパンオープン』優勝(女子の部最年少記録)
2018年『東海グランプリ』優勝
2019年『全日本女子プロツアー第2戦』優勝
2019年 中国『CBSAツアー 泰順戦』3位、同『北京 密雲戦』3位
2022年『大阪クイーンズオープン』優勝
2022年『ワールドゲームズ2022 バーミングハム』プール女子9ボール銅メダル
使用タップ:BIZEN
使用キューケース&グローブ:3seconds
公式サイト: https://www.asland.co.jp/
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