先日、「飴色の先角」というタイトルで、
仲間のキューの画像をアップしました。
アメリカの人気カスタムキュー、サウスウェストです。
その先角(さきづの)が濃い黄色になっていて、
僕は「もともと白い素材の先角も、
20年以上経つとこんな飴色になるのか」
というようなことを書きました。
そうしたら、
「そうではありませんよ。元々ああいう感じの色なんです」
と、その日の内に複数の方が教えてくださったのです
(皆さん優しくご指摘を……。感謝です)。
その中のお一人は、僕も面識のある方……というか、
取材をしたこともお酒を呑んだこともある方でした。
大阪府泉佐野市のビリヤード場『サウスサイド』の店主であり、
(※正確には元JPBAプロの荒木彰彦氏との共同経営です)
今年の『球聖戦』の西日本代表にもなった永井博明さんです。
実は永井さんは、
本職のキュー職人と遜色ない技術を持つクラフトマンでもあり、
オリジナルカスタムキューの製造販売も行っていました
(今はほとんど作っていないようですが)。
現在の自分の使用キューも「自作キュー」です
(「名前はないんです」とのこと)。
ということで、永井さんとのやり取りを以下に再現。
…………
「B.D.さん、あの飴色の先角の素材は、
アメリカのウェスティングハウス社が
製造していたミカルタ(マイカータ)材です」(永井)
――あっ、そうなんですね。
初めからあんな濃い飴色なんですか?
「いや、元々はもう少し薄い黄色で、
あそこまで濃くなったのは経年変化です。
アメリカではこの会社のミカルタを
『イエローマイカータ』って言いますね」
――先角の材料として当たり前の部類なんでしょうか?
「1970~80年代後半には
多くのキューメーカーで使用されていました。
ショーン、シュレイガー、ロビンソンなど。
先角だけでなくジョイントやインレイ材にも
使用されていました。
ですが、発ガン性物質が含まれているらしく、
1980年代の終わりに製造中止になったと思います。
今では貴重な材料です」
――なんと、発ガン性……!?
「キューを普通にプレーに使うだけなら
まず心配はありません。
(※加工する際に出る削りカスなどが
大量に人体に入ったら危険性があるという
ことだと思われます――B.D.註)
サウスウェストは1982年~88年くらいまでは
このミカルタを先角に使用していました。
その後、1988年~92年くらいまでは
他社のミカルタ材を先角に使用していましたが、
割れやすかったみたいで、
1992年からは
リネンベースドメラミン樹脂を使用しています。
これは今でもそうです」
――永井さんから頂いた写真(下)に写っているのは、
そのウェスティングハウス社のミカルタですか?
「そうです。
僕が持っているものをiPhoneで撮ってみました。
奥の薄い黄色い先角材は
グレッグ・ロビンソン(ロビンソンキュー)から
わけてもらったものです。
右手にある、天面に『14.8』と小さく書いてある
他のより濃い黄色の先角材は、
13年前ぐらい前にサウスウェストの
ローリー・フランクリンさん
(創業者:ジェリー・フランクリンの奥さん)から
わけてもらったモノです」
…………
ちなみに下の写真、
奥側の背の高いのがポケットキュー用の先角で、
手前側の、中心部にネジのミゾが見えている
背の低い先角はキャロムキュー用のものです。
うーん、どれもスモークチーズみたいで美味しそう……。
永井さん、
正しい知識を授けて下さってありがとうございました。
今回、こうして飴色の先角のナゾが解けました。
そのことはもちろん嬉しいのですが、
それ以上に、永井さんというビリヤード人の
マルチな才能に改めて驚いております
(球聖戦西日本代表になった時も仰天しました)。
思えば宴席が初対面でした。
「ガハハハ!」と豪快に笑っておられる姿しか印象になく、
その時は、強いプレイヤーであることや
クラフトマンであることを知りもしませんでした。
永井さん、お許しください^^;