ナインボール世界チャンピオンの
「カーリー」こと
赤狩山幸男プロ(JPBA)に聞く、
「新(さら)ラシャでの手球の動き」
シリーズの第3弾です。
今回は、第2弾の最後に出てきた
問題の答え合わせです。
問題を再掲します。
ナインボールの残り2球(8&9)という設定。
さて、「さらラシャでは8から9にどう出すの?」。
ある程度以上使われてきた「普通のラシャ」なら、
カーリーは撞点だいぶ下+右ヒネリ多めの、
いわゆる「順下いっぱい」を撞いて8番を入れ、
引きとヒネリでしっとり引っ張って、
2クッション目を『X』から『Y』の間に入れて
止めます。それが下図。
9番に対してフリは付いていますが、
入れるだけなら問題のない配置です
(そう、プロならね)。
…………
では、順下で引っ張っても
サイドスクラッチする危険性が高い
さらラシャでは、どうするんでしょうか?
カーリーは、
「これ、さらラシャだとだいぶ難しいなぁ。
9番にきっちり出せる確証はないですが……」
と言いながら、2つ挙げてくれました。
(※ちなみに、以下の2つの出し方は
テーブルで実演してもらってはいません。
撞点もBDの推測です)
…………
●カーリーのチョイス1:
「切り返し」
左ヒネリをしっとり効かせて、
こんなラインで「狭い方」
(9番の上側のエリア)に
3~4クッションで出す。
撞点は上げず、
左ヒネリメインになると思われます。
「使わなくはない、という感じかな。
上手く撞ければ出ます、というね」
もちろんこれも左ヒネリが噛まない恐れが
ありますから、普通のラシャの時より
9番に対して薄く出る危険性アリです。
…………
さて、もう一つはこちら。
●カーリーのチョイス2:
「順下のバタバタ」
順下いっぱいの撞点を
キュースピードを上げて撞いて
2~3クッションでこのライン。
「これは、普通のラシャでやるより、
さらラシャの方が出しやすい出し方です。
普通のラシャだと、
仮に2クッション目の場所が同じでも、
そこから手球が立って(詰まって出て)
しまったり、
あまり手球が伸びない(転がらない)
ことが考えられます。
こんな感じ。9番が薄いですよね」
「でも、さらラシャだと
2クッション目で良い感じで
手球が滑ってくれて
ポーンと角度が広がって
出てくれるんですよね。
結構伸びてくれるし。
その広がり方や伸び方は完全に
コントロールできる訳じゃないですけどね。
この出し方か切り返しか……迷うけど、
こっちかなぁ」
…………
この2つ目の出し方は、
さらラシャならではの出し方というか、
さらラシャの特性を把握していないと
発想すらない出し方ですね。
とても勉強になりました。
こういうことは
知っているか知らないかで大違い。
やっぱりトッププロというのは、
さらラシャの場数を踏んでいますし、
そういう人が国際舞台で勝てる
トップたりえるのでしょう。
カーリー、ご協力ありがとうございます。
日付が変わって、
今日から台湾で女子の国際大会、
『アムウェイオープン』の本戦
(Stage 2)が始まりますが、
今大会ももちろんさらラシャです。
さらラシャ慣れしている
女子のトップ選手達が勢揃いしていますが、
その中でもいち早く対応できる人が、
勝ちやすくなるのは間違いないですね。
…………
ということで、
3回に渡って専門性の高い話を
続けてきましたが、
さらラシャ対策だけで、
1冊の本になりそうだなぁと思った次第。
過去2回の記事に対して、
反応・反響が結構多かったというのは、
さらラシャの特性とその攻略術が、
ほとんど明文化されてない領域だという
ことを示唆しているのかも。
皆さんもさらラシャで撞く機会があったら
ぜひ色々と研究してみて下さい。
ただ、今回のショット例、
「言ってる通りに出せないんだけどォ!?」
という事態に陥りましても、
BDでは責任は負いかねますので
悪しからずご了承ください(笑)。