先日ご紹介した、
UK Corporation代表・大原秀夫氏所蔵の
「往年の名手が使った昭和のTADキュー」。
3本の中の残り1本を紹介します
(今回は上写真の一番右側のものをご紹介。
左の2本は既にここで紹介しています)。
…………
●角当哲朗使用TAD
BDはその球を見たことも、
本人にもお会いしたことがないのですが、
今なお昭和の名選手としてその名を
轟かせている角当哲朗(元プロ)。
その角当選手が使っていた
1970年代前半製と思われるTADがこれ。
フォアアームには、
「バーベル」のようなインレイが。
そしてバットキャップが黒いのも特徴です。
大原氏談:
「6年ぐらい前に入手しました。
バットキャップが黒いキューは
1970年代のものを中心にたまにありますね。
スリーブの、ウィンドウとダイヤ紋様の
組み合わせは割とよくあるパターン。
これ、ちょっと面白いのは、
グリップの上側のメイプルリングには
ステッチが入ってないんですよね。
それから、リングの中のドットの
高さがよく見るとマチマチなんです(笑)。
それも味ですよね」
…………
以上、
「名手の手に握られた昭和のレアTAD3本」、
これにて完結です。
せっかくの機会でしたので、
大原さんのTADキューコレクションについて
あれこれ質問してみました。
…………
――今の所有本数は? またそのTADは
UK Corporationの売り物なんですか?
「20本以上です。
タッドは基本的に販売していないです」
――どういうTADを集めているんですか?
「ジョイントのすぐ下のリングが
メイプルステッチで、
グリップ上下のリングが『ドット&ドット』のもの。
それから、ジョイントがパイロテッドのもの。
統一性を守っているつもりです」
――大原さんが考えるTADキューの特徴とは?
やはり独特なデザインでしょうか?
「それもありますし、
タッドさんは木工をしっかり学ばれた方で、
キュー製作の大事な基本である、
寝かし(乾燥)が実に素晴らしいです。
今回ご紹介した3本も曲がってないんですよ」
――亡くなられたタッド・コハラ氏と
お付き合いはありましたか?
「はい。
知り合ったのは1990年代後半です。
タッドさんは、他の方々に
『自分の名前はスモールフィールド(コハラ)で
彼はビッグフィールド(大原)だ』などと言って、
私を紹介してくれました。良い思い出です。
アメリカの『ICCS』
(インターナショナルキューコレクターズショー)に
出るようになってからは、
私をタッドのコレクターとして認めてくれたと思います。
ICCSでTADだけを並べるようになって
前回(2013年)が4年目ぐらいだったかな。
統一感があるのが私のブースの特徴で、
来場者に評価してもらっています。
ただ、タッドさんに特注モデルみたいなものを
オーダーすることはなかったですね。
タッドさんにお金で動いてもらうのが嫌でしたし、
そもそも昔のタッドさんは頑固で
オーダーを受け付けてなかったんですよ」
――タッドさんは昨年10月に亡くなられました。
「ICCSのためにアメリカに行って、
会場でキューを並べようとしていた
まさにその時、悲しい報せが届きました。
凍りつきました。
ICCSの前に、
50周年を迎えたということで
私の所にも記念の品を送って頂きました。
直筆の日本語のメッセージもあって、
とても嬉しかったです。
やはり私の時代は
『いつかはTAD』でしたから……。
当時はなかなか入手できなかったものも、
今は所有できるようになりました。
このコレクションは
大事に持っていたいと思います」
…………
大原さん、ありがとうございました。
……と、終わろうとしたところ、
前回記事をご覧になった奥村健プロご本人が
「このモノクロ写真で僕が使ってるTAD、
今思い出したんだけど……これは……」と
おっしゃったので、少しだけ続きます。