5月10日、夕方5時ちょうど。
霞が関ビルディング・プラザホール。
場内にどよめきが起こった。
当てたことにではなく、外れたことに。
「常勝の人」肥田緒里恵が
初球を外してしまった。
それはただの初球ではなかった。
大会の優勝と、
世界選手権への切符がかかった初球だった。
…………
『全日本レディーススリークッション』は、
ディフェンディングチャンピオンの肥田を含む
9名の総当りリーグ戦(25点ゲーム)で行われ、
タイトルの行方は最終回転の
肥田緒里恵vs西本優子(共にJPBF)という
「全勝同士対決」に委ねられた。
26キューで先に上がったのは先攻の西本優子。
この時点で25-21。
この試合には「裏撞き」がある。
先攻のプレイヤーが先に25点を上がっても
まだそれでおしまいではなく、
後攻のプレイヤーには
引き分けに持ち込めるチャンスがある。
この試合においては、引き分けすなわち、
アベレージで勝る肥田の優勝を意味する。
後攻の肥田、初球(サーブ)の形から
4点ランが必須。
プレッシャーの掛かったこの局面では
いかな名手でも4点は難しい。
しかし、肥田緒里恵という人は過去に
幾度となくそんなピンチを打開してきた。
「もしかしたら」と期待していた人も
少なくなかったと思う。
…………
そして、5時ちょうど。
肥田が撞いた黄球はわずか数ミリ白球の脇を通り過ぎた。
ほんの1、2秒目を閉じていた肥田は、
すぐに新チャンピオン・西本に向き直り、
深々と頭を下げた。
表彰式、肥田の目は赤かった。
…………
現時点で、日本から世界選手権に行ける切符は2枚。
前回大会(東京)優勝者である
現・世界チャンピオン東内那津未と、
この全日本選手権の覇者、西本優子が手にしている。
過去、世界選手権3連覇の記録を持つ肥田に
枠が回ってくるのかどうか、現時点では不明。
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優勝した西本優子プロの談話は
今日中(5/11)にお届けします。