ドーハ『ナインボール世界選手権』は、
一つ前のエントリのように
オランダのN・フェイエンが初Vを
飾りました。
日本勢の最高位は、
栗林達(JPBA)のベスト16(9位タイ)。
戦いから一夜明けた28日、
電話取材に応じて頂きましたので、
以下に掲載します。
栗林プロの語り口には、
かつてないほど悔しさが滲んでいました。
…………
Toru Kuribayashi
JPBA39期生
1982年6月26日生
福井県出身・東京都在住
愛称は「クリ」「超人」
2010年『ワールドプールマスターズ』準優勝
2011年『関西オープン』優勝
他、優勝・上位入賞多数
今月から2代目栗林達モデルを使用!
…………
――結果は9位タイでした。
「悔しいですね。本当に。
今までにないぐらい悔しいですし、苦い。
今回、初めてと言って良いほど、
きっちり試合に向けて整えることが
できていたので、
逆に悔しさが倍増している感じです」
――負けてしまったベスト16の
ボーニング戦を振り返ると?
「自分の状態は良かったので、
ああいう展開になったのが本当に悔しい。
恐らくミスの数は同じぐらい。
それでもあの点差(5-11)になるんですから……。
『何でもできるな』というぐらいの
状態だったんですけどね。
少なくとも縮こまってはいなかったし、
頭も回っていた。全然行ける状態でしたよ。
大会を通して自分の状態は良かったです。
ベスト32のN・エコノモポロス戦は
良くなかったですけど、
それ以外の試合は良い状態に
持って行けていました」
――渡航直前にキューが新しくなりました。
「全く問題なかったし、むしろ良かったです。
全然違和感なく使えてました。
そうやって、キューのことも含めて、
ちゃんと調整できていたから
なおのこと悔しいんです。
今まで『調整』っていう言葉は、
自分の中では微妙な表現で、
実はしっくり来ていなかった。
『これを調整と言うのかな?』
という感じでした。
でも、今回は
ある程度の確信を持って調整ができました。
それと、
精神面でも今までと違う状態を作れました」
――それは?
「自分に寄せられた期待を背負って
撞ける状態です。
応援してくれている人達の思いと、
会社(Just Do It)の皆の気持ちを
背負って試合に臨みました。
自分がこうしよう、ああしたい、ではなく、
まず先に皆の期待に応えたいというか。
応援してくれる人達のために撞いていたと
言っても良いです。
それは苦しいことでしたけど、
しっかり頑張れたと思います。
僕は今回、ステージ1から全部合わせて
18試合か19試合しました。
その間、戦う精神状態を
ずっと維持し続けるというのは
なかなか難しいことだと思いますが、
皆の期待と支えを感じることで
今回はそれができたと思います。
だから、余計にね。ホントに悔しいです」
――自分のビリヤードが世界に通じたかどうか。
その実感は?
「撞いていて思ったのは、
自分が今までやってきたスタイルは
間違いじゃなかったなということ。
ただ、もっと鍛錬が必要だなと思いましたね。
日本の選手は皆、知恵も技術も頭もある。
はっきり言えば、ごまかして撞いても点が取れます。
でも、世界ではそれが通用しない場面が来る。
プレッシャーが掛かれば掛かるほど、
最終的には我慢してシンプルなショットを
選ぶのが『世界』だと思いました。
外国勢はそれを徹底している。
ここ一番でシンプルなショットを使えるか。
そして、その成功率はどうなのか。
ここが日本と世界との違いなんじゃないか。
僕は今回、
シンプルなショットは選べていたと思う。
でも、その精度がまだまだ低いな、と。
精度を高めるのには鍛錬が必要です。
もっと鍛錬して正確性を上げれば、
より上に行けると思っています。
そして、『シンプル』を鍛錬することは
精神力を培うことに繋がるんじゃないかな
と思います」
――他に良い手応えを得た部分とは?
「試合への臨み方ですかね。
コンディションの作り方と言っても良いです。
今回僕は一人の時間を大事にしていて、
試合前や試合の合間の時間の過ごし方を
自分なりに考えていました。
それで良い状態で試合に入れたので、
今後もこのやり方を続けてみようと思っています」
――過去最高は2011年の5位タイですね。
「はい、カーリー(赤狩山幸男)さんが
優勝した時ですね。
ベスト8でR・アルカノ(フィリピン)に
ヒルヒルで負けました。
あの時と今回とでは精神状態がまるで違います。
今思えば、あの時は気持ちが
高ぶったまま撞いていた。
でも、今回は色々な状況を把握し、
その変化を受け止めながら
撞くことができていた。
自分がどのぐらい考えられているのか。
自分がどのぐらい撞けているのか。
そこもわかった上で試合ができていた。
なので、
かなり大きな経験値を得られたと思います。
そういった視点で他の選手達を観てみると、
世界のトップクラスと呼ばれる人達は、
プレッシャーを受け止めて、
冷静に判断して撞ける人ばかり。
そこですよね、僕が目指す方向は。
今後、日本の試合でもそれを念頭に置いて
やっていかなくちゃいけないなと思いました。
しかも、
もっときっちり自分のペースを貫いてね。
どれだけ周囲に引っ張られずに
マイペースで鍛錬と調整と実践ができるか。
そこを突き詰めていきたいです」
…………
褐色の超人、不撓不屈。