今回、長いです。すみません。
…………
イングランドAチームの優勝で幕を閉じた
本大会は2006年から行われていますが、
イングランドの優勝は初めてのことでした。
ワールドトッププロのD・アプルトンと、
イケイケ野郎のK・ボイズのタッグ。
これはなかなか強力ですね。
開催地が母国のポーツマスだったこともあり、
彼らには絶えず声援が送られていました。
かといって、彼らが順風満帆に王座まで
辿り着いたかというと全くそんなことはなく、
薄氷を踏む勝利もいくつかありました。
決勝戦のオランダ戦がまさにそう。
10ゲーム先取のこの試合、
常に優位に立っていたのはオランダでした。
9-7とオランダが先にリーチをかけた時は
「決まったな」と思ったものです。
(オランダを応援してたので「決まってほしい」
もありましたけど)
N・フェイエンとN・ヴァンデンバーグの
コンビはこれで6回目。
連携もスムーズで士気も高いですし、
昨年はファイナルでフィリピンに敗れていて、
リベンジに燃えていたと思います。
しかし、そんなオランダにとって
「あと1点」が実に遠かった。
終盤は、オランダのブレイクノーインから
イングランドが取り切って8-9。
続けて、マスワリ(ブレイク&ランアウト)で9-9。
イングランド、崖っぷちからの同点リーチ!
そして、運命の最終ラック(第19ゲーム)は……。
全ショット、テーブル図を作りましたので
それを見ながら振り返ってみましょう。
(※大きな声では言えませんが、
この試合の動画はyoutubeにあるかも。
ラストラックだけという動画もあるかも)
…………
●イングランド、ブレイクショットはスクラッチ
アプルトン(イングランド)のブレイクはスクラッチ。
一見すると、配置に大きなトラブルはなさそうだが、
2番が左上のコーナーにも左下のコーナーにも狙えない。
1番から2番へのポジションがいきなり難しい。
…………
●オランダ、1イン&2へのポジション
ヴァンデンバーグ(オランダ)、
手球フリーで1番を入れ、
押し球(あるいは左ヒネリも併用)の
ワンクッションで2番へ。
ほぼ理想の場所に出せたのではないだろうか。
2番はサイドに取る狙い。
…………
●オランダ、2イン&3へのポジション
フェイエン(オランダ)、
土手際の手球をしっかり撞いて、
2番をサイドに取り、
6番と7番の間を通して、
上の長クッションを使って3番へ出した。
フリもきっちり付けている。
…………
●オランダ、3イン&4へのポジション
ヴァンデンバーグもしっかり目に撞いて3番を入れ、
ワンクッションでテーブルセンター方向へ。
ここもフリを付けに行っている。
…………
●オランダ、4イン&5へのポジション
フェイエン、4番を入れて
引き球(あるいは順ヒネリも併用)の
ワンクッションで、
手球をテーブル中央まで引っ張って来る。
5番に対して真っ直ぐに近い所に出た。
ここが狙い通りの場所なのか、
どちらかのフリを付けたかったのか、
本人に聞いてみたいところ。
…………
●オランダ、5イン&6へのポジション
ヴァンデンバーグ、
5番を入れて、逆押し(押し球+右ヒネリ)の
ツークッションで6番へ。
6番は真っ直ぐに出たが、
ここはそれでOKなのだろう。
一つ前のフェイエンのポジションが
意図しないもの(中途半端なもの)だったとするなら、
このヴァンデンバーグのショットは
ナイスリカバリーと言えそう。
…………
●オランダ、6イン&7へのポジション
入れて止めるだけに見えるショットだが、
フェイエン、
ここでエクステンション(時間延長)も使って
慎重に撞く。
ヴァンデンバーグが7番を撞きやすいアングルを
入念に検討していた模様。
後で振り返ってみれば、
この場所はベストではなかったのかもしれない……。
…………
●オランダ、7イン&8へのポジション
ヴァンデンバーグ、
7番を入れて、
押し球でテーブルの反対側へ手球を運ぶ。
しかし、手球は下の長クッションに入って
すぐに止まってしまう。
8番に対するフリの具合は良いが、
手球はほぼ「土手撞き」状態。
ここにポジションしてしまったのは痛い。
これも本人に聞かなければわからないが、
同じラインのままで
ボール2個分ほど手球を走らせて
クッションから浮かせたかった、
あるいは、赤いラインで出したかったのかもしれない。
…………
●オランダ、8ミス
フェイエン、
キューを立ててしっかりとショットしたが、
8番は厚くなってしまい、
ポケットの角で弾かれてしまった。
会場をどよめきが包む。
今年のナインボール世界チャンピオンのフェイエン。
そんな選手であっても、
ワールドタイトルをかけたラスト1ラックの
ハイボールで、
立てキューを決めるのは至難の業だということか。
…………
●イングランド、8番ミス
フェイエンの8番ミスを見て、
椅子から飛び上がってキューを握ったボイズ。
しかし、この配置もまた、
大詰めの局面では撞きたくない球だ。
大舞台でもサクサクノリノリで撞く男、
ボイズならここで決めてしまう…………?
いや、やはりそうは問屋がおろさず、
8番は薄く外れた。
しかし、残った形が見事にセーフティ状態に。
これはイングランド、ツイている!
…………
●オランダ、8番空クッション、当てるのみ
オランダにとってこの形は最悪に近い。
ヴァンデンバーグ、
空クッションから強く8番に当てに行く。
この期に及んでは、
緻密なセーフティにトライするよりも、
まず空クッションでしっかり8番に当てて
(セーフを取って)、
ラッキーで8番あるいは9番が入るか、
渋い配置がイングランドに残るかを期待する方が
得策ということだろう。
今大会は30秒という厳しいタイムルールが
導入されていたが、
そこまで短いタイムルールでなければ、
オランダの打つ手は違ったのかもしれない。
あるいは6番で使ってしまったエクステンションが
ここで残っていたら…………。
そして、運命の空クッションは……
イングランドに良型を残すことになってしまった。
…………
●イングランド、8イン&9へのポジション
場内に「Go England !」という歓声が飛び交う中、
アプルトンは冷静に8番をコーナーに流し込んだ。
本当に強靭なメンタルをしている。
…………
●イングランド、9番イン、優勝!
ゲームボールはボイズがイン。
雄叫びを上げて抱擁し、
テーブルの上に駆け上げるイングランドの2人。
無言でキューを片付けるオランダの2人。
常に劣勢だったイングランドが、
最後の最後でひっくり返したという決勝戦だった。
…………
この試合、頭から見ているとわかるのですが、
両チームに普段ならありえないようなミスが飛び出します。
イングランドにはホームグラウンドの
プレッシャーが掛かり、
オランダには2年連続ファイナルで敗れるのは
避けたいという心理が作用して、
両チームとも硬くなっていたのではないでしょうか。
こういう試合こそ、
苦しい状況でのショットセレクションや
間合いの取り方、腹のくくり方……などに、
トップ選手のトップたるゆえんが
にじみ出てくるので観ていて面白いですね。
それにしても…………
イングランド、よく勝ったなぁ。
…………
BD Official Partners :
世界に誇るMade in Japanのキューブランド。MEZZ / EXCEED
ビリヤードアイテムの品揃え、国内最大級。NewArt
末永くビリヤード場とプレイヤーのそばに。ショールームMECCA
カスタムキュー、多数取り扱い中。UK Corporation
プレイヤーをサポートするグローブ&パウダー。TIE UP
稀少品、当社オリジナル商品あります。K’sLink
…………
Cue Ball Samurai―ビリヤードサムライLINEスタンプ