先週末に行われたJPBAプロ公式戦の
大会中、一番盛り上がった……というか、
最もギャラリーの悲鳴が上がった瞬間は、
男子セミ・ファイナル
嶋野聖大vs竹中寛戦、
ヒルヒル(8-8)の最終ゲームの
9番から10番にかけて、
で、間違いないでしょう。
5-8ビハインドから
8-8まで追い付いた竹中プロ。
あと1点で逆転勝利というシチュエーション。
最終ラックのブレイクインから
順調に取り切って行って、残すはあと2球、
……という時にドラマが!
まずは映像でご覧下さい。↓
核心部分は3分50秒頃から。
(撮影:On the hill !)
残り3球、図も交えて説明しましょう。
…………
8番をサイドに入れて、
9番へ引き球でポジションするも、
少しショート。
あとボール2、3個分引きたかったか。
竹中談:
「もうちょっと引いて、
9番にもっと厚くしたかったんですけどね。
まず、キューが出てないですよね(笑)。
もっとしっかり引いて
手球を一度長クッションに
入れようかなとも思ったんですけど、
土手際に止まるとそれはそれで
また微妙な厚みだし、
引き球で細かい力加減をするのは……
あの状況では僕には無理です(笑)」
…………
手球が止まった場所は、
9番をコーナーに入れたら、
必ず10番に当たるフリ(角度)です。
そしてこの位置関係だと、
10番は自然と左上コーナー方向へ
向かう場所にいます。
ワンストロークで2つの球が
落ちる可能性のある、
いわば、
「キャノンショット・ダブルイン」の
配置になっている訳です。
これ、種目がナインボールだったら、
ラストボール(9番)が一緒に入っても
全く問題なく、「1点」になりますが、
「コールショット制」のテンボールだと
そうではありません。
ダブルインで10番も一緒に入った場合、
前もって10番オンリーでコールしていなければ
10番インは無効となり、
フットスポットに戻って来ます。
そしてまた、
10番オンリーでコールできるほど
このキャノンショットは
確実性が高くはありません。
当然それをわかっている竹中プロは、
確実に直接入れられる9番を単独で狙い、
10番は一緒に落ちてしまわず、
穴前辺りで止まるように
「力加減をコントロールして」、
ショットしたつもりでした。
……が!!!!!
なんということでしょう!
無情にも、キレイに10番もイン!!!!!!
ギャラリーが「あー!」と声を上げる中、
10番はフットスポットに戻ります。
9番は狙い通り入っているため、
これはミスやファウルではなく、
ターンが嶋野プロに移ることはありません。
竹中プロは手球と的球がかなり近接した
超いやらしい10番を撞く羽目になりました。
大チャンスが一転して大ピンチです。
竹中談:
「10番を一緒に入れないように!
と思って撞いたのに入るもんですね(笑)。
もっと力加減を調節して……とか、
もっと手球を止める位置を
コントロールして……とか、
もちろんそれも考えてましたけど、
あの状況では僕には無理です(笑)」
…………
竹中プロは
10番をサイドポケットにコール。
攻めるとしたらそこしかないでしょう。
2度撞きしないように
キュー先を逃がす必要があるので、
おのずと撞点はかなり「右」になります。
ただでさえボール同士が近すぎて
厚みが見づらいというのに、
撞点も結構端っこという難球です。
「うおー」「えぇー」「いやぁ」
などと嘆声をもらしながら、
時間を掛けて構えに入る竹中プロ。
意を決して放ったラストショットは
……薄く外れました。無念……。
竹中談:
「もう少し手球が離れてるだけで
だいぶ撞きやすくなるんですけどね。
昔みたいに『ジャパン』
(3人以上で行うナインボール。
サイドポケットを多用する)を
いっぱいしてたら、
もうちょっと10番が穴の近くに
行ってたと思いますけど……
あの状況では僕には無理です(笑)」
そして、外れた10番を、
嶋野プロがきっちり沈めてゲームセット。
竹中プロ本人にとっては、
悔いの残るラスト10だったとは思いますが、
このラストラックでのアクションや声、
すぐ相手を笑顔で称える態度など、
改めて、プロキューイストとして
「持っている」選手だなと感じました。
とてもカッコ良かったです。
「負け試合でも魅せるなぁ」と
ギャラリーも笑顔で語る一幕でした。
しかし、この試合を制し、
次のファイナル(vs田中雅明戦)でも、
再びヒルヒルの熱戦を制した、
嶋野聖大プロこそ、あの日一番
「持ってた」選手かもしれませんね。
…………
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