先日、BDは
神奈川・鶴見の『アロウズ』を訪れました。
アロウズは、さかのぼること約15年前に
元JPBAプロの田口憲司さんが立ち上げたお店。
田口プロが2014年2月いっぱいで
競技活動から引退したのを機に、
お店の経営からも退くことになりました。
そこを引き継いだのが
当時関東トップアマだった丸岡良輔・文子夫婦。
(※当時の「アロウズ新章へ」の記事はこちら)
2014年3月から新体制で営業開始。
以来、2年3ヶ月が経ったところです。
この間に2人は子供も授かり、
この7月に丸岡良輔選手は
プロ(JPBA50期生)になりました。
今もビリヤードに情熱をたっぷり注ぎ、
お店とともに生きている2人に、
週末の夜で賑わっているさなか、
一瞬の間をいただいてお話をうかがいました。
――アロウズでイグナシオのチャレンジマッチが実現。プレイヤーとして、お2人のイグナシオ評は?
良輔:ワールドクラスの中でも異質かなって思いますね。プレースピードに目が行く人が多いと思いますが、僕としてはタッチって言うんでしょうか、球の捉え方が美しいなと思います。他の人には撞けない柔らかい球だなと。それと、球に遊び心があると思います。タッチも考えも、真似できるかどうかはわからないけど、勉強にはなります。でも、あのスピードは僕には無理(笑)。
文子:今日はお店が忙しくてほとんど見られなくて悔しかったです。実は子育てで肩を壊してしまって1か月半くらい球を撞けてないんですよ。人の球を見てるだけでウズウズしてきます(笑)。
――さて、アロウズが新体制でオープンから2年3ヶ月が経ちました。
文子:やっぱり……忙しいよね?
良輔:うん。自分で痛感していますが、外から見てもわからないところに忙しさがあるというか。店舗を運営するだけじゃなくて、例えば人間関係だったりとか。それはもしかすると、うちが他の一般的なビリヤード場よりは、ライトに楽しむ層が多くてお客さんの幅が広いからかもしれないです。でも、それがありがたいし、それが財産だと思います。
――確かに今も色々なお客さんがいますね。文子さんはどうですか?
文子:地元のお客さんに支えられてるなって思います。一方で、ビリヤード競技人口は減ってると思います。全体的に見れば景気は悪いし少子化だし、良いことが何もないんですけど(笑)、ビリヤード場としてやっていくなら、地元のお客さんにビリヤードを好きになってもらえないと伸びていけないと思う。ビリヤード業界自体を盛り上げていけたら一番良いんでしょうけど、私にはそこまでの器がないので、自分の店でなんとか……ですかね。マル(良輔)がプロになったし、ビリヤード業界を内側から盛り上げてくれたら、うちも潤う可能性があるかな(笑)。
良輔:うちはご覧の通り、若いお客さんが多いと思うんですよ。その多くがダーツなんですけど、入り口はダーツでも、お酒飲んでちょっとビリヤードでも遊んで、というので十分です、取っ掛かりとしては。そこからどうビリヤードを好きになってもらって、どう引き込めるかというのは僕ら次第ですね。
――引き継ぎの頃にお話を聞かせていただいた時、マルさんは「早くお店を地域に根付かせて、地元でビリヤードを流行らせたい」と言ってました。それはどのぐらい達成できていると思いますか?
良輔:半分くらいかな。開店当初より地元の若い子が遊びに来てくれるようにはなったけど、皆が皆、熱心にビリヤードをやってる訳じゃないので。ただ、今も店内に一見さんのように見えるお客さんが多いですけど、ほとんどが常連さんと言えば常連さんなんですよ。頻度で言ったら週1ぐらいの常連さんも結構多くて。いわゆる普通の"球屋"だと、週4以上みたいな常連さんが多いと思うんですけど、僕らとしては、週1でいいから継続的に来てもらって、『あそこはビリヤードがあるぞ』って知ってもらいたい。それが地元に根付いていく第一歩だと思うし、それはある程度は達成できてるのかなって思います。
――ビリヤードの競技人口を増やす段階までは行けてないかもしれないけど、地元の"顔"にはなってきた感じでしょうか。
文子:それはあるかもしれないですね。街を歩いていると『あ、あのお店の……』って挨拶されることも増えたので(笑)。
――そういえば、多くの人がアロウズのボスは文子さんだと言ってますが……。
良輔:間違いないです。自分は皿洗い兼中華屋さんです(笑)。(※アロウズはフードメニューが多く、厨房にいることも多い)
文子:いや、私がやってるのはね、お客さんの顔と名前を覚えてるだけなんですよ。でも、サービス業で育ってるから、それが良かったのかな。
良輔:それがデカイです。冷静に見てもお客さんを掴める能力があるなと。助かってます。そして、うちのこの「若さ」とか「ライトな常連層」っていう要素は、今の他のビリヤード場だと少ないかもしれないなと思いますし、僕らとしては、常連さんとライトな常連さんの融合を目指してたので、そこに関しては及第点かなと。ここからビリヤードプレイヤーを増やしていきたいです。
文子:そう。ビリヤードプレイヤーはまだ少ないよね。ダーツとビリヤード、両方置いているお店でありがちなことかなと思うんですけど、ダーツは価格がわかりやすくて安く感じられるので、ビリヤードが高く感じられるんですよ。ダーツの間口の広さとわかりやすさってホント大きいなと思います。ビリヤードをしてもらえたらなって思った時に、ビリヤードの料金が高く感じられるのがなかなか……。
良輔:それに加えて、ビリヤードの方が難しく感じるられるよね。出だしも上手くなるのも難しく感じられてしまうのかな。
文子:その分、一度出来てしまえば下手くそにはなりにくいけどね。
――ああ、そうですね。一度「撞けた」というところまで行ければ。
文子:だから、魅力をどう伝えるかなんですよね、「やってみたいな」とか「続けてみようかな」とか思ってもらえるように。ということで、マルがプロになったので、レッスンを始めようかと思ってるんです。
良輔:皿洗い兼レッスン担当です(笑)。
――そう、そのプロ入りの話ですが、アロウズを立ち上げた時にすでにプロ入りの意志がありましたよね?
良輔:あったと思います。でも、僕の場合はまず家庭と仕事の両立が先でした。プロになった以上は出来る限り競技活動もするつもりですけど、根本的な優先順位は変わらないです。
文子:私は以前は反対だったんですよ、マルがプロになることは。でも、お店を始めてから、『プロ』はお客さんを呼び込める肩書きになるんじゃないかという考えになりました。今は『せっかくプロになったんだから結果を残して』って言ってます。
良輔:プレイヤー層からすると、競技活動するならプロになってなんぼっていう固定観念みたいなものもあるじゃないですか。でも、僕の場合はすぐにはプロの世界には飛び込めなくて、活動の基盤を作るのが先でした。アマでビリヤード場をやり、競技が好きだけどプロにはなってなくて……という感じで、アマとプロの狭間にいたと思います。だけど、なんとかプロ活動が出来る状態になってきたかなと。お店も家庭もビリヤードも、全てがまだまだですけどね。
文子:私もプレイヤーですし、プロの試合も見ていて、プロの世界が甘くないってことはよくわかってます。だから、勝てとは言えないですけど、お客さんのために頑張ってほしいなって。
良輔:そうだね。プロになるって決めたら、こんなに皆から応援してもらえるんだって驚いたんです。その期待に応えたいです。
(了)
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