オレの名は、K。探偵屋だ。
だから皆オレのことをDetective "K"と呼んでいる。
ビリヤードの道具、キューの調査なら任せてくれ。
ぷるぷるぷる……。
ん? あり得ないタイミングで、BDからの電話だ。
「『TOC Nippon』というイベントがあるんですが、
行ってもらえますか?」
TOC?
ティーオーシーといえば、洋服・雑貨などが安い
品川区五反田の「東京卸売センター」だ。
価格調査か、市場調査か?
「……都内在住者にしかわからないネタは
やめてください。
『Top Of Cues Nippon』、キューコレクターが
港区の『God Dragon』に集まる件です」
そうか、ちょうど新しいトレンチコートを
買いたいから、TOCに……。
「ボケはいいからさっさと行ってください!
キューですよ、キュー!」
はーい、すみません。
気が短いな、BD。
オレはキュー探偵。引き受けるぜ、その依頼。
*****
10月8日(土)。
オレは地下鉄大江戸線、赤羽橋駅で降り
中之橋口から地上に出た。
午後1時。
朝から降り続いていた強い雨は、ほぼ上がった。
Detective “K”だとバレないよう、
上等なDressterior社のシャツに
ビリヤード柄ネクタイ。
変装は完璧だ。
オレはコートの襟を立て、
とぼとぼと首都高下の中之橋を歩いて渡り、
目的地に着いた。
……ここが『God Dragon』。
エレベータで5Fに上がり、入口の扉を開ける。
『Top Of Cues Nippon』のパネル。
間違いない。
オーナーの宗田三佳プロが暖かく迎えてくれる。
長いバーカウンターを通り過ぎ、奥に進む。
その先に、目的のブツがあるはずだ。
そう、BDからの依頼、数々のキューが……。
「あー、Kさん。
何やってたんすか、遅いですよ~」
*****
あ、あれ?(汗)
「さぁさぁ、
持ってきたキューを並べてください。
招待したゲストが来ちゃいますよ」
……すっかり忘れていた。
オレもキューを展示することになっていたのだ。
*****
イベント発起人は、北海道札幌市の、松實伸之氏。
「奇才」ディヴィッド・ポール・カーセンブロックの
キューコレクションで、世界的に有名な存在。
12本立てられる木製ラックを展示者の人数分、
地元の工房で特注して用意するぐらい、
このイベントに力を入れている。
展示者は9名。
キューメーカー「ILC」の作者としても知られる
新潟の菱沼巌氏や、
BDでもおなじみの、
U.K.コーポレーション、大原秀夫氏など、
各地から集まった気鋭のコレクターたちだ。
各コレクターは、キューを用意された
特注ラックに立てかけるだけではなかった。
皆、展示しきれないキューを平置きしたり、
キューケースやヴィンテージチョーク、
メーカーロゴ入りのTシャツを展示したり、
銘木があしらわれた工芸品を飾ったりと
様々な演出で盛り上げている。
まずい。
“K”とバレないよう、
変装に力を入れていたオレは、
キューしか持ってこなかった。
しかも、わかる人にはわかるが、
そうでない人にはそれなりの微妙なラインナップ。
とっさにビリヤード柄のネクタイを外し、
キューラックの前に置いて、お茶を濁した。
*****
午後3時。
各参加者が招待したゲストが来場し始めた。
その数およそ40人。
いずれもキューに対する知識や思い入れは
半端ではない。
茨城県牛久市のキューメーカー、
『HAKU Custom』の高橋博之氏も
サンプル3本を携えてゲストとして来場。
そこに皆集まってきた。
コレクターの本質は、飽くなき探究心。
目新しいキューが出現すると、
チェックせずにはいられないんだな。
キューを持参してお披露目するゲストも多く、
会話もはずむ。
持ち込まれたヴィンテージキューを囲んで、
参加者総出で鑑定大会となる場面もあった。
一本のキューに対する、
コレクターたちの生き生きとした表情と
真贋やコンディションを見定める眼光の鋭さ、
そして穏やかな口調ながら
シビアな会話の対比が奇妙だ。
*****
ところで、オマエは何を展示したのかって?
オレ自身のこだわりを表現するため、
12本すべて違うメーカーの作品を並べた。
こだわりが強すぎて、大半のキューはスルーされた。
その中で、入手の過程で最もトホホな経験をした、
デニス・ディックマンのキューが一番注目された、
というのは意外だった。
まったく、キュー好きな連中が何を考えているのか、
ワカランぜ。
*****
TOC Nipponは、
来年も開催することで意見が一致した。
コレクターたちの蒐集欲が尽きない限り、
内容や参加者数もスケールアップしていくだろう。
またなんかあったら調べるぜ。よろしくね、BD!
(to be continued…)
…………
Detective “K”――ディテクティブKについてはこちら。
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BD Official Partners :
世界に誇るMade in Japanのキューブランド。MEZZ / EXCEED
創造性と匠の技が光る伝統の国産キュー。ADAM JAPAN
ビリヤードアイテムの品揃え、国内最大級。NewArt
末永くビリヤード場とプレイヤーのそばに。ショールームMECCA
カスタムキュー、多数取り扱い中。UK Corporation
徹底した品質の追求。信頼できる道具をその手に。KAMUI BRAND
プレイヤーをサポートするグローブ&パウダー。TIE UP
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Cue Ball Samurai―ビリヤードサムライLINEスタンプ