〈BD〉「秘密指令! FMCCを探れ!」――Detective “K” inside story 02

 

オレの名は、K。探偵屋だ。

だから皆オレのことをDetective "K"と呼んでいる。

 

ビリヤードの道具、キューの調査なら任せてくれ。

 

ぷるぷるぷる……。

 

ん? 今月2度目、BDからの電話だ。

 

『Fan Meeting of Custom Cues』

というイベントが池袋で開催されるんですが、

探ってもらえますか?」

 

ファンミーティング・オブ・コスプレ求人……?

 

池袋で? ぐふぐふ……。

 

「……前回せっかくほめたのに、

また場外ファウル級のボケですね。

 

内垣建一プロが主催する

『Fan Meeting of Custom Cues』、

略して『FMCC』。

 

『ビリヤード・ロサ』に

カスタムキューオーナーが集まるイベントです」

 

なるほど、乙女ロードに行って、

アニメ声優やコスプレイヤーを探すんだな?

 

「話ちゃんと聞いてますか……?

乙女ロードは池袋駅を挟んでロサとは反対側!

 

腐女子やキモヲタじゃないんですから、

キュー好きが集まるイベントの方に行ってください!」

 

はーい、すみません。

意外と池袋に詳しいな、BD。

 

とにかくオレはキュー探偵。

引き受けるぜ、その依頼。

 

*****

 

 

1月22日(日)。

 

オレは愛車のホンダを飛ばして池袋に向かった。

 

空は快晴、エンジンも快調だ。

 

『ロサ会館』の地下駐車場に入り、

スロープを登って地上に出る。

午前中だというのに、ゲームセンターは盛況だ。

 

Detective Kだとバレないよう、

ビリヤード柄ネクタイ、8ボール柄靴下、

何時を指しているかわからない

ポケットテーブル型腕時計、

そして大容量キューケース。

 

どこから見ても、

ビリヤードオタクという完璧な変装だ。

 

エレベータでロサのある5Fに上がり、

VIPルームに向かう。

 

カスタムキューのニオイが

中からぷんぷん漂っている。間違いない。

 

そう、BDからの依頼、

数々のキューとキューマニアたちが……。

 

「あー、Kさん。おはようございます。

こっちこっち!」

 

*****

 

あ、あれ? バレた(汗)

 

「キューを持って来ているなら、

住所氏名と本数を申告。

キューケースは預けてくださいね~♪」

 

にこやかに受付するのは、

ビリヤード・ロサ所属の松村浩道プロ(JPBA)。

 

セキュリティ上、

持ち込まれるキューとケースを全て管理するようだ。

 

キューの価値を考えれば、無理もない。

 

*****

 

Kenichi Uchigaki
Kenichi Uchigaki

 

イベント発起人は、内垣健一プロ(JPBA)。

 

キューメーカーから

用具提供を受けているプロが多いなか、

現在でもヴィンテージタッド(TAD)をこよなく愛し、

日米を転戦する百戦錬磨のプレイヤーだ。

 

FMCCは、非営利的なイベントで

キューの販売やトレードは一切なし。

 

コレクターがメインとはいえ、

誰でも1本から展示できる。

 

さらに、投票による

キューの「コレクターズ・チョイス・アワード」と

ペアマッチによる勝ち残り方式の

10ボール2ゲーム先取マッチと盛りだくさんの企画。 

 

入場料は1,000円、

しかも女性同伴の場合、女性は無料。

 

収益ゼロどころか、大赤字だ。

 

いいのか、内垣プロ。

いいのか、ビリヤード・ロサ。

男気を感じるぜ。

 

*****

 

 

VIPルームには3台のポケットテーブル。

 

そのうち2台には、

コレクター、酒巻博行氏製作による

ディスプレイが設置されている。

 

何と最大300本のキャパシティ。

 

 

キューだけじゃない。

 

VIPルームの奥には、

ヴィンテージなジェイ・フラワーケースや

ジョージケース、ジャスティスケースがずらり。

 

宮城県から車でケースを積んでやってきた

眞子大亮氏と、内垣プロのコレクションだ。

 

*****

 

 

正午にスタートしたFMCC。

 

参加者は受付を済ませた後、

オーナーと内垣プロが共同でキューを並べる。

 

一本登場するごとに、

周囲のコレクターから感嘆の声が上がる。

 

その数、時間が進むにつれ次第に増加し、

最終的に約260本。

 

展示されたメーカーは、オレが確認しただけでも、

 

ガス・ザンボッティ、バリー・ザンボッティ、バラブシュカ、カーセンブロック、サウスウェスト、ジナ、タッド、ジョスウェスト、オメガ/dpk、リチャード・ブラック、モッティ、マクダニエル、シュレーガー、シック、ブラックボア、スクラグス、ピーターセン、マクウォーター、rc3、pfd、サムサラ、ランブロス、ショーン、ジョス、メウチ、バイキング、バレンブルーギー、ショーマン、マンジーノ、トンキン、ギルバート、ジョーシィ、マイク・ベンダー、ケニー・マレル、トッパーズ、コグノセンティ、オリビエ、プルーイット、フィリッピ、ILC、早川工房(順不同)

 

……ざっとこんなもんだ。

 

*****

 

 

参加者はおよそ90人。

 

旧知の仲もいれば、初対面もいる。

 

共通するのはキューに対する愛情と深い知識だけ。

 

それだけで会話が弾むのだからスゴイぜ。

 

加えて必ず盛り上がるイベントを用意したのが、

内垣プロの偉いところ。

 

コレクターが即席ペアを組み、

持参したキューでプレーする、

10ボール2ゲーム先取の勝ち抜き戦。

 

勝利チームが次のチームを

チャレンジャーとして迎える方式だ。

 

ガス・ザンボッティオーナーペア

vs バリー・ザンボッティオーナーペアなどという、

得難い対戦もあって白熱した。

 

 

さらに、参加者による

「コレクターズ・チョイス・アワード」

の投票も実施。

 

約250本のなかから、

最高の一本を選ぼうという企画だ。

 

結果は、

 

3位タイ:ジナ(大原秀夫氏所有)

     ブラックボア(前岡信一郎氏所有)

2位:ILC(松本淳氏所有)

1位:カーセンブロック(松實伸之氏所有)。

 

さすがのベストスリーだ。

 

*****

 

 

そして、カスタムキューのフォトセッション。

 

ザンボッティ8剣タイプを

メーカー問わず集めたり……

 

サウスウェスト/カーセンブロックを

集めたり……

 

タッドだけ53本集めて、

キュー尻長さ比べをしたり……

 

一人だけのコレクションでは絶対できない

ラインナップを揃えて撮影し、

コレクター達は盛り上がった。

 

*****

 

内垣プロによれば、

『FMCC』は、とりあえず非営利で開催したが、

次回以降は更に規模を拡大し、

 

キューの取引も可能な商業イベントへの

発展も検討するとのこと。

 

昨年10月開催された

『TOC Nippon』とは相互連携しつつも、

また違った展開が期待できるだろう。

 

またなんかあったら調べるぜ。

よろしくね、BD!

 

(to be continued…) 

 

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Detective “K”――ディテクティブKについてはこちら。 

 

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