〈BD〉「夢じゃないですよね?」――大阪クイーンズオープン優勝・和泉早衣子の談話

Saeko Izumi Photo :  On the hill !
Saeko Izumi Photo : On the hill !

 

先週末の『大阪クイーンズオープン』で、

プロ入り初優勝を飾った

和泉早衣子(いずみさえこ)プロの

談話をお届けします。

 

試合の数時間後にお話を聞かせていただいたのですが、

まさに興奮冷めやらず、という状態でした。

 

和泉プロといえば、

アマ時代からずっとTADキューのイメージですが、

実は今後は……という話も出てきます。

 

…………

 

Saeko Izumi

1978年10月21日

JPBA50期生(2016年プロ入り)

静岡県出身・在住

使用キューはTAD(※本大会時)

所属店『カラーズ』(静岡)

2017年『大阪クイーンズオープン』優勝

※アマ時代:

2012年『全国アマチュアビリヤード都道府県選手権大会』

(通称『プレ国体』。東京開催)優勝

2014年『ジャパンオープン』3位

 

2016年全日本選手権時
2016年全日本選手権時

 

聞き手:BD

語り手:和泉早衣子

 

 

――初優勝おめでとうございます。

率直な今のお気持ちを。

 

「めちゃくちゃ嬉しいです。

ああ、もう……うん。本当に嬉しい。

 

まさか自分が優勝できるなんて思ってなかったので。

 

これ、夢じゃないですよね?(笑)」

 

――夢じゃないです(笑)。

 

「本当ですか。ああ、良かった~(笑)」

 

――最後の2-9キャノンを撞く時の心境は?

 

「配置を見た瞬間は『9番、行こう』と。

 

ただ、今までだったら9番を入れることだけ

考えて撞いてたと思うんですけど、

いつもそれで外して、

相手に取られるという失敗をしてたので、

それだけはしちゃいけないと思いました。

 

なので、9番が外れる想定で、

2番のセーフティメインで

『あわよくば9番を』ぐらいの感じでした」

 

――9番が入った瞬間の気持ちは?

 

「ちょっと手球が危なかった

(追っかけスクラッチが見えた)ので、

一瞬『あっ、大丈夫?』って。

 

手球が止まった瞬間に『よしっ!』でした」

 

――その一つ前の第8ラックの1番での

セーフティとそこからの取り切りもナイスでした。

それでリーチをかけて……。

 

「ああ、そうだったんですね。

 

私は昔から取り切りの記憶が全然残ってなくて、

失敗した記憶しか残ってないんです。

 

だから今回も取り切ってリーチをかけた

という記憶がなくて……(苦笑)」

 

――え、そうだったんですか。

 

「はい。撞いている時はいつも、

『過去にやった失敗を繰り返さないように』

ということを考えてます。

 

『次はヘッドアップしないぞ』とか、

『さっきはキューを右にコジッたから、

今度は真っ直ぐ出そう』とか。

今回もその繰り返しでした」

 

――それは精神力が要りますね。

 

「はい、そういう意味ではすごくしんどかったです。

 

でも、私はアマチュア時代から、

ゲームボールを外してそこから相手に

まくられるという経験をしていて、

それがずっと頭にあるので、

もうそういうスタイルになっています。

 

同じミスを繰り返してしまうと、

さらに焦ってしまうし、

他の球にも悪い影響が出てしまうので、

『同じミスだけはしないように』

という気持ちでやっています。

 

今回もミスはたくさんしてました。

決して2日間、良い内容で

撞き続けられた訳ではないです。

準決勝でも決勝でも

フリーボールを抜いてますから。

 

ただ、今まではそれでもうチャンスが

回って来なくて終了だったんですけど、

今回はたまたまもう一度回って来ることがあった。

それは本当にラッキーでした。

 

そして、決勝戦に関して言えば、

『ここまできたら後悔しない球を撞こう』

と決めてました。

この舞台に立てることは

二度とないかもしれないからって。

 

一球一球、一生懸命頑張ろうと思っていて、

それはきちんとできたと思います」

 

――『プロ2年目』と言われますが、

昨年6月のプロテスト受験ですから、

実質1年未満です。プロの世界はどうですか?

 

「本当に単純に、こんなにも

自分の力が足らなかったんだなと痛感しました。

 

もともとプロの人たちは

皆すごいと思っていたんですけど、

同じ舞台に立ってみたら実力差が身にしみました。

 

技術もそうだし、球も冷静に見られているし、

自分とこんなにも違ってたんだなと。

それで必死に練習しました。

 

プロになってこれが8回目の試合だったのかな。

毎回毎回すごく課題があって、

それを一つ一つ潰す感覚でやってきていて。

で、同じ失敗をしないように考えて

次に挑むということの繰り返しです。

 

さっきも言いましたけど、

今回も1回戦からミスを連発していて。

それを繰り返さないようにということだけ

心掛けてやっていたら、

だんだん上に上がって来ていたという感じです」

 

――静岡が拠点ですよね。

普段の環境はどんな感じなんですか?

 

「普段はビリヤードとは

関係のない仕事をしています。

プロ活動優先で探しました。

 

試合に行こうと思うと、

移動日も含めると最大で金曜から月曜まで

最大4日間お休みが必要ですよね。

その辺りの融通が利く職場を探しました。

 

練習は『カラーズ』(静岡市)さんなどで

やっていて、撞く時間もある程度

ちゃんと確保できていると思います」

 

――和泉プロと言えば、アマ時代から

TADキューがトレードマークで……。

 

「実はですね、今回が最後だったんです、

このTADで試合に出るのは」

 

――えっ!!

 

「傷がひどかったりして、リフィニッシュに出したい。

でも、その間他に使えるキューもない。

 

もともと試合で使えるシャフトも1本しかないし……

とか、色々なことが理由で、

メインキュー自体、他のものを探してたんです。

 

それでご縁があって、この度プレデターさんと

使用キュー契約を結ぶことになりました」

 

――そうだったんですか。

 

「ですので、

次の試合(6月『関東レディース』)から

プレデターになります。REVOシャフトの予定です。

 

すでにお試しで使わせてもらっていたのですが、

すごく良かったので、『ぜひこれで』と。

 

だから、最後にTADで優勝出来て良かった。

そういう嬉しさもあります。

 

このTADは一生自分で使うと決めていますので、

誰かの手に渡ることはありません。

私が現役引退するまでちょっとお休みしててねと。

 

これはビリヤードをやり始めて間もない頃に

人から譲っていただいたキューで……

もう18年前ぐらいになりますね。

ずっと負けてばっかりだったけど、

TADさん、最後にありがとう!! です(笑)」

 

――最後に、サポーターにメッセージを。

 

「一番は、普段からサポートしてくれている

家族に『ありがとう』です。

 

そして、日頃から

静岡のいくつかの企業さんに

私のプロ活動を支援していただいていますし、

静岡のビリヤード場さんにも

なにかと面倒を見ていただいています。

静岡のプレイヤーの方々にも応援して

もらっているので、

皆さんに良い報告ができて良かったです。

 

それから、栗林美幸プロの存在も大きいです。

 

私は美幸さんに背中を押してもらって

プロ入りを決意したので。

 

もともとプロに憧れがあったんですけど、

色々と生活も大変でしたし、

自分の年齢も気になってました。

 

でも、一昨年の『ジャパンオープン』の時に、

美幸さんが

『プロになりな。年齢なんて関係ない』

って言ってくれた。

 

本当にプロを目指すことを決めたのは

その時だったんです。

 

その後も色々と相談に乗ってくださったり、

球も指導してくださることがあったので、

とても感謝しています。

 

……と挙げていくと、

もう『みんなに感謝』になってしまいますが(笑)、

応援してくださった皆さん、

本当にありがとうございました!」

 

(了)

 

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