日曜日に東京で行われた
JPBA東日本男子プロツアー
『グランプリイースト第3戦』(GPE-3)に、
宮城から初めて参戦し、
彗星のごとく優勝を飾った
今野一輝アマの談話をお届けします。
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Kazuki Konno
1989年6月14日(27歳)
出身・在住:宮城県
所属:KEVIN(宮城県)
職業:会社員
ビリヤード歴:約15年(休止期間含む)
使用キュー:OASIS
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――優勝から一晩経ちました。今のお気持ちは?
「嬉しいです。
でも、自分以上に周りの人達が喜んでくれていて、
それが一番嬉しいですね」
――表彰式では『頭が真っ白です』と語っていました。
その後どうでしょう。勝った実感は?
「あぁ、どうだろう……。
今もあまり変わらないかもしれません(笑)。
この試合に向けて練習はしてきていたので、
その意味では『撞けたかな』という
達成感はあるんですけど、
実際のところ、今回は
『グランプリってどんな感じなのかな』とか
『いい経験ができたら良いな』ぐらいの感覚で
挑戦したというのが本当のところなので、
『グランプリ、優勝できた!』という
気持ちは今もあまりないですかね。
それよりもやっぱり、自分が思っていた以上に
周りが喜んでくれているのが嬉しいです」
――日曜日はベスト16から4試合しました。
自分の力は出せたと思いますか?
「朝イチ(ベスト16 vs松田渉)は
舞い上がっちゃってイマイチでした。
2回戦(ベスト8 vs塙圭介)は、
だいぶ落ち着いていつも通りになってきて。
そして、準決勝は小寺さん(小寺裕史プロ)とで、
以前からよく知ってる方が相手ということもあり、
それまでの精神状態とは少し違ってたかなと思います。
ベスト16と8はアウェーの雰囲気を楽しみながら
やってる感じだったんですけど、
準決勝は張り詰めていたものが一旦抜けたような。
無意識にですけどね」
――ファイナル(vs 土方隼斗)は、
気を引き締め直して臨んだ感じでしたか?
「そうですね。
入れミスもあったんですけど、
『それはしょうがない』ぐらいの感覚で、
1球1球、完璧に納得しながら撞くことができました。
ホント妥協しないで撞くことができましたね。
全体的に振り返ると、セーフティに行った球が、
思った以上にうまく転がってくれた時があったりとか、
ずっと展開が僕に向いてくれていたのかなと思います」
――ファイナルの後半は
つった足を伸ばしながらのプレーでした。
体力的にも出し尽くしたような感じだったのでしょうか?
「そうですね。
あの日はちゃんとした食事が
できなかったというのもありますし、
もともと革靴を履いて撞くのが苦手なので、
あれは初めてじゃなくてですね、
いつも通りといえばいつも通りでした(苦笑)。
長時間革靴で撞いてるとそうなっちゃうんです。
でも、昨日は足だけじゃなく、左手にもきてました。
左手の手の平が全体的につっていて、
特に薬指・小指辺りがひどくて、
レストがちゃんと組めなくなっちゃって」
――それはファイナルの緊張感も関係がありますか?
「はい、たぶん緊張で
身体が固まってきていたのかなと思います。
でも、『うわっ、今来たか』と(苦笑)」
――6-3の時にゲームボール(10番)を
外してしまい、一度上がりそこねました。
9番を入れた時に手球がスキッドして
ちゃんと前に転がらず、
10番が想定より薄くなりましたね。
その結果、10番をミス。
「9番でのスキッドは
『しょうがないな』と思っていました。
でも、あの10番は本当はもうちょっと
ゆっくり撞きたかったんですけど、
特にあの時は足に限界が来てて、
『早く終わらせたい』という感じで
撞き急いでしまいました。
外した瞬間は『負けた』と思いました。
『これを決めなかったらもうないな』と」
――ですが、次の第11ラックで
またチャンスが巡ってきました。
「あの最後の残り3球(8、9、10)は、
ただガッツだけで入れてたという感じですかね(笑)。
特に8番と9番を撞く時は、
お尻を隣の台に載せる格好になりましたけど、
なんとか入ってくれて良かったです」
――ロングの穴前の10番を入れた時、
手球がじわっと前に転がって少しヒヤッとしましたね。
「サイクロップボールだからというのも
あるでしょうし(前に出て行きやすいと言われる)、
あと、台が高めで僕は背が小さいので、
あの時は上手く構えられてなかったんだと思います。
きっと引き球を撞いたとしても
ああなっていたんじゃないかと思いますし、
あれがあの時の僕の限界だったと思います」
――ご自身で今回の勝因はどう考えていますか?
見ていた限りでは、
嫌らしい球をよく入れてましたし、
メンタルの強さを感じる場面が多かったですが。
「いやぁ、メンタルは……どうでしょうか。
今回は、普段失敗しているような球が
たまたま決まってくれて繋がってくれたりとか、
必要最低限のネキストが
たまたま取れたなという時もありました。
一日を通して、ああいう感じで
勝ち続けられることはなかなかないですし、
今回は全体的にいい方向に転がってくれたなと。
それしかないです。
逆に、自分自身の状態が良くても
勝てないことの方が多いですから。
だから、『ほんとに自分が勝って良かったのかな』
みたいな気持ちもまだあります」
――4試合全て、アウェー感を感じながら
撞いていたんですか?
「はい、それは朝からずっとそうでした。
知り合いが2、3人応援には来てくれてましたけど、
基本的には誰も知らない環境でしたから。
(会場観戦者対象の)勝者予想トトの通りです(笑)。
当然、誰も僕が勝つとは予想してなかったと思います。
その中で勝ち上がって行けたことには
少し楽しさも感じてました」
――グランプリに出るのは
「初めてだと思う」と言っていましたが、
そもそも今回はどうして出ることにしたんですか?
「特別な理由があった訳ではなくてですね。
最近になって試合への興味が出てきまして、
今年初めて『球聖戦』(アマタイトル戦)の
『A級戦』に挑戦したりする中で、
『ちょっとはやれるかも』という手応えを感じてました。
そういうことが重なっていたので、
今回のグランプリの東北予選も直前になって
『行ってみようかな』と思って出たんです。
そうしたら通ることができたという」
――今までオープン戦など全国規模の大会は?
「昨年初めて『ジャパンオープン』に出ました。
あと、20歳ぐらいの頃に『関西オープン』には
たぶん2回出ています。
社会人になって仕事が基本になるので、
ビリヤードができる時期には
ちょこちょこ試合に出ることもありますが、
撞かなくなると1年休んだりすることもあるので、
そうなると全く試合に出てません」
――今後もグランプリには出ますか?
「今はまだ何も考えてないですね(笑)。
仕事や体力面との折り合いつけて、
出られたら出るっていう感じになると思います。
それはグランプリだけじゃなくて、
『ジャパンオープン』とかもそうです」
――プロになる気は?
「ないです。
今までにもビリヤードを何度も休んでますし、
続けられるかどうか危ういところがある
タイプですので(笑)。
プロとして、ずーっとビリヤードに
関わっていくということはできないだろうなと
思っています。
なので、今後もこれまでと同じ感じで、
撞ける時に撞いて、出られる試合に出て、
という感じになるかなと思います」
――わかりました。
最後に、感謝の気持ちを伝えたい人がいましたら。
「それはもう、東北の元プロのお三方です。
以前から憧れていて、ここ最近よく教わっていたのは、
KEVINにおられた細川憲治さん。
KEVINの前オーナーであり、
ずっとお世話になってきた鎌田啓之さん。
それから、僕の一番の影響源であり、
昔から憧れていた林研字さん(現KEVIN店主)。
林さんと同じグランプリを勝てたことが嬉しいです。
特にこのお三方には本当に感謝していますし、
他にも自分のことを応援してくれた人には感謝しています。
ありがとうございました」
(了)