〈BD〉バグースが20年間「レッスン」を続けている理由は? インストラクターの役割とは? 西尾祐プロに聞いてみた(後編)

 

『バグース』20年間ずっと行われている

専任インストラクターによる「ビリヤードレッスン」。

 

チーフインストラクターの

西尾祐プロ(JPBA)にお話をうかがい、

インストラクターの役割やレッスン内容などから

「レッスン理念」を探るインタビューの後編です

(※前編はこちら)。

 

…………

 

現在、ビリヤードレッスンを受講できる店舗は、

首都圏の14店舗。

概要や料金、レッスンスケジュール、FAQなどは、

公式サイトにわかりやすくまとまっています。

 

簡潔に言えば

301,000円のマンツーマンレッスン(ゲーム代別)」で、

初心者でも上級者でも誰でも受けられます。

複数名での同時受講も可能です

これとは別に無料ワンポイントレッスンもあり)。

 

…………

 

 

聞き手:BD

語り手:西尾祐プロ(バグース・チーフインストラクター)

 

 

――有料レッスンついてより詳しくお聞きしたいのですが、初回は問診みたいな形から始まるのですか?

 

「ええ、まずはカウンセリングしてから、その方の希望や目標に応じてレッスン内容を決めて行くという流れです」

 

――内容や教え方は各インストトラクターに一任されているのですか?

 

「統一している事柄はあります。例えば、『初心者にブリッジを教える時はオープンブリッジからにしましょう』とか。レッスンに使用するテキストと資料も渡していますし、年に数回インストラクターミーティングを行っていて、皆のやり方を確認し合ったりしています。また、新人インストラクターには研修期間があり、先輩インストラクターに同行して現場で教え方を覚えていくので、重なる部分は多いです」

 

 

――テキストと資料というのはこの分厚いファイルの。

 

「そうです。これを作ったのは僕ですが、私物という訳ではなく、インストラクター全員にデータで共有しています。『レッスンで使って、要点を書き込んで生徒さんにお渡ししてください』と。やっぱりその場の話し言葉だけでは伝わりきらないですし、教わる方も教えた方もどんなアドバイスだったか忘れてしまうものですから」

 

――中には古い資料もありますね。

 

15年ほど前に作ったものもあります(笑)。画像を刷新したり、表現を直したりとか、その都度手を入れてます。図説部分も自分でパソコンで描いてます。こういうところに力を注げるのも、専任のインストラクターというポジションを設けてくれている会社あってこそだと思います」

 

――ひと通りレッスンを受けた後は、「卒業」する人もいたり「継続」する人もいたり。

 

「そうです。短期間で集中的にレッスンを受けて、ある程度のレベルに達したら頻度を減らすという方もいれば、レッスンの常連のようになっておられる方もいます。それは人それぞれです。インストラクター側の視点で見ると、長く定期的に通ってくださる方がいると、どういうアドバイスや教え方が効果的だったのかなどを振り返って考えることができますから、自分のレッスンスキルが上がる機会が増えます」

 

――西尾プロのレッスンを受けて上達した方はかなりの数に登るのでしょうね。

 

「普段意識することはありませんが、結構いると思います。初めの頃に僕がレッスンをしてAクラスになった方は多くいますし、中級〜上級者の方から『初心者の頃に教えていただきました』と声を掛けていただくこともあります。全ての方を僕がずっと教え続けた訳ではないですが、今もビリヤードを続けていて、上達しているというのがわかると嬉しいですね」

 

――初めに誰に教わるかは、どんなことでも大事ですね。

 

「そうですね。しかし、一番重要なのは本人のやる気と目標です。それがない方はレッスンを受けてもなかなか上達しません。実は僕、ゴルフのレッスンを受けたことがあるんです。教わる側の気持ちを知りたいと思って」

 

――どうでしたか?

 

「レッスンを受ける人がどういう部分を教わりたいと思っているのか、どうしてレッスンが続かない人がいるのかということがよくわかりました。レッスンが続かない人はレッスンがつまらなかった訳ではなくて、単純に目標がないから続かないという人が多いのではないのかなと。僕にはゴルフでの目標がなかったんです(笑)。目標を見付けられたら頑張れますよね」

 

――「楽しくビリヤードをやりたい派」を自認する方もいますが。

 

「そうですね。『楽しければいいんです』とおっしゃる方も多いですが、絶対とは言いませんが、僕は上手くならないと楽しくないと思います。広い視野で見ると、上達を目的にしている人の方が楽しめているし、長続きしている割合が高いと思います。その意味では、インストラクターは生徒のレベルに合った『適切な目的と目標』を提示するということが大事になってきます。あまりに高くて遠い目標でもいけません」

 

――『フォーム解析』レッスンが人気を集めているのも、修正点、つまり目標が可視化されるからというのもあるでしょうか。

 

「はい、あれは適切な目標の一つですね。フォーム解析を受けようと思う時点で向上心を持った方だということは言えると思いますが、実際に受けると、皆さん『改善すべきところが見えた。練習課題ができた』と、嬉しそうな顔になって帰って行かれます。語弊があるかもしれませんが、やる気になっている方を教えるのは難しくはありません」

 

 

――レッスンのテキストではないですが、こちらのカラーの無料リーフレット(画像左)と、各テーブルに置かれたガイダンス(右)は、ビギナーにやる気を起こさせるようなアイテムですね。

 

「そうですね。以前、CUE’S((株)BABジャパン)さんにも協力してもらって作ったのがこのリーフレットで、それをA4サイズに落とし込んだものがこのガイダンスです。この2つはかなり見ていただけていると思います。こういう配布できるリーフレットが欲しかったんです。合計10万部ぐらい刷り、費用もかかりましたが、これを見てバグースにリピートしてくださる方が少しでもいればビリヤード人口を増やせる可能性が高まりますから、やっただけのことはあったと思います」

 

――これは前回のお話にもあった、『ビリヤードは難しい。でも、上手くなれば楽しい』という考えに基づいたツールですね。

 

「そうです。初めてビリヤード場に来る人のほとんどは手球をしっかりと撞けません。我々インストラクターの目が届けば教えられますが、全員にお声掛けできる訳ではありません。手球がしっかりと撞けないと『ビリヤード、難しい。つまらない』と思われてしまうかもしれないですが、それではあまりにもったいないですよね。でも、このリーフレットを手にして、オープンブリッジやチョークの説明を見てくれたら、『あ、しっかり撞けた。楽しい』になってくれる可能性が高まります」

 

――エイトボールなどの遊び方の説明にも大きめのスペースを割いています。

 

「『ベーシックゲーム』などの『とにかく入れればOK』という種目は、ゲーム性が薄いのでビギナーでもすぐ飽きてしまいます。ルールを簡単にしようとしすぎるとビリヤードのゲーム性の部分の魅力が薄れてしまう。ある程度、ルールの制約は必要なんです。かといって、ボールが多いとゲームが進まないので、ボールの数を減らした『スピードエイトボール』や『スピードナインボール』、3人であれば『カットボール』をお勧めすることが多いです」

 

――レッスンの話に戻りますが、ビリヤードをインストラクターに教えてもらうことの良さってどういうところでしょうか。

 

「物事の上達には、『知る・やる・できる』という3つのステップがあると思っています。レッスンを受けることで『知る』段階が短くできます。また、知ってさえいればすぐにやれるし、できるというテクニックもビリヤードには多いです。独習では入ってくる情報に限りがあるので、レッスンを通じて色々な情報をインプットすることは有益だと思います。また、ある程度撞けるようになった方がプロのアドバイスやフォーム解析を受けるのも、多くの気付きがあると思います。自分の実体験としてもありますが、自分ではやっているつもりだけど、できてなかったことを指摘してもらえたり、自分では思い付きもしない考え方を教えてもらったりとか。一人でやっていてもいつかは気付いて習得できるかもしれませんが、そもそも気付きさえしないということもあると思います」

 

――回り道をせずに上達できることが、レッスンを受けるメリットであると。

 

「回り道をするのも悪いことじゃないんですけど、回り道している間にビリヤードを辞めてしまう方が多いと思います。ビリヤードは上達に時間がかかる競技ですので、教わることでそれが短くできれば、より高いレベルにも行きやすくなりますし、長く続けていけるのかなとも思います。インストラクターとしての僕には『ビリヤードを続けて欲しいから教えている』感覚があります。できることが増えるとビリヤードが楽しくなり、長続きする。ぜひバグースで、上達する楽しさを多くの方に体験していただければと思っています」

 

 (了) 

 

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