カスタムキューを多数取り扱っている
UK Corporation。
その代表、大原秀夫氏が所蔵している
キューを見ていく本企画
(※過去記事はこちら)。
今回紹介するのは、大原氏が
「100%そうだとは言い切れないけれど……」と
言いながら取り出してきたこの一本。
近代ビリヤードキュー職人の
オリジンの一人に数えられ、
多くの後発メーカーに影響を与えた
『Szamboti』
(ザンボッティ・キュー)をベースに、
フランク・コスタが
後からインレイを施したとされる1本です。
…………
バーズアイメイプルをベースにして、
エボニーの4剣ハギが入った
伝統的なデザインのモデル。
ハギを縁取るベニアは、黒と白っぽい木だけで
シンプルに飾られています。
ベースとなるキューが、
ザンボッティによって作られたのは、
恐らく1970年代後半から1980年代前半。
その後、日本ではその名を聞くことが稀な
キュー職人、フランク・コスタがインレイを入れ、
さらにその後、アメリカ人選手によって
日本に持ち込まれ、しばらく経ってから、
10年ほど前に大原氏の手元に来たと言います。
大原氏・談:
「これはアメリカの名選手、A・ホプキンズが、
1980年代前半に、日本に持って来たキューです。
ガス・ザンボッティキューに、
フランク・コスタが後からインレイを入れた
キューだと言われています。
シンプルなバットに、
後から他の職人がインレイを入れることを
『アフターインレイ』と言い、
そういうキューは割とあります。
ガス・ザンボッティについては
もう説明の必要がないでしょう。
フランク・コスタは、
日本では全く知名度がないメーカーですが、
アメリカでは異常に高い値段が付いていて、
安いものでも2万ドルスタートみたいな
ことになっています。
彼は、現役の頃はそれほど有名ではなく、
死後に有名になった人です。
コスタは恋人が亡くなった後、
その恋人のお墓の前で自ら命を絶ったという
逸話が残っています。
僕がこのキューを入手したのは
10年ぐらい前だったでしょうか。
国内のある業者さんから購入しました。
実はTADキューとの抱き合わせでね(笑)。
ザンボッティ+フランク・コスタだ
ということを聞いて、
自分でも恐らくそうだろうと思って買いました。
ベースは80%ザンボッティだと思われるし、
インレイは80%フランク・コスタのだと思われます。
80%ザンボッティだと思う根拠は、
このハギのニュアンスだったり、
キュー尻だったり、ジョイントだったり、
リングワークですね。
全体的なクオリティも
さすがはザンボッティと感じています。
彼はよく寝かせた材料を使って、
丁寧にキューを作っていたから、
真円率が高く、凸凹や出っ張りもまずない。
そして、インレイの形は明らかに
フランク・コスタなんです。
雪の結晶のような、
『スノーフレイクインレイ』を入れているんだけど、
彼以外にこういうインレイを入れる
職人を見たことはありません。
とてもファンシーで目を引くインレイですよね。
僕はこれを購入してから
アメリカに持って行って、
親しいディーラーやコレクターやメーカーにも
見せたことがあるんですが、
皆、何かあっても責任を取れないから、
『僕にはわからない』って言います。
後日、ホプキンズ本人にも話をしたら、
『そんなキューを日本に持って行った
覚えがないなぁ』と言う(笑)。
忘れてるのかもしれないですけどね。
そんな訳で、クエッションだらけのキューです。
僕自身、確証が持てないままでいるので、
『もしどなたかわかる方がいたら教えてください』
と書いておいてください(笑)」
(了)