カスタムキューを多数取り扱っている
UK Corporation。
その代表、大原秀夫氏が所蔵している
キューを見ていく本企画
(※過去記事はこちら)。
今回ご紹介するのは
『Barry Szamboti』(バリー・ザンボッティ)です。
言わずと知れた名匠、
ガス・ザンボッティの息子で、
1988年に57歳の若さでガスが亡くなった後、
その技術と設備と
『Szamboti』ブランドを受け継ぎました。
拠点はペンシルバニア州。
→ガス・ザンボッティの記事はこちら
しかし、近年はバリーも体調が思わしくなく、
現在の製作本数はかなり少ないと思われます。
今回ご紹介するキューは1990年製作。
大原さん曰く、
「ガスのハギを使ってバリーが完成させた
ものだと僕は確信しています」。
バーズアイメイプルをベースに、
エボニーの4剣ハギ。
ハギの内側にはピーコックインレイ。
スリーブはエボニーベースで、
シンプルなインレイワークが施されています。
バットキャップには「B.S.」のサイン。
「伝統的」「クラシカル」と表される
王道のキューデザインです。
大原氏・談:
「1990年代前半に日本に持ち込まれ、
数名の手を経て、私の所へ来たキューです。
ノーズ(フォアアーム)の作りが
あまりにすごいので、
ノーズはガスが作ったものを
使ったのだろうと私は思っています。
私がリフィニッシュをしてみたところ、
完成度があまりに高くて驚きました。
ガスが作ったんだろうなという考えは、
その時に確信に変わりました。
デザインは“ザ・定番”というスタイルで、
何も足せないし、何も引けないという、
完成された造形美を感じさせます。
ハギのベニアは外側から
黒、赤褐色、グレーっぽいブルー、そして白。
……のように見えます。
この配色のセンスも見事と言うしかありません。
これは販売いたします。
参考価格は160万円としておいてください。
ガスが亡くなってから30年近くになり、
バリーが継いだとはいえ、
今は新作キューはほとんど出てこないですが、
ザンボッティはアメリカでも日本でも
未だに人気が衰えません。
この数十年の間に、
日本にはガスのモデルもバリーのモデルも
相当な数が入ってきていると思いますが、
それでも価値が下がらないのは、
一度は手にしたいと思わせるだけの
存在感と風格があるからでしょう。
このキューも、伝統の美しさを
今に伝えるモデルです」
(了)