〈BD〉「キュー好き、あるあるフレーズ集」パート2 ――Detective “K” season 2. episode 03-2 ※Kからプレゼントあり

 

私はDetective K。

ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。

 

皆から単に”K”、

あるいは「なんとかK」と呼ばれている。

 

ただ玉屋を徘徊する「K」なる人物程度の

認識しか持たれていないからだ。

 

探偵だから、それでいいのさ。

目立っていたら調査できないからな。

 

ピコッ! 

 

ココのブログ主、BDからメッセージだ。

 

前回の続き、

「キュー好き、あるあるフレーズ」の

後編をお願いします。』

 

ふっ、言わずもがなのことだ……。

 

『放っておくと、このテーマを何回でも

続けそうですから、念のためです。』

 

…………バレたか。最低でも三回は……。

 

ピコピコピコッ!

 

再びメッセージだ、怒ったような着信音だな。

 

『さっさと進めてください!

「後編」ですよ「後編」!』

 

……わかったよ。

 

それでは後編、いくぜ。

 

*****

 

phrase 11 「パワーのある」

 

キュー自体に動力があるわけではないのに、

キューの特性を語る時に使われるフレーズ。

的球に対して、厚い配置のショットを撞いた際、

的球のスピードがプレイヤーの感覚より速い、

あるいは手球が的球を押しのけるような

フォローショットが撞きやすいといった

キューに対して使われる。

キューの重さや、重さバランスが

ある程度影響するとは思うが、

「あくまでも個人の感想」レベルの

表現に過ぎないと思う。

 

*****

 

phrase 12 「キレる」

 

感情のバクハツを行動や言葉に表したもの

……ではない。

手球のヒネリや押し引きの回転を

与えやすいキューに対して使われる。

かつては「キレる」キュー=見越しが大きく、

使いこなすのが難しいという傾向だったが、

いわゆる「ハイテクシャフト」の登場により

「キレも良く、見越しも少ない」キューが増えた。

とはいえ、手球に多くの回転を与えつつ、

狙った厚みに高い精度で当てられるかどうかは、

プレイヤーの技術次第。

つまり「キレる」のはキューではなくプレイヤーだ。

 

*****

 

phrase 13 「ブシュカ」「ザンボ」「コグノ」

「サウス」「ランブ」

 

有名なキューメーカー名は、

三音節に切り詰められることが多い。

故ジョージ・バラブシュカは、

アメリカで「ブシュカ」と呼ばれていたため、

日本でも同じ表現が使われる。

ザンボッティの「ザンボ」、

コグノセンティの「コグノ」は日本独特の表現だ。

「サウス」はサウスウェストの略だが、

「南西」を「南」と呼んでも通じるのは

そのブランド力ゆえ。

ランブロスの「ランブ」に至っては、

PCやスマホに打ち込むと

「乱舞」と変換されてしまう。

ただ「エクシード」や「プレデター」など、

微妙に略しづらい場合はそのまま。

元々短い名称のメーカーは短縮されない。

アダムを「ダム」とか、ジナキューを

「ジー」などと呼ぶヤツに会ったことはない。

 

*****

 

phrase 14 「ガス」「バリー」

 

さらに、「ザンボ」の場合は、ガスとバリーの

親子二代に渡り製作されているため、

ファーストネームだけで通じてしまう。

一見しただけではどちらの作品か

判別しかねる場合、「これバリー?」と、

息子の名前を先に出すのがマニア間のお約束。

仮に父親の作品だとしたら

「いいえ、ガスの作品です」と(優越感を持って)

否定出来るのがオーナーの特権だからだ。

 

*****

 

2012年『ICCS』にて。晩年のタッドさん(手前)と奥さんのスージー、そしてフレッド
2012年『ICCS』にて。晩年のタッドさん(手前)と奥さんのスージー、そしてフレッド

 

phrase 15 「タッドさん」「フレッド」

 

同じ親子二代でも、技術やビジネスを長年に渡り、

徐々に継承したタッドの場合は、

ザンボッティとは事情が異なる。

息子フレッドになっても「タッド」がブランド名の

ままゆえ、オーナーはザンボッティほど

親子どちらの作品か、さほどこだわらないのだ。

ただ、父を「タッドさん」と呼ぶのに対し、

息子は「フレッド」と、なぜか「さん付け」しない。

せめて「フレッドくん」と呼ぶべきで、ましてや単に

「ムスコ」呼ばわりするのはいかがなものか。

 

*****

 

phrase 16 「ステン」「樹脂」

 

キューの構造上、シャフトとバットを分割する

ジョイントは重要なパーツ。そのジョイントにおいて、

バット側接合部を補強するのが「カラー(collar)」、

日本語では「中輪(なかわ)」と呼ばれる円筒形の部品。

この材質がステンレススチール製のものが「ステン」。

かつて普及品には錆びやすい

真鍮製のカラーが使われていたため、

錆びにくく、キラリと光る「ステン」は

高級感のある仕様とされていた。

現在では、高級カスタムキューにおいても

合成樹脂製のカラー、通称「樹脂」が増え、

「ステン」は減少傾向。

よって、「樹脂」=「イマドキのキュー」、

「ステン」=「え? まだそんなキュー使っているの?」

的なニュアンスを感じさせられる。

 

*****

 

phrase 17 「ワンオブアカインド」“One-of-a-kind”

 

同一メーカーで、同じデザイン・材料を使った

キューが二本とない、いわゆる「一点もの」のこと。

他のプレイヤーと同じキューは持ちたくない気持ちを

射止めるための殺し文句だ。

特注する場合は、「あのメーカーが、自分のためだけに

特別なデザインのキューを製作してくれる」

という思い入れを表すのに良く使われる。

しかし、少量生産メーカーの場合は、

もともと注文を受けてから製作するか、

メーカー自身が作りたいように作るかのどちらかであり、

結果的に「ワンオブアカインド」だらけという

ケースも多い。よって、

「ワンオブアカインド」に価値を見いだせるのは、

有名かつ、カタログを用意するぐらいの

生産規模があるメーカーの作品だと思う。

 

*****

 

ある年の『スーパービリヤードエキスポ』にて。Kを含め、参加メンバーがホテルの部屋に集まって全員の獲物をベッドに並べた時の一枚
ある年の『スーパービリヤードエキスポ』にて。Kを含め、参加メンバーがホテルの部屋に集まって全員の獲物をベッドに並べた時の一枚

 

phrase 18 「ヌレる」

 

1990年代末、『スーパービリヤードエキスポ』

(アメリカ)に日本人業者が大挙して押し寄せ、

カスタムキューを「爆買い」していた時代、

キューを一本かせいぜい数本しか買えない

個人の参加者は弱い立場だった。

お目当てのキューメーカーのブースに行っても

“Sold”の札ばかり。挙句の果てには

「欲しかったら日本で買ってくれ」とまで言われる始末。

当時グループで渡米し、参加していたオレたちは、

厳選した一本を入手すべく、会場内に散って

逸品や掘り出し物の情報を収集し、共有することにした。

しかし、会場内で日本語を使っていたら、

せっかくの情報がダダ漏れ。そこでオレたちは

グループ内だけで通じる合言葉を決めた。

その一つが「良いキュー」=「ヌレる」だった。

「おい、あっちのブースがヌレているぞ」

「何! どんなヌレ具合か、早速見に行こう」

こんな会話なら、まさか良いキューを見つけたと、

他の日本人には気づかれないで済むと考えたのさ。

そして、お目当てのキューが売られている

ブースに到着すると

「ヌレているのはこれだ」

「おぉ~、これは……ヌレるな」

「ヌレヌレだぜ」

という会話を交わしつつキューをゲットしていた。

今では逸品を見つけると「ヌレる」と

表現するようになった、というわけだ。

 

*****

 

キューにまつわる表現は、一種の符丁であり、

相手の知識や経験の深さを測るツールでもある。

 

話し相手がどのようなリアクションをするかで、

深い話をすべきか否か、判断できるわけだ。

 

会話のところどころに挟み込まれる

耳慣れない表現の背後には、それなりのストーリーが

根底にあることを覚えておいてくれ。

 

また依頼があれば調べるぜ。よろしくな、BD!

 

(to be continued…)

 

※前編はこちら

 

Detective “K”についてはこちら

 

…………

 

【4名にキュー探偵K・オリジナルワッペンプレゼント!】

 

BD記:

 

ある日、Kから届いた一通の封書。

 

開けてみるとそこには、

鮮やかな色使いで細かいところの刺繍もキマってる

ワッペン4枚とメッセージが……。

 

ステッカーとは打って変わって、

ポップでヴィヴィッドな色合いに仕上げてみたぜ。

完全に自己満足の世界なんだが、

欲しがる読者もいるかもしれないと思ってな ――K」

 

そ、そうですか。

 

……ということで、

Kが自腹で作ったワッペンを、

10名様にプレゼントいたします

(※BDが自腹で作ったBD缶バッチも付けます)。

 

ご希望の方は、

問い合わせフォームからご応募ください。

 

●お名前(ペンネーム可)

 

●メールアドレス

 

●以下のA・Bのどちらか(あるいは両方)にお答えください。

たくさん書いていただけるとKが喜びます

(前回のステッカーの時と同じですが、またよろしくお願いします)。

 

A:『K』でこんなネタを読みたいという企画案

B:「こんなキューはイヤだ」選手権。さて、どんなキュー?

 

以上をご記入の上、お申し込みください。

 

厳正な抽選を行い、

当選者のみにお知らせをいたします。

その段階で、お名前・送り先など

詳細をお聞きします。

 

締め切りは8月末日。どうぞお気軽にご応募を!

 

…………
BD Official Partners :  
世界に誇るMade in Japanのキューブランド。MEZZ / EXCEED 
創造性と匠の技が光る伝統の国産キュー。ADAM JAPAN 
ビリヤードアイテムの品揃え、国内最大級。NewArt 
末永くビリヤード場とプレイヤーのそばに。ショールームMECCA 
カスタムキュー、多数取り扱い中。UK Corporation 
徹底した品質の追求。信頼できる道具をその手に。KAMUI BRAND
BAGUS 横浜西口店。2017年3月グランドオープン。BAGUS
カーボン繊維構造REVOシャフト発売中。PREDATOR JAPAN
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