カスタムキューを多数取り扱っている
その代表、大原秀夫氏が所蔵している
キューを見ていく本企画
(※過去記事はこちら)。
今回ご紹介するのは
『McWorter Custom Cues』
(マクウォーター)です。
代表はジェリー・マクウォーター。
ジェリーと大原氏は以前から親交が篤く、
メーカーとディーラーという関係だけでなく、
プロミュージシャン仲間として、
音楽活動でも交流が続いています
(ジェリーはドラマーで大原氏はベーシスト)。
「最近、キューの話はほとんどしてないですね(笑)」
(大原)
BDもご両名のライブを東京で観たことがあります
(こちら )。
マクウォーターの製作拠点は
カリフォルニア州のベンチュラ。
キューに銘とシリアルNo.を入れたのは
1993年からですが、
1988年よりキュー作りをしていたとのことなので、
約30年のキャリアがあることになります。
…………
今回ご紹介するのは、
彼のデザインカタログの中にある
『The Victorian』(ヴィクトリアン)というモデルに、
スペシャルなリングワークが施された1本。
ジョイント上下のリングをよく見てみると、
シルバー・ゴールド・シルバーという
トリプルリングになっています
(※通常はシルバーのダブルリング)。
ベース材はエボニー(黒檀)で、
アンボイヤバールのシャープな剣が入り、
その先端と根本には白いインレイが入り、
パウア貝も使われています。
マクウォーターの特徴でもある、
曲線を伴った細いシルバーラインが
上品な輝きを与えている、
高級感漂うモデルです。
大原氏・談:
「2014年、彼がライブをやりに来日した際に、
新作キューを数本持って来ていました。
これはそのうちの1本です。
たまたまその時、私はハイエンドの
マクウォーターを持っていなくて、
これが一点もののトリプルリングだった
ということもあり、購入しました。
購入希望の方がいらっしゃれば、
150万円ぐらいで応相談可です。
この『ヴィクトリアン』というデザインは、
逸野暢晃プロ(JPBA)が第一線で
活躍していた時に使っていたものなので、
見たことがある方もいると思います。
彼が使っていたヴィクトリアンは、
白と黒のツートンカラーでした。
今回のこのモデルは、
バールウッドの美しさもさることながら、
なんといってもこのトリプルリングが珍しい。
シルバー・ゴールド・シルバーという組み合わせの
トリプルリングは私は他に見たことがありません。
シルバーだけのトリプルというのはあります。
基本はダブルです。彼のポリシーとして、
いつでも新しいシャフトに替えられるように、
リングデザインを1種類にしています。
以前、私が彼の工房を訪れた時に、
彼は私の目の前で
トリプルリングを作って見せてくれました。
非常に薄い金属とブラックのパーツを重ねて、
実に器用に作っていました。
マクウォーターの特徴と言えばやはり、
繊細で精緻で品のあるデザイン。
曲線的なシルバーラインが目を引きます。
直線的にシルバーを入れるよりもカーブさせた方が
どの角度から見てもキューが輝くし、
キューデザインが立体的に見える効果もあります。
シンプルなデザインのキューでも、
凝ったものであっても、
どことなく女性的な優美さが表れているのが
マクウォーターの特徴であり、
そこが人気の秘密でもあります。
今はもう、
シリアルナンバーも2000を超えていますし、
個人工房としてはかなりマメに
作っている方ではないでしょうか。
彼は一旦製作のスイッチが入ると、
ほとんど寝ないで集中的に作業をします。
16時間ぶっ通しとか、
やるとなったらとことんやると。
それ以外の日はガーッと集中的に
音楽活動に打ち込むという生活です。
奥さんのジャンから私に
そんな近況報告が入ったりしますので、
間違いはありません(笑)。
彼とはメーカーとしての
メジャーデビュー前後からの付き合いになりますし、
彼のワークスタイルもわかっています。
今手元にマクウォーターキューが
もう1本ありますので、
今度またそのキューを紹介しながら、
彼のことをもう少しお話ししましょう」
(了)