『第57期名人戦 名人位決定戦』で勝利し、
2度目の防衛成功。
在位3期目に入った名人・小川徳郎選手。
試合翌日の談話をお届けします。
気になるプロ転向の噂についても聞いてみました。
※名人位決定戦の試合映像は、
…………
――決定戦から丸一日経ちました。
「今回も『やっと終わった』という
達成感がまずあります。
今年も無事に最後まで戦えて、
防衛ができて良かったなと。
ボロボロになりながらも
やるべきことはやったかなと思います」
――セットカウント5-2という結果については?
「自分の状態が良くなくて、
それはあの通り、内容にも現れてました。
むしろよく5-2で終われたなとは思います」
――状態はどう良くなかったんでしょうか。
撞き込めてなかったとか?
「いや、練習はしてたんですけど、
どうも球が入らないという状態が続いてて。
昔の良かった頃の動画を見たら
グリップの位置が違ってて、
それに伴って肘の動きも違ってたんで、
その辺りを昔に戻そうとしたんです。
それが本番1週間前のこと。
でも、本番前日に『今になってフォームを
気にしてたらビリヤードにならないな』
って思って止めました。
だから、本番では全く気にせずにやってた
つもりなんですけど、結果、すぐ崩壊(笑)。
ここのところ腕に染みついてた悪いコジリ癖が
出ちゃってたと思います」
――ハードショットでミスが多かったのは
それが理由ですか?
「そうです。ハードショット全般、
タイミングがバラバラになってました。
僕は難しい球も攻撃的に取って行って
『どやー』ってやりたい方ですけど、
そのスタイルを捨てないといけないなと
思いながらやってました。
『いつもだったら行きたいけど、
今日は外れるな。我慢しよう』みたいな。
種目も種目なんでディフェンシブになるのは
仕方ないですけど、ひたすら忍耐の一日でした。
色々な面でまだまだですね、やっぱり」
――中盤以降は球が繋がるように
なってきていたように思いますが……。
「あまり良いことじゃないけど、自分なりに
ごまかし方をわかってきていたというか。
とりあえず、ハードショットと
上めの撞点を撞くのはダメだなと。
なるべく弱めで転がすように
軌道修正しながらやっているうちに、多少は
やりたいことが出来始めてきてたかなと思います」
――自分の球を撞けたと言える場面は?
「あまりないですね……。
第3セットの最終ラックを撞いていた時は
面白かったですけどね。14-1みたいで。
結局あのセットは落としてしまったんですけど、
僕をよく知る人があの時のプレーを見て、
『復活の兆しが見えてきた』と。
その言葉を信じて頑張れたというのは
ありますね」
――最後の第7セット、林武志選手の
ゲームボール(14番)のミスからの
追い上げは攻撃的なショットが多く
迫力がありました。
「そうでしたね。でも、あの時も、
ランの途中で強く撞いた8番が
飛んで(外れて)ますからね(苦笑)。
優しくグイーンって行きたかったのに、
バチーンって感じになっちゃって。
タッチがまるでイメージとは違ってた。
ショットの感触は一日を通して良くないままでした」
――最後は9番から取り切って上がりました。
「途中の13番が一番しびれました。
12番からの出しが上手くヒネれてなくて
違う所に手球が出ちゃって。
13番は一生懸命身体を残しながら撞きました。
ヘッドアップしないようにして……
実際はちょっとしてるんだけど、
目と身体は残すようにして」
――13番を入れて、手球でサイドポケット脇の
15番を穴前に蹴り上げました。
「自分の中ではあそこが今回一番の
ピークだったかなという気がします。
あと2球残ってるけど、
『よっしゃ。決まった!』っていう感じ。
頭の中にはストリックランドの
ガッツポーズがありました(笑)」
――KPBAの後輩の林選手との一騎打ち。
やりづらさやプレッシャーはなかったですか?
「どうだろう……
最初のうちはちょっとあったかなと思います。
武志が挑戦者になってから本番までのこの1ヶ月間、
きっと向こうもやりづらいだろうなと思ったので、
顔を合わせないようにしてました。
で、始まってみたら僕がこんな状態だし(笑)、
武志としても気持ちの持って行き方は
難しかったのかもしれない。
……と、僕の視点では思ってます」
――林選手のプレーをどう見ていましたか?
「やっぱりシュート力に関しては
良い意味での自信を感じました。
戦い方に関しては……A級戦でのプレーを
映像で見ましたけど、今回はあの時より
さらに堅実でスマートだったように感じられました。
そのせいか、普段とは違う
キュー出しの球もあったと思います。
なにしろ自分がキューを止めることに専念してたんで、
そういうところも見てたんですけどね(笑)。
もともとのスタイルが違うから
何とも言えないですけど、あの時の僕としては、
もっとイケイケな感じで来られた方が怖かったし、
もっと苦しんだと思います。
でも、16歳でA級戦に進出して、
あの強豪たちをやっつけて、
敗者側から這い上がって来たのは
素晴らしいことです。
16歳当時の僕だったら出来てないと思います」
――わかりました。
これで名人位在位3期目に入りましたが、
『いよいよプロ入りか?』という噂も耳にしました。
「確定してはいませんが、
以前よりはだいぶ具体的に考えていて、
そう遠からずなる予定でいます。
もしプロにならないということになれば、
また1年後を見据えて、
今度はちゃんと状態を良くして、
全力で防衛をしたいと思います」
――最後に、KPBAの仲間や身の回りの人達への
メッセージがあればどうぞ。
「まずは、KPBAの皆さんに感謝しています。
今年もきっちりと準備や運営をしてくださったおかげで
僕は全くストレスなく試合に臨むことができました。
本当にありがたく思っています。
そして、『アロウズ』代表の丸岡良輔プロを
始めスタッフの皆さんも、僕が練習しやすいように
何かと気を使ってくださり感謝しています。
今回つくづく思いましたけど、
KPBAは本当に暖かくて良いクラブだなと。
武志は受験もあるけど、
またすぐ競技活動に戻ってくるでしょうし、
どんどん強くなると思います。
なんかもう、
『アイラブ神奈川』な感想ですね(笑)。
皆さん、ありがとうございました」
(了)
…………
Norio Ogawa
1990年3月19日生
神奈川県出身
KPBA、アロウズ所属
2010年『プレ国体』優勝
2008年&2013年『マスターズ』優勝
2014年『アマローテ』優勝
2015年『都道府県対抗』MVP(神奈川)
2015年~2017年『第55期~57期名人戦・名人位』
2016年『アマナイン』優勝
他、入賞多数