「信頼のジャパンメイド」として
世界のビリヤードシーンに浸透している、
2つのキューブランド、
そんなMEZZ / EXCEEDのキューをテーマに、
契約プロスタッフ達に
道具のこだわりを語っていただく企画。
今回ご登場いただいたのは、
日本女子No.1にして、
2016年世界選手権準優勝。
そしてこの10月には
『韓国グリ国際9ボール』で5位タイと健闘した
河原千尋(かわはら・ちひろ)プロです。
今年でプロ13年目の河原プロは、
プロ2年目からMEZZ & EXCEEDを使っています。
前編となる今回は、
完成してまだ1年経っていないプレーキュー
『EXCEED 2代目河原千尋モデル』と、
『EX Proシャフト』のことを中心に
お話をうかがいました。
…………
↑ プレーキュー:
2代目河原千尋モデル EXC161CKSP
(シャフトは『EX Pro』。タップは『斬』)
…………
語り手:河原千尋
聞き手:BD
取材場所:アンセーズ(大阪)
――今日はキューのことをたくさんお聞きします。
「BDさんとキューの話をしたことはないですよね。
よろしくお願いします」
――まず、MEZZプレイヤーになったのは?
「2006年です。
私は2005年にプロデビューして、
その年の秋の『全日本選手権』の時に、
三木さん(株式会社三木代表・三木一則氏)と
お話をしました。
そして、翌年からMEZZ / EXCEEDになりました」
――初代河原モデルが出来るまでは別のキューで?
「そうです。エクシードのカタログか何かを見て、
『これが良いです』ってデザインで決めました。
10剣ハギのものを。
初代モデルが出来上がったのはいつだったかなぁ
……2年ぐらい後だったと思います
(※編注:2008年でした)」
――そして、今使っているのが2016年に
完成した2代目ですね。何か河原プロから
リクエストしたところはありますか?
「いや、特にありません。
デザインも仕様も完全に三木さんにお任せです。
信頼していますので。
私がやったことは、色違いのモデルが
いくつかある中から赤を選んだぐらい。
(※他の色も商品化されている)
初期のデザイン画を見せていただいた時に
『いいな』と思いましたし、
その後、工場(群馬)に伺った時に
デザイン画をプリントしたものを
キューに巻いて見せてくれたんですが、
それがすごくかっこよくて、
『私の次のキューはこれなんだ』と
明確にイメージができました」
――デザインで気に入っているところとは?
「リングです。
よく見ると2種類のデザインが交互に入ってます。
かなり細かい仕事ですよね。
それと、ハギの根本がリングに接してなくて、
浮いたようになっている。
ここも手がかかっているポイントだと
聞いています。
こういう『よく見ると実は……』
という部分がとても気に入ってます。
『私しか知らないけど手が込んでるんだぞ』と(笑)」
――貝などのインレイも細かく入れられていて、
近くで見るとゴージャスな印象がありますね。
「そう、『綺麗ですね』とよく言われます。
私はこういう貝などのインレイが入ってる
キューはこれが初めてでした。
もともと派手なインレイがあまり好きじゃなくて、
そういうキューを使ってこなかった。
でも、このキューのインレイの入り方は
すごく綺麗で気に入ってます」
――グリップは糸巻きですが、それは昔から?
「私はもともと姉のお下がりの、
ゴムが巻かれたキューでビリヤードを始めました。
MEZZプロになって1本目のエクシードが、
人生初の糸巻きだったんですけど、
糸は合わないなと思って、
すぐに革巻きに替えて使ってました。
そこから革巻き歴が3、4年ぐらいかな。
で、ある時、ビリヤード場勤務で
洗い物をしていて手が荒れてしまって、
革巻きだとちょっと手に引っかかる感じがして
痛かったんですよ。
それ以前から、ゴムや革を巻いたキューだと、
“水かき”のところできゅっと引っかかる感触が
あって少し気になってはいました。
そこで糸巻きに替えたら違和感が解消されました。
それ以来、一貫して糸です。
でもたぶん、今ならゴムでも革でも
普通に使えるんじゃないかな。
昔、私はグリップをガチガチに握っていたから、
余計に気になってたんだと思います」
――キューの重心バランスや重さにこだわりは?
「私は昔から今までずっと前バランスで
やってきていて、そこは譲れません(笑)。
前バランスのキューが振りやすいです。
今のこのキューの重さは18.7~18.8ぐらい。
ウェイトボルトは入れてません。
いや、短いのを入れてるんだったかな。
以前は重めのキューが振りやすいと感じていて、
もっと重くしてました。
初代モデルを作る時に、
『バランスと重さ、どうします?』と聞かれて、
『前バランスで19.5ぐらいでお願いできますか』
とリクエストしたことは覚えています。
その後、年月が経つにつれて
軽いものが心地良くなってきています」
――それはストロークスタイルや体力が
変わったからですか?
「昔はキュースピードが今ほどなかったから、
前バランスで重ためのキューを使って、
インパクトのタイミングを合わせて、
キューの重みで撞いてたような感じ、
と言えば良いですかね。
ガシガシ振るんじゃなくて、
丁寧に振っていたと思います。
その後、キュースピードが出せるようになってきて、
軽いキューで振り抜くような撞き方に
変わってきたと思います」
――シャフトは『EX PRO』。かなりトビ
(ヒネった時の手球の横ズレ。見越し)が
少ないというところが特徴ですが、
すぐ適応できましたか?
「はい、私はその前に『WX900』を
使っていたのですが、そこからEX PROに
違和感なく移れて、すぐに使えました。
やはりEX PROは
かなりズレとカーブが少ないですね。
例えば、『切り返し』などの結構ヒネる球でも、
極端にスローとかハードじゃなければ、
私は芯撞きの時とほぼ変わらないぐらいの
厚みで狙ってます。
快適なスピードで撞く分にはズレる不安は
ほとんどないので扱いやすいです。
そして、ズレに関して
さらに『いいな~』と思っているのは、
テーブルコンディションが変わっても、
トビの具合がほとんど変わらないというところ。
それ以前のシャフトは、
テーブルコンディションが違うと、
ヒネった時のトビの量とか
カーブの量とかが違ってました。
新(さら)ラシャだと
結構ズレちゃったりとか。
EX PROはそういうことがほとんどありません。
もちろんよっぽど重たいとか、
極端なコンディションの場合は別ですけど、
普段試合で使うようなテーブルの範囲内なら、
撞き方を間違えなければ、
トビとカーブの出具合はほとんど変わらないですね」
――それは試合でのパフォーマンスや成績に
ダイレクトに現れそうな要素ですね。
「そう思います。
海外での成績が良くなって、安定し始めたのは、
EX PROのおかげがあると思います。
安心して、信じて、違和感なく撞ける。
特に海外の試合ではそれが大事です。
もちろん、
押し引きのキレも間違いなくありますので、
キュースピードがそれほどないという人でも、
EX PROが補ってくれると言いますか、
楽に押し引きができると思います。
私自身、なんの不自由もなく使っていますし、
思っている撞点をきちんと撞けたら、
ちゃんとイメージ通りの動きをしてくれるので、
安心して手球のコントロールができます」
――ちなみに、この2代目河原千尋モデルは
リフィニッシュやリペアなどで、
工場に戻したことはありますか?
「いや、してません。
他のキューもそうでしたけど、
一回いただいたらそのまんまですね。
シャフトだけは、痩せてきたら
新しいものをいただいていたんですけど、
グローブを使うようになってからは
木が摩耗せず、痩せにくくなったので、
いただく頻度が減りました。
ただでさえMEZZ / EXCEEDはすごく人気で、
工場のみなさんもお忙しいじゃないですか。
だから、余計なお手間をおかけしないという
意味でも良かったかなと思います(笑)」
(了)
…………
近日、本インタビューの「後編」をお届けします。
キュー遍歴やブレイクキューについて
語っていただきます。
→後編はこちら。
…………
Chihiro Kawahara
1985年1月5日生
JPBA39期生
JPBA女子年間ランキング1位・6回
(2010年、2011年、2013年、2014年、2015年、2016年)
『ジャパンオープン』優勝2回(2013年、2015年)
『全日本女子プロツアー』優勝7回
『関西オープン』優勝4回
『東海グランプリ』優勝3回
『全日本女子ナインボールオープン』優勝3回(3連覇)
『セントラルレディースオープン』優勝2回
『北陸オープン』優勝1回
『関東レディースオープン』優勝2回
『大阪クイーンズオープン』優勝2回
『全日本選手権』準優勝3回
アジアンインドアゲームズ銀メダル2回、銅メダル1回
2015年『女子9ボール世界選手権』4位
2016年『アムウェイカップ』3位
2016年『女子9ボール世界選手権』準優勝
その他、優勝・入賞多数
『アンセーズ』(大阪)所属