先週の『全日本選手権』(女子の部)で、
自己最高位となる「準優勝」に輝いた
栗林美幸プロ。
大会翌日のコメントをお届けします。
…………
――大会の感想からお願いします。
「今年は頑張れたと思いますけど、
もうちょっと頑張りたかったですね。
でも、初日から
上手に集中できていたと思いますし、
結果的に経験値を大きく上げられました。
最後まで楽しい大会になりました」
――「もうちょっと頑張りたかった」
というのは決勝戦ですか?
「はい、もうちょっと
陳思明を苦しめたかったなと思います
(1-9で敗戦)。
私が3、4回ミスやファウルをしてしまって、
相手に楽な展開にしちゃったので。
あのクラス相手に一発ミスすると
5点くらい取られてもおかしくない。
それは最初からわかってたことです。
3回も4回もミスしてたら
勝てる訳がないですよね。
ミスをしなければ
チャンスはあったと思ってますし、
全然戦えるとは思いました。
もちろん彼女のショット精度の高さは
すごいと思いましたけど、
試合は一発勝負。
上手い人が常に勝つ訳ではありません。
私に出来ないことをやってる訳ではないですし、
『及ばない』とは思わなかったです」
――陳思明とのゲームで見えた、
海外トップ勢との戦い方のヒントとは?
「平常心を保てるだけの精神力かな。
今思うと、
『相手にターンを回さずに撞き切ろう』とか、
『撞き切らないと勝てない』という
意識にさせられちゃってたなと思います。
『一球でも失敗したらまずいぞ。
攻めて、入れて、取り切らなきゃ』と。
『世界チャンピオン』という立場の偉大さが、
そうさせたんでしょう。
知らず知らずのうちに
気負ってしまってたなと思います。
具体的には、もっとセーフティを挟んで
ディフェンシブにプレーしても
良かったのかもしれません。
ミスしてしまったサイドバンクも、
今思えば、行かされてたなと思うし。
あの時、『ここはセーフティかな?』なんて
いっぱい考えたんですけど、
結局はバンクに行って外して、
残った球を彼女が素晴らしいショットで決めた。
結果的に私が彼女の見せ場を
作ってしまったと思います。
もしあのバンクショットが入っていれば、
当然また違った展開になったとは思いますけど、
それよりも、あそこできっちり守りを
選べるような精神力が大事だなと思いました」
――準決勝までを振り返るといかがですか?
「自分のプレーが出来てたと思います。
ヒルヒルまで行った試合
(ベスト16 vs 謝喻雯)や、
相手に序盤にリードされた試合
(ベスト8 vs 土師理恵子)
もありましたけど、
それは相手のプレーが良かったり、
展開がそうなっていたりという感じで、
自分の内容は悪くなかったと思います。
これまでの全日本選手権の中では、
一番自分らしく撞けたと思います」
――自身初の準決勝でも、
状態の良さがうかがえました。
「はい。
(藤田)知枝も状態が良さそうでしたし、
私は初めての選手権の準決勝だったけど、
普通の精神状態で臨めたかな。
内容もまずまずだったと思います。
5ラック目だったと思いますが、
知枝が4番をミスしてくれて、
あそこで展開的に楽になりましたね
(最終スコアは9-1)」
――それにしても、
『負け-負け』で終わった
『韓国グリ国際9ボール』(10月)と
比べると、プレー内容や所作・表情から
大きな自信が感じられました。
「前にもお話ししたかと思いますけど、
韓国から帰って来る前日に、
梶谷(景美)さん、河原(千尋)プロ、
クリ(夫の栗林達プロ)に、
悩み相談ではないけれど、
色々とぶっちゃけて、
皆から色々な考えを聞かせてもらったことが
大きかったなと思います。
それからすぐ、『九州レディース』(10月)
でも優勝できましたし」
――だいぶ踏み込んだ話が出来た?
「そうですね。
試合に対しての考え方、向き合い方、
取り組み方……そういったものが
以前の私は良くなかったなと気付きました。
相手と戦ってみたり、
展開にいらついてみたり……。
自分でもそういった部分が
だいぶ改善されたきたと思います。
気負いすぎずにもっと
どっしりと構えられるようになりました」
――練習量はいかがですか?
「春頃から環境が変わって、
だいぶ撞けてはいたんです。
でも、結果が伴わないから焦ってしまう。
そんな半年間だったかな。
今までより練習出来ていて、腕も振れていて、
調子も良いはずなのに勝てない。
それで『こんなはずじゃない』と焦る。
それがまあ、奢り(おごり)なんですけどね。
そうやって焦ってくると、
ゲーム運びが悪くなるし、
攻守の判断のバランスも悪くなってくる。
特定の球を飛ばしたから負けたというより、
そもそもゲーム運びが下手でしたよね。
気持ちのゆらぎが球に出ちゃってたんでしょう。
その上で相手のプレーが良かったりすると、
もうすっかり追い込まれてしまって。
完全にちぐはぐになっていたと思います」
――その点でも、今回は例年よりも
平常心で全日本選手権に臨めたのでしょうか?
「はい、普段より何も考えずに大会に入れたかな。
それはランキングも関係があります。
2017年はシーズン中盤が全然ダメだったんで、
ランキング1位の可能性はなかったし、
上位争いをしているという意識もなかったので。
いつもなら、『頑張れば、◯位になれるな』
みたいなのがあるんですけど、
今年はそれが全然だったですから」
――しかし、決勝戦はおろか、4強進出も
初めてだったということには驚きました。
「そうなんです。
ベスト8(5位タイ)は、
プロ1年目(2003年)と、
3年目(2005年)に経験してますけど、
あとはベスト16(9位タイ)ばかりです」
――『ジャパンオープン』(3勝)を
はじめとする他の大会に比べると、
全日本選手権での戦績だけ
目立って悪かったですよね。
それもやはり気負いが原因でしょうか?
「なんででしょうね。
やっぱり海外選手がたくさん出ている大会だと
変に意識してしまうのかな。
確かに全日本選手権では、
よそいきの球やカッコつけた球を
撞いてしまってたなという自覚はあります。
海外戦と同じような心理状態に
なってしまっていたのかなと。
何でそうなってしまうのか、その明確な
理由は未だによくわからないんですけどね。
でも、今回はたしかに海外選手を
変に意識しすぎることはなかったです。
いつもより超強力な海外選手の数が
少なかったというのもあるでしょうけど。
それもあって、今年は
『誰にでも負けるけど、誰にでも勝てる』
というフラットな精神状態でいられたと
思います」
――わかりました。
最後に応援してくれた方々にメッセージを。
「今年1年間、海外の試合も含め、
出られる試合に全て出られたのも、
周囲の方々のサポートあってのことです。
(株)三木さま、(株)JUSTDOITさま、
斬タップさま、(株)TMYさま、
(株)東和サプライさま、家族の皆様、
そして、応援してくださった
全ての皆様に感謝しています。
来年もまた、欲張りに
競技活動に打ち込んで行きますので、
応援よろしくお願いします」
(了)
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Miyuki Kuribayashi
JPBA37期生
1979年1月13日生
香川県出身・東京都在住
2007年・2008年・2016年『ジャパンオープン』優勝
『関西オープン』3連覇(通算5勝)
『東海グランプリ』3勝
『北陸オープン』2勝
『九州レディースオープン』3勝
2017年『全日本選手権』準優勝
他、優勝・上位入賞多数
2013年後半に産休からトーナメント活動に復帰
所属・スポンサー:(株)三木、(株)TMY、(株)東和サプライ、(株)JUSTDOIT