昨年の『9ボール世界選手権』で初優勝を飾った
アルビン・オーシャン(オーストリア)。
そのオーシャンが、
昨年の優勝の原動力や、
間近に迫った本年度大会(ステージ2)に
向けての意気込みを語っています。
聞き手は、
WPA(世界プールビリヤード連盟)の広報、
テッド・ラーナー氏。
一昨日(12/4)、WPAサイトに載った
インタビュー記事を抄訳してお届けします。
※今年の世界選手権の告知記事はこちら
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ALBIN OUSCHAN
1990年8月14日生まれ
オーストリア・クラーゲンフルト出身・在住
使用キューはプレデター
2015年『チャイナオープン』優勝
2016年『9ボール世界選手権』優勝(2014年準優勝)
『モスコーニカップ』出場2度。2016年MVP
他、優勝・入賞、多数
テッド・ラーナー記:
「IT’S A FEELING YOU CAN’T DESCRIBE」
昨年(2016年)の世界選手権で、オーストリアのアルビン・オーシャンはチャンピオンにふさわしい球を撞いていた。そこからさかのぼること2年前の2014年大会、彼は決勝戦でオランダのニルス・フェイエンに敗れ、準優勝で大会を終えた。しかし、そこからの2年間で彼はより高いレベルのプレイヤーへと成長し、極めてタフな『チャイナオープン』で優勝(2015)、『モスコーニカップ』でも活躍し、ヨーロッパの多くの大会で優勝や上位入賞を果たしている。
2016年の世界選手権でオーシャンと対戦したプレイヤー達は、自分が”プールモンスター”を相手にしているとわかっていたとはいえ、オーシャンがどれだけ徹底的にやり遂げたかを理解した人は少なかったに違いない。優勝の前日、ベスト8戦の直後にオーシャンが語ったことは傾聴に値する。彼の身に翌日(大会最終日)起こったことは運命付けられていたのだろう。
「2014年以降、参加してきた全てのトーナメントに違いが出ているんだ」――当時25歳のオーシャンは、2016年世界選手権の最終日前日にそう語った。「多分僕はより良いプレイヤーになれたと思う。練習をたくさんした。『チャイナオープン』で優勝した。1年前に父になった。『モスコーニカップ』にも出た。様々なことが僕の人生に立て続けに起こり、その全てを幸せに感じている。なかでも子供とガールフレンドは例えようもなく素晴らしいものだ。恐らく今の僕はパーフェクトな日々を送っているから、テーブルでパーフェクトに近いプレーが出来ているんだと思う」
パーソナルな面とプロフェッショナルな面が全てシンクロした状態で、オーシャンは2016年世界選手権の最終日に登場し、夢のようなパフォーマンスを見せた。準決勝でカナダのアレックス・パグラヤンを一蹴し、決勝戦では衝撃的なプレーでアメリカのシェーン・バン・ボーニングを13-6で圧倒。そして、ドーハの地で9ボール世界チャンピオンの座に初めて就いた。
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まさに2017年の世界選手権が始まろうとしているこのタイミングで(※ステージ2は12/9から)、オーシャンと昨年大会を振り返り、戴冠からのこの1年をどう過ごしていたか、そして、連覇の可能性を聞いてみた。
――2014年準優勝からの2年間を経て、ハードワークの末に遂に昨年初優勝を飾りました。どんな気持ちでしたか?
「言葉にならない気持ちだったよ。ラスト3球は心臓が口から出そうな感じだったことを覚えてる。最後の9番に向かう時に思ったことは『ついに、世界チャンピオンだ』だった」
――昨年あなたはプライベートがとても充実していると語っていた。それは昨年度大会の素晴らしいプレーに何らかの影響を及ぼしていたと思いますか?
「大きな影響があったと思う。それまで以上に人生のあらゆることに幸せを感じるようになったし、子供が出来て何らかのプレッシャーも感じるようになった。やっぱり子供にやってあげられることは全てやりたいしね。そういう状況だったから昨年の僕はあれだけ上手くやれたのかもしれない」
――昨年のシェーン・バン・ボーニングとの決勝戦は、誰もが激しい接戦になると予想していました。しかし、全く競ることもなかった。ワンサイドゲームになったのはなぜだと思いますか?
「たしかにそうだね。決勝戦の序盤でシェーンが2つミスをしたんだ。それで僕が大きくリードすることが出来た。7-2ぐらいの時に思ったのは、彼に反撃のチャンスを全く与えていないということだった。事実、あの試合はずっとそうだったと思う。『モスコーニカップ』で見られるように、シェーンでもプレッシャーがかかるとイージーミスをすることはわかっているけど、彼がどれだけ上手くプレー出来るかもわかっていた(BD註:「だから、付け入るスキを与えなかったことが勝因だ」と言いたい様子)」
――世界チャンピオンになってからのこの1年、競技面とプライベートはどんな状況ですか? オーストリアで有名になったり、新しいスポンサーの話はありましたか?
「とても良い1年だったね。皆が僕のことを知ってくれるようになったし、オーストリアの『ベストアスリート賞』も獲得したんだ。スキーが最大のスポーツであるオーストリアで、プロスキーチームを差し置いて僕が受賞したというのはとても名誉なことだよ。そして、新しいスポンサーやより良い契約もいくつか得ることが出来た」
――今年の世界選手権ではどのようなプレーをしたいと思っていますか? ディフェンディングチャンピオンとしてのプレッシャーは大きいのでしょうか? そして、連覇の可能性は?
「もちろんプレッシャーはあるよ。より多くの人達がチャンピオンの試合に注目するだろうからね。でも、それは覚悟している。僕はただ落ち着いて冷静にやるだけだ。世界選手権には素晴らしいプレイヤーがたくさんいることは皆わかっている。だから、連覇したいとか連覇しなきゃとは言えないよ。ただ自分で納得行くようなパフォーマンスが出来れば良いと思うし、もしそうであればもう一度世界チャンピオンになれると思う」
――他に言っておきたいことはありますか?
「この数年ずっとサポートしてくれた全ての人に感謝しています。簡単なことではなかったけれど、昨年やっと世界のトップに立つことが出来た。でも、ファンや身の回りの人達の存在がなければ成し遂げられなかったからね」
(了)