カスタムキューを多数取り扱っている
その代表、大原秀夫氏が所蔵している
キューを見ていく本企画。
(※過去記事はこちら)。
今回ご紹介するのは
Richard Black(リチャード・ブラック)です。
テキサスに工房を構え、
多くの工程を基本的にハンドメイドでこなす
職人気質な老舗キューメーカー。
伝統的なモデルから芸術性に富んだ一点物まで、
様々なデザインのキューを作っています。
リチャード・ブラックは、
以前にも一度BDで紹介しています
(→ こちら)。
…………
今回撮影したのは、
メイプルベースで3剣の浮きハギが入った、
素朴な味わいのモデル。
銘を見ると、
“2001年12月18日”に完成したものだという
ことがわかりますが、
もっと古いキューだと言われても驚かないでしょう。
大原氏・談:
「良く言えば、
ヴィンテージな味わいのあるキューです。
10年ぐらい前にオークションで購入しました。
商品として仕入れたというよりは、
手頃で程度の良いリチャード・ブラックを
自分で持っておこうかなぐらいの
気持ちだったと思います。
入手してから自分でリフィニッシュして今に至ります。
正直言って売れるとは思っておらず、
値付けもしておりません(笑)。
自分のコレクションでいいかなと思い
所有し続けていますが、
もしご興味ある方がいらっしゃれば連絡ください、
というぐらいでしょうか。
これは彼のトラディショナルデザインの一つで、
『Shanin Ⅱ』という名前があります。
フォアアームは、ステイン(染色)した
バーズアイメイプルをベースに、
浮きハギをインレイしています。
浮きハギの材料は恐らくローズウッドでしょう。
スリーブはローズウッドをベースに、
バーズアイメイプルのウィンドウを6つインレイし、
中にはダイヤ型のインレイを入れています。
計3ヶ所に入れられたステッチリングが、
シンプルなデザインを引き締めています。
前回ご紹介したのは、
白が目立つゴージャスなモデルでしたが、
こちらはオーソドックスでクラシカルなもの。
私はこのキューでは試打をしていないので
正確なところはわかりませんが、
恐らくシャフトは、
他のリチャード・ブラックと同じく、
しなりが大きくて、ズレ(見越し)が出る、
昔ながらの性質のものでしょう。
そういったキューを使いこなせる人が
少なくなっていますし、
デザインもモダンではないので、
今の時代では受けないかなとは思いますが、
リチャード・ブラックの作るキューには
ハンドメイドならではの温かみや
木工芸術品のような風合いが感じられ、
私はそこがとても気に入っています。
これが『巨匠』ならではの味、
存在感というものでしょうか」
(了)