6年ぶりのプロ公式戦優勝を決めた
あの瞬間から、
さかのぼること約21時間、
師匠の姿はすすきのの
『すしざんまい』にありました。
後輩の照屋勝司プロと、
「予選通過、ひとまずお疲れ様」と
互いの健闘を讃えつつ、
翌日への英気を養います。
キヨシ師匠:「今日は予選通れたけど
キツかった~。
僕の会場は『VIVAPOOL』さん。
ベスト128は穴幅1.5個ぐらいの
テーブルで、ホント難しかったけど、
しっかり撞くしかないからね。
丁寧にやってたら、
むしろフォームがカチッとはまってきて、
違和感なく腕が振れるようになってたよ。
明日に向けてあの試合は大きいと思うな」
師匠:「ところで、聞いてくれる?
昨日(金曜。東京から札幌への移動日)も
カツジとこの辺で食事してたんだけど、
解散した後
自分のホテルがわからなくなっちゃって」
カツジ:「え、マジすか。あの後に?」
師匠:「うん」
――え、ちょっと待ってください。
一昨年もそんな話を聞きましたが……。
師匠:「あ〜、そうそう、
前にしたね、そんな話。
またやっちゃったの、あれを(笑)」
――えっ、また。
師匠:「いやさ、ホテルまで
あとほんの50mぐらいよ、きっと。
『この辺だ』ってのは自分でもわかってるの。
でも、全然道がわからなくなっちゃって」
――「すすきのの住所は碁盤の目だから、
”南4西3”とか座標で覚えれば……」と
あれほど……。
師匠:「(聞いてない)
これはもう、自分一人じゃぐるぐる
迷いまくって時間のムダだなと思って……」
――ま、まさかの。
師匠:「そう、タクシーですよ。
運転手さんに言われたよね。
『お客さん、それ30秒で着くんですけど、
ホント~にいいんですか?』って。
でも、こっちも歩いて帰れない訳だしさ。
『構いません。行ってください!』
『すごく近いですよ?』
『はい、いいんです!』って。
乗ってビックリ。
スーッって50mで着いちゃったの!」
――お、同じあやまちを……。
師匠:「いいんだよ。そんなのも含めて
北海道は楽しいんだから」
カツジ:「キヨシさん、スマホで
地図を見れば良いじゃないですか」
師匠:「スマホで地図? どうやって?」
――Googleマップ上に現在地と
目標地点を出せば……。
師匠:「なーるほど。そういうこと。
……あ、あれ? 俺のスマホ、
Googleマップ、入ってないわ」
――じゃ、アプリをダウンロードして
入れときましょうよ。
師匠:「(スマホを置いて)
……ま、わかるんだよ、ホントは。
地図に頼らなくてもさ。
ホテルにチェックインした後は、
近くの目印とか交差点とかをしっかり
確認してから動くようにしてるからね!」
カツジ:「えっ!? だからそれでも
昨晩はダメだったって話ですよね!?」
師匠:「えっ!? ああ、うん……」
…………
その後、お会計をして解散。
「ホントに一人でホテルに帰れます?」
としつこいカツジとBDに対して、
「任せろ! 大丈夫だって!」と師匠。
果たしてその晩は……。
…………
すしざんまいから18時間後、
優勝を飾った師匠と、
その晩もまたすすきので、
ジンギスカン→居酒屋→
プールバーとはしご酒。
失礼を承知で聞いてみました。
――すすきのでは
たびたび道に迷っていますが、
人生に迷ったことはありますか?
師匠:「4回くらいあった。
これ、真面目な話。
迷ったというか、
『ここが分かれ道!』みたいな状況ね。
『どっちを選ぶ?』みたいなね。
でも、自分の選択に後悔は全くなし!
むしろ楽しんでるよ。
すすきので道に迷った時も、
結構楽しんでフラフラしてたかも(笑)」
…………
初めて北海道チャンピオンになったその晩。
食事を終えた師匠は、皆と別れ、
ホテルの方角へ軽い足取りで
迷いなく向かって行きました。
「おつかれ! だから言ってるじゃん、
もう道はわかってるって」
と笑いながら。
師匠、おめでとうございました。
来年も色々と期待しています。
…………
※キヨシ八景 その1