カスタムキューを多数取り扱っている
その代表、大原秀夫氏が所蔵している
キューを見ていく本企画。
(※過去記事はこちら)。
今回は先月に引き続き、
『Schick』(シック)をご紹介します。
代表はBill Schick(ビル・シック)。
1970年代から一点物のキューを作っている
アメリカンカスタムメーカーの
「巨匠」の一人です。
…………
今回ご紹介するのは、
1990年製の8剣モデル。
フォアアームは、ステン(染色)された
バーズアイメイプルをベースに
エボニーの子持ち8剣。
スリーブはエボニーをベースに、
スネークウッド、ゴールド、シルバーなどの
インレイが入れられています。
よく似たデザインです。
大原氏・談:
「この『1990』は、
日本のある個人の方から
買取の依頼があったキューです。
1~2年前だったと思います。
コンディションを見たところ、
音鳴りがして、異常に軽くて、
シャフトには曲がりが見られました。
ということもあり、
そんなに高い買い物ではありませんでした。
入手してから1年ぐらいかけて
リフィニッシュしたんですが、
まだ若干軽くてパワー不足が否めない。
もう少し改善の余地があるかなというところです。
なので、現時点では売り物ではありませんが、
将来的に『for sale』になる予定です。
この『1990』のデザインは、
前回紹介した『1989』によく似ていますが、
グリップ上部のドットリングなどを見ても
わかるように、あちらよりももっと
ザンボッティに近いテイストです。
フォアアームが”ザンボッティトリビュート”で、
スリーブはシックらしいデザイン、
と言えば良いでしょうか。
でも、全体として見るとやっぱり
『どことなくシックだな』と
感じさせるものがあります。
『彼ならこういうデザインを作るよね』と。
個人的にはスリーブのカッコよさは、
前回の『1989』の方が上だと思います。
単純に『1989』の方がゴールドなどの
材料の使用量も多いので、
仮に『1989』と『1990』が同じ
コンディションで並べられていたとしたら、
高値が付けられるのは
やはり『1989』の方でしょう。
でも、2本揃って不思議なのは、
ジョイント部のリングのスロットの数が
『6』なんですよね。
なぜ剣の数と合わせて
『8』にしてないのかが謎なんですが、
彼なりに意図するものがあるはず……
ということにしておきましょうか(笑)。
2回に渡って同一メーカーの
兄弟っぽいデザインを見てもらいました。
似たデザインですが、
自分の手元に来た経緯はあまりに違うので、
私自身可笑しさを感じています。
カスタムキューの面白さは、
そういった背景やいきさつを含めた
出会いの面白さでもあると思います」
(了)