トーナメントプロとして、また、
バグースのチーフインストラクターとして
活躍する西尾祐プロ(JPBA)。
5月に掲載したインタビュー前編では、
現在のプレーキュー、
『EXCEED 西尾祐モデルEXC-8TN』に始まり、
ブレイクキュー、ジャンプキューといった
各キューについてたっぷりと語っていただきました。
↑ 西尾プロ使用キュー一式、手前から、
プレーキュー:
EXCEED 西尾祐モデルEXC-8TN
(2インチエクステンダー付き)
ブレイクキュー:
MEZZ POWER BREAK Kai(魁)(青い方)と
POWER BREAK 2
ジャンプキュー:
MEZZ AIR DRIVE
※詳しくは「前編」にて
…………
後編ではキューケースとその中身、
そして、MIKI((株)三木)との
出会いのエピソードなどをお聞きします。
語り手:西尾祐プロ
聞き手:BD
取材場所:バグース道玄坂店(東京・渋谷)
…………
――引き続きよろしくお願いします。キューケースは『MZ-35』(手前)と『MO-23』の2つあります。
「まず、『MZ-35』は試合の時に使っていて、すごく気に入っているケースです。僕はスペアを含めてシャフトをたくさん持ち歩きますし、エクステンション類や小物もいっぱいありますが、それが全て入るのが良いです。メインコンパートメントにビリヤードグローブや大会要項などの書類もサッと入れられますし、トップ側を開けて、組んだままのキューを入れておけるのも便利です。
どうですか?(とキューケースにキューなど全アイテムを入れて肩にかける) 耐久性も高いので、これだけパツパツに入れても壊れません。入れる物が多くない方なら、一回り小さい『MZ-24』も候補に入ってくるのかなと思います」
――『MO-23』の方は?
「通勤用です(※西尾プロは自宅-バグース本社事務所-店舗間などの移動が多い)。非常にコンパクトで持ち運びのしやすいケースです。
このタイプのケースの原点は20年ぐらい前の『PC-23』というモデル。2B3Sでジャンプキューまで入って、当時としては革新的なコンパクトさとデザインを誇るケースでした。当時僕はバグースに入社して、電車通勤になった頃だったので愛用していました。それがバージョンアップして『NPC-23』になり、大ベストセラーになりましたよね。今でも持っている方がいると思います。
その流れを汲む形で2015年に登場したのがこの『MO-23』。軽くてスリムなのは過去のシリーズと同じですが、トップハンドルが付いたおかげでさらに扱いやすくなっています」
キューケースに入れているアイテム(革ケースは全て西尾プロの自作):
①エクステンション『MEZZ MX-CF210』(※自分で革巻き)
②『EXCEED テレスコピックエクステンション』(※生産終了。自分で革巻き)
③『MEZZ スマートチョーク』一式(※左側は自作の革製チョークホルダー)
④『キューマジックプロフェッショナルティップシェーパー』
⑤キュー用ウェイトボルト各種
⑥『キューマジックストロークトレーナー』
⑦マイ手球
⑧タップケースと革包丁
⑨温度・湿度計
⑪ブリッジヘッド2種(黒い方がロンドンブリッジ。透明の方がワンショットワンキル)
…………
――他、キューケースに入っているものを拝見します。たくさんありますね。革のケースは自作ですか?
「はい、趣味がレザークラフトなので自分で作っています。2つのエクステンション、『MEZZ MX-CF210』と『EXCEED テレスコピックエクステンション』の革巻きも自分でやりました。
『MEZZスマートチョーク』の”磁力で衣服に挟む”というコンセプトは素晴らしいですよね。こういうマグネット式のチョークホルダーはプレーリズムが良くなり、ショットルーティンが磨かれて集中力が増すと思います。……ということで、コンセプトを真似して革でチョークホルダーを自作し、スペアにしています。
『キューマジックプロフェッショナルティップシェーパー』は定番の商品ですね。だいぶ使い込んでいるので、僕が使っている『R』が真ん中だとすぐわかります。
キューのウェイトボルトは万が一のために持っていますが、出先で変えることはまずないです。『キューマジックストロークトレーナー』は遠征先のホテルでも素振りが出来るように持っています。同じくマイ手球も、遠征先で練習しに行ったビリヤード場の手球が軽くなってしまっている場合に使います。僕はタップ交換を自分でやるので刃物とタップも持っています。湿度計は『テーブルコンディションが変わったかな?』と思った時に、すぐ計ってちゃんと確認出来るようにしています」
――どのようにしてMEZZ / EXCEEDプロスタッフになったのかを教えてください。
「僕が初優勝をしたのが1998年なんですが、その翌年(1999年)の春頃に、三木さん(現(株)三木社長の三木一則氏)からお電話をいただきました。当時すでに『MEZZキューは造りがしっかりしていて品質が高い』という評判は耳に入っていましたが、その頃僕はマクウォーター(アメリカンカスタムキュー)を使っていましたし、お話をいただくまで自分がMEZZのプロスタッフになることを想像すらしたことがありませんでした」
――決意のきっかけは?
「『若いプロを応援したい。これからの人と一緒にやっていきたい』という三木さんのお言葉です。もう今は若くないですけど(笑)、当時まだ1回しか優勝していない身にはすごく名誉なことで、嬉しかったのを覚えています。それからの20年間、良い時も悪い時も一貫して応援していただいていることに感謝しています」
――1本目のキューは?
「『UJ』シリーズを僕用にカスタマイズしていただいたキューです。僕は手が大きくて、マクウォーターに慣れていたこともあって、こちらからお願いしてバットを少し太めに調整していただきました。3、4ヶ月で1本目のキューが出来て、すぐに『全日本プロツアー第1戦』(1999年8月)で3位になることが出来ました。全国オープンで初めての表彰台です」
――それから約20年。MEZZ / EXCEEDキューは何本使っていますか。
「全部で5本です。2本目が『PUJ』で、3本目の『EXCEED』が2003年だったと思います。4本目が『OTA』(ビリヤードショップ。現在は閉店)とのコラボモデル。そして、10年前(2008年)から今のEXCEED。シャフトはこの20年で色々と使わせていただきました」
――初めはノーマルシャフトでしたか?
「はい、初めの2年ぐらいはノーマルでした。その頃すでに初代『ハイブリッドシャフト』が出ていて提供もしていただける状態でしたが、ノーマルの品質に満足していたので、ハイブリッドに移る気がなかったです。でも、2001年のある時、お客さんのハイブリッドシャフトを使ってみてビックリ。それまで出来なかった球が簡単に出来てしまった。『なにこれ、すごい』と(笑)。すぐMIKIに連絡をしました」
――西尾プロは商品のテスターを務めることもあるようですね。
「いつも楽しんでやらせていただいています。こちらが先入観を持たないように、テスト品の細かい情報は伏せられていることがほとんど。それを僕が使ってみて感じたことをフィードバックして、という形が多いです。新商品の開発に関わらせていただけるのは嬉しいですし、好きなことなので、いつでもやりたいぐらいです(笑)」
――『パワーストローカー』(通常のキューより約7~9オンス作られたトレーニング用キュー)など、西尾プロが直接的に監修に関わった商品もあります。
「あれもロングセラーですね。かなり重いので持ち運ぶのは大変だと思いますが(笑)。それとさっき話に出た『ストロークトレーナー』も僕が監修させていただきました」
――最後に、西尾プロから見たMIKIというメーカーとは?
「真摯に、誠実に、長く使えるものを作っているメーカーだと思います。安価なグレードのキューでも品質が高くてずっと使えますし、拡張性や互換性を備えたものも多い。それもこれもプレイヤー視点に立った物作りをしている証拠だと思いますが、『これだけのものをこの価格で出して儲かるのかな』と思うほどです。でも、その評判を耳にする人が多いから、どんどん新しいユーザー・ファンが入って来ているんだと思います。
僕は工場に行ったこともありますが、製作の現場もスタッフの方々もすごくちゃんとしている。そうじゃなければ、これだけの品質の物は作れないということだと思います。例えば、キュー尻のゴム(バンパー)を外してみるとわかりますが、MEZZ / EXCEEDは普段見えないところまで綺麗に丁寧に作っています。その数十年の積み重ねで、今の世界的な評価があるのだと思います。
今はプロスタッフ以外でもMEZZ / EXCEEDのアイテムを使っている人が増えています。『プロが自腹で買うメーカー』だということ。それも高評価の証ではないでしょうか。
そして、いつも先々のことを考えて商品開発を行い、必要な投資を惜しまないという、メーカーとしての前向きな姿勢も素晴らしいと思っています。この先もどんなアイテムが生まれてくるのか、僕自身も楽しみにしています」
(了)
※西尾祐プロ編:「前編」