日本を始めとして世界各国で
競技プレイヤー層を中心に強い支持を
得ているハイクオリティ積層タップ、
『斬』は2011年にデビューした
メイドインジャパンのタップ。
拠点は岡山にあり、JPBAの湯山功プロが
代表を務めています。
湯山プロと言えば、
そのすさまじい「キュー切れ」が
ショーや動画を通じて知られていますが、
近年は精力的にトーナメントにも参戦しており、
レッスンインストラクターとしても
プロや上級者を中心に高い評価を得ています。
BDにも過去に数回
ご登場いただいたことがありますが、
斬タップの代表として出ていただいたことは
ありませんでした。
また、斬タップの創業時のエピソードなどは
今となっては知る人も少ないと思います。
そこで、2回に分けて、湯山プロに
様々な質問をぶつけてみたいと思います。
…………
語り手:湯山功プロ
聞き手:BD
――今日はよろしくお願いします。斬タップがデビューして約7年が経ちました。
「早いものですね(笑)」
――さかのぼってお聞きしますが、タップを作ろうと思ったきっかけとは?
「ビリヤードにたずさわってご飯を食べて行きたかったんですけど、ビリヤード場経営だけでは思ったようにいかなくて、というのが直接的な動機です。17年前……30歳ぐらいの頃、僕は広島の福山市でビリヤード場を経営していたんですが、試合に出られないどころか、食べて行くのも厳しい状況でした。何かしなければと思っていたその頃、『モーリ』タップが流行していてすごく良いタップだなと素直に影響を受けていたので、僕も作ろうと思ったのがきっかけでした」
――もともと物作りがお好きでしたか?
「そんなこともないんですが、幸運にも出会いに恵まれて、協力者や機械などが順調に揃い、良い形でタップ製作のめどが立ったのが大きかったです。ただ、立ち上げ当初はタップ作りの難しさを噛みしめる日々で、本当に大変でした」
――それが『KAMUI』であることは、今も知っている人がいると思います。
「どうなんですかね。もう時代が一巡りしていますから(笑)。最近は僕が斬タップの代表だと知らない人も多いですし。ともかく、僕は初めの2、3年関わらせてもらって、その後別部門へ移りました。ダーツアイテムの商品開発・製造・販売をやり、ダーツのプロにもなり……。ですから、KAMUI TIPがあれだけ大きくなったのは、僕ではなく現代表の平岡さんとスタッフ達の力です。今も彼らとは良い関係です」
――その後、KAMUIから離れてご自身で事業をやれられていましたね。
「はい。飲食店などビリヤードと関係ないことばかりやっていたんですが、それが失敗続きで極限まで追い込まれました(苦笑)。にっちもさっちも行かない状況になり、自分に出来ることで勝負するしかないということで、『アミューズメントカジノ』と『斬タップ』をほぼ同時に始めたんです。掛け持ちで働かないと復活出来ないぐらいでした。それが2011年頃の話です。おかげさまで、アミューズメントカジノは立ち上げ当時から悪くなくて、斬タップも初年度の売れ行きはそこそこ程度でしたけど、性能を高く評価していただけました。そこからゆるやかに上がっていき、4年目ぐらいに爆発的に……製作が追い付かない程の状態になりました」
――『斬』(ザン)という名前は湯山さんが?
「はい、僕しかいないので(笑)。シンプルに、僕の武器でもある『キュー切れ』をイメージさせるものということで『斬』にしました。ロゴデザインやヴィジュアルイメージも自分で考えています」
――斬タップはいわゆる「高価格帯」「プレミアムタイプ」の積層タップですが、その路線は立ち上げ前から明確に意識していたのですか?
「していました。それはKAMUIの存在が大きいですね。あれだけの規模感があり、一般プレイヤーへの訴求力も高い。であれば、僕は『自分が使いたいタップ』を軸に、好みに特化する方向でやっていこうと」
――デビュー当時はS・M・Hだけでしたね。
「資金不足でS・M・Hしか作れなかったんです。本当は当時から『ハイブリッドマックス』が作りたかったけど、どうしても出来なかった。そこで、ある程度軌道に乗ってからやることになりました」
――現行モデルは『斬PLUS2』。スタンダードラインがS・M・Hの3つで、プレミアムラインがプレミアムソフト、ハイブリッドマックス、グリップハードの3つ。計6種の商品があります。
「斬プラス2に切り替えてもう1年ぐらい経つでしょうか。デビュー時から言えば、これが3度目の大きなモデルチェンジ。スタンダードラインとプレミアムラインは、簡単に言えば、素材と製法に違いがあります。プレミアムの方がスタンダードより製作に手間がかかっていて、それが価格差になっています。例えば、ハイブリッドマックスであれば、強い反発力がありながら手球をしっかりと捉えられるように、革に特殊な加工を施しています」
――青い色には何か秘密がありますか?
「単に僕が青が好きなので(笑)……だけでなく、あれは染料の色なんですが、染色することによって粘りのアップなど革の特性を変化させています」
――湯山プロご自身が使っているのは?
「普段は『ハイブリッドマックス』です。『H』もムービーの撮影やエキシビションなどでたまに使うことがありますが、最近はだいぶ少ないですね。というのも、ハイブリッドマックスで試合からエキシビションまでほぼ全てまかなえてしまうから。僕の考えでは、ハイブリッドマックスはパワー・弾力・耐久性・打感・コントロール性……など全ての要素が良いバランスで融合しているオールマイティなタップだと思います」
――実際に、ハイブリッドマックスが一番人気なのでしょうか?
「そうです。斬タップの中でハイブリッドマックスの生産量が一番多くて、全体の50%ぐらいあります。それはすごく嬉しいこと。タップについての自分の好みや感性・理論・製法というものが認められているという気持ちになりますから」
(了)
※後編に続く。