カスタムキューを多数取り扱っている
その代表、大原秀夫氏が所蔵している
キューを見ていく本企画。
（※過去記事はこちら）。
今回は、端正で品格を感じさせる意匠と
精巧かつ繊細な仕上げで知られる、
新鋭の若手カスタムキューメーカー、
『Treadway Custom Cues』
（トレッドウェイキュー）の
新作を紹介します。
トレッドウェイキューの代表は、
Josh Treadway（ジョシュ・トレッドウェイ）。
ミズーリ州セントルイスが製作拠点で、
ジム・バスに師事していた経歴を持つ彼は、
2010年に製作を開始し、
2012年にACA（American
Cuemaker's Association）に加盟。
キューディーラー・コレクター・
プレイヤーから熱い視線を送られている、
人気の新興メーカーです。
…………
今回紹介するのは、今年4月に
アメリカで開催されたエキスポ、
『SBE』（Super Billiards Expo）の、
トレッドウェイのブースに展示されていた
2018年完成のキュー。
染色したブラックアッシュバールを
ベース材として使用。
長短6剣のエボニー（黒檀）のハギは、
内側から白・赤・白・黒の
ベニアで縁取られています
（黒のペーパーベニアも間に挟まれています）。
スリーブのボックスインレイや
リングに使われている色板は
ハギやインレイと色を揃えてあり、
一体感が高められています。
デザインそのものは
クラシカルなスタイルですが、
だからこそ、バールウッド（こぶ材）の
不規則な紋様が引き立ち、じっくりと
観賞したくなるキューです。
大原氏・談：
「今年のSBEが開幕してすぐ、
一直線にトレッドウェイのブースに向い、
3分で商談が成立したキューです。
以前、アメリカで僕が困っていた時に
彼が助けてくれたことがあり、
そのお礼の気持ちも込めて購入しました。
『次に来た時には、絶対あなたのキューを
買うから』と約束していたのです。
彼は2本候補を提示してくれたのですが、
私はバールウッドに目がないので、
すぐこちらのキューに決めました。
私があまりに躊躇なく決めたものだから、
彼は驚いていましたが（笑）。
その時は、このバールウッドが
何のバールなのかはわかっていなくて、
後から本人に尋ねて、
ブラックアッシュバールだと知りました。
私はとにかくバールウッドが好きで、
杢目のよく出ているバールウッドのキューと
ベースギターはすぐ手に入れてしまいます。
中には数分しか使ってないものもありますが（笑）。
このキューはFor Saleで、
参考価格はそうですね……、
60万円台でしょうか。
トレッドウェイはジム・バスの弟子で、
ジム・バスが引退する時に、
その機材やノウハウなどを受け継ぎました。
独り立ちする前後から、彼は『ICCS』
（International Cue Collector Show）で
ブースの設営を手伝ったり、様々なキューを
いっぱい生で見てきているので、
審美眼やトレンドを読む目が
養われていたのだと思います。
そのおかげか、彼のキューはデビュー時から
総合的な完成度が高くて、
なかでも塗装のクオリティが高かった。
つまり、コレクターがケチをつけにくい
仕上げのクオリティを備えていました。
まだキャリアは8年程度と、
新興メーカーと言っていいですが、
10年に満たないメーカーの中では
トップクラスのメーカーでしょう。
30歳ぐらいだと思いますが
（※現在32歳）、とても童顔で、
初めて見た頃は10代かなと思ったぐらい。
今はどんどん実績を積んで、
売れるメーカーになってきているので、
だんだんと顔つきにも自信が
出て来たかなと思います。
人柄はものすごく実直で控えめで、
これはトンキンにも言えますが、
今までのヒットキューメーカーが持っている
『狡さ』がないようなタイプ。
初めて日本にトレッドウェイキューを
持ち込んだのは『Detective K』です。
ICCSに頻繁に顔を出して、
彼とコミュニケーションを取ってきた
日本人となると、Kと私ぐらいしか
いなかったはずなので。
まだ日本に入ってきている本数は少ないですが、
これから増えてくるのではないでしょうか。
2年後にキュー製作10周年を迎えますが、
それを記念して、シルバーを使った
スペシャルモデルを作るという話も耳にしました。
ますます評価を高めて行くと思います」
（了）
