カスタムキューを多数取り扱っている
その代表、大原秀夫氏が所蔵している
キューを見ていく本企画。
(※過去記事はこちら)。
今回は、1970年代からキューを
製作している老舗メーカー、
『Prather』(プレイサー)を紹介します。
オクラホマ州ムーアランドを拠点に
家族経営で製作しているメーカーですが、
現在はキューパーツメーカーとして
認識している人が多いでしょう。
…………
今回紹介するのは、
2006年に作られたモデル。
エボニー(黒檀)をベースに
アフゼリアバールウッドの長短8剣ハギ。
ベニアの白い木材はホーリーウッド
(西洋ヒイラギ)。
スリーブはアフゼリアバールウッドと
エボニーのコンビネーションで、
リングがアクセントになっています。
大原氏・談:
「これは新品です。ただし私が自分で
選んで入手したキューではありません。
別のプレイサーキューを
ある所に展示していたところ、
バットに曲がりが出てしまい、
修理のためにジェフ・プレイサーに送ったら、
『もう少し良いキューに交換するよ』と
言われて、送られて来たのがこれでした。
私が大好きなバールウッドを
使っているキューですが、
木目自体もデザインもそこまで派手ではなく、
シンプルにまとめられています。
私が取り扱ってきたものの中では、
あまりにもおしとやかで
インパクトに欠けるキューなので、
ほとんど外に持ち出していないですし、
存在を忘れそうになっていました(笑)。
これは売り物です。
参考価格は30万円ぐらい。
プレイサーはジェフの父、
ドン・プレイサーが興したメーカーで、
田舎の実直なキューメーカーという感じの、
家族経営のメーカーです。
私はジェフと仲良くしていた時期があり、
一時期よく一緒に動いていました。
彼は快活で明るい人柄で、
気遣いも自然に出来る人なので、
遊んだり食事をするのは楽しかったですね。
キューメーカーとしてのプレイサーは、
ヒットモデルや定番のデザインという
ものはなく、どんなデザインでも作り、
なんでも出来てしまうメーカーです。
一時期は、全くプレーに向かない……
というか最初から実用を考えていない、
パルテノン神殿みたいな展示専用の
ド派手なキューもたくさん作っていました。
現在は、多少はキューも作っているようですが、
ほぼ完全にキューパーツメーカーになっています。
アメリカのエキスポでは、
プレイサーがドーンと大きなブースを構えて、
プロ・アマ問わずキュー製作者に
パーツを販売している姿が毎度おなじみです。
『プレイサーでパーツを一式揃えれば、
誰でもキューが作れる』
などと言われるほど、
小さなパーツから、希少な材料、
後は塗装するだけという半完成品まで、
本当にたくさんのパーツを取り扱っています。
私もプレイサーから、
TADキューの糸巻き用の糸など、
リフィニッシュのためのアイテムを
購入したことがあります。
カスタムキューメーカーとしての
プレイサーは、高い地位・名声を
得たとは言えません。
私自身プレイサーとは長い付き合いですが、
キューは1、2本しか買っていないはず。
パーツメーカーであることの強みを活かし、
良い材料を使った質の良いキューが
多いのですが、私の好みからすると
デザインがおとなしいです。
しかし、プレイサーがパーツメーカーとして
影で支えているキューメーカーは
膨大な数に登ると思いますし、
キュー産業やカスタムキュー文化
というものをサポートし続けている、
『いなくなったら困る存在』であることは
間違いないでしょう」
(了)