私はDetective K。
ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。
周囲からは”K”と呼ばれている。
すっかり涼しくなった。
キューのストロークも滑らかになる季節。
来月はもう『全日本選手権』。
月日が経つのは早い。
*****
『ビー・ビー・ビー!』
BDからメッセージだ。
前回からあまり日にちが過ぎていないぜ。
『10月13日に開催される、
TOCNを調査してください。』
ティーオーシーエヌ?
インターネットサービスプロバイダか?
『ボケにキレがありませんね。
Top Of Cues Nippon、
略して『TOCN』のことです。』
あぁ、それか!
1年ぶりだから忘れていたぜ。
去年と同じ、
『MECCA Yokohama』で開催だな。
『そうです。
あえてBDも会場入りしますから、
さぼったり、くだらないギャグ
言ったりしているとすぐわかりますからね。
調査をしっかり頼みますよ。』
あえて……?
監視付きか。今回はやけに厳重だな。
とにかくオレはキュー探偵。
引き受けるぜ、その依頼。
*****
10月13日(土)。
オレは愛車のホンダを飛ばして
横浜に向かった。
準備時間が不足した昨年の反省から、
集合時間は午前9時に早められた。
どんよりした曇り空。
首都高に上がる直前、
忘れ物に気付き引き返したが、
大した渋滞もなく、午前9時半には
『MECCA Yokohama』に到着した。
すでに出展者の大半が来ていて、
MECCAスタッフともども忙しく働いている。
オレも調査の前に、まずはブースの設営だ。
*****
今回で3回目となる
『Top of Cues Nippon』、略称『TOCN』。
(※BD註:2017年レポートはこちら。
2016年レポートはこちら)
キューメーカー、コレクターが一堂に会し、
キューを展示する一日限りのイベント。
会場時間は午後3時から7時まで。
普段滅多に見ることが出来ない
コレクションを見て、気になるメーカーの
キューを実際に手に取り、選べる。
入場料は1,000円。ワンドリンク付き。
主催は、北海道の
『カーセンブロック』コレクター、
松實伸之氏。
前回との最大の違いは、
キューなどの販売を可としたことだ。
キューメーカーによる展示品は、
原則全て商談・購入可。
コレクターでも、
「売買可」とあらかじめ宣言すればOK。
今回の出展者は、以下の通り。(敬称略)
■コレクター:10名
松實伸之 北海道札幌市
飯田安保 石川県金沢市
石川英司 神奈川県川崎市
大原秀夫 神奈川県横須賀市
探偵K 埼玉県さいたま市
酒巻博行 千葉県柏市
玉田勝己 京都府京都市左京区
野田恒一 神奈川県横浜市
溝渕靖典 埼玉県川口市
渡邊秀之 千葉県流山市
■キューメーカー:3名
菱沼巌(Lucky’s Cue International)新潟県新潟市
早川徹(早川工房)滋賀県栗東市
高橋博之(HAKU カスタムキュー) 茨城県牛久市
*****
正午までに、各展示者は設営を完了。
コレクターのブースは、キューだけでなく
趣向を凝らしたディスプレイ。
それぞれのコレクションに対する
思い入れを表現するステージだ。
並んだキューは、100本以上。
さらに今回は、2つのスペシャルブースがある。
ひとつは、
7月27日に亡くなったキューメーカー、
デニス・ディックマン追悼ブース。
コレクター所有のディックマンキューと、
思い出の品を持ち寄って展示し、故人を偲ぶ。
もうひとつは、「お宝販売」ブース。
各コレクター所蔵のビリヤード関連小物や、
メーカーの販促品を100円~500円で販売。
売上の一部は、イベントの運営費に充当する。
そして、試し撞きやゲームができるよう、
ポケットテーブルも確保。
午後3時までは、
コレクターやキューメーカー自身が、
他のブースを見て回る内覧会。
始まったらそんな余裕はないからな。
*****
午後3時開場。
しかし、実際には待ちきれず、
早めに来場するマニアもちらほら。
オレは、自らのタッドと、
本人欠席ながらキューだけ届いていた
大原秀夫氏所蔵のタッド、
合せて24本のタッドコレクションを展示。
さらにデニス・ディックマン追悼ブースの解説。
おまけに「お宝販売ブース」の売り子。
調査そっちのけで、休みなく働くハメとなった。
ま、それはそれでも良いのだが、
早川工房、HAKU、ILC、そして
9heartsと並んだ力作のキューを
購入検討する間もない。
*****
各コレクターのブースは、
それぞれの世界観が表現されていて見飽きない。
プレーに使ってこそのカスタムキュー、
という気概に溢れ、
ジナやザンボッティ、長年愛用の
ジョスウェスト等を展示した玉田勝己氏。
1980年代に人気を博した
独創性あふれるデザインが、
今なお多くのプレイヤーを惹き付ける
メウチに絞って蒐集する石川英司氏。
製作者アーニー・ギュテレスとの
長年の親交あってこその
ジナキュー展示に力を注いだ野田恒一氏。
ビリヤード関連の書籍やグッズなどの
展示も含め、カスタムキューでなくとも
コレクションの対象となることを表現した
飯田安保氏。
……などなど、バラエティ豊かな展示を
全て受け入れるのが、TOCNの良さだ。
(※BD註:2018 TOCNの
ミニフォトギャラリー by BDはこちら)
来場者は昨年と比べてやや少ないが、
その知識レベルや熱心さは、昨年以上。
じっくりと時間をかけて
コレクションに見入っている。
キューメーカーのブースでは、
購入を検討中なのか、
考え込んで身動きしない来場者もいる。
「お宝販売ブース」は、
珍品、名品であっても破格の安さ。
オレがひそかに狙っていた
『ジェニファー・チェン写真集』も
いつの間にか売れていた(涙)。
現(株)日勝亭社長であり、
MECCAを立ち上げた銘苅朝樹氏をはじめ、
内垣建一プロ、小川徳郎プロ、
トップアマの佐原弘子選手も来場。
普段お目にかかれないプレイヤーたちとも、
キュー談義に花が咲く。
休む間もなく駆け回っていると、
4時間はあっという間に経過。
調査と言いつつ、オレはイベントを
楽しんでいるだけだったな。
*****
第3回『TOCN』は、
展示コレクターや来場者の数は、
昨年よりやや減ったものの、
キュー販売もOKとした点が大きな変化だ。
今後、コレクターの展示を軸に、
ビリヤード関連製品を展示販売する
イベントとして発展してゆくのではないか。
第4回『TOCN』は、
おそらく来年も開催されるであろう。
詳細については、今後検討との事だ。
またなんかあったら調べるぜ。
よろしくね、BD!
……『ポンポン!』
うっ! 不覚にもバックを取られた!
誰だ? オレの肩を叩くヤツは。
『やだなぁ、K。BDですよ。
TOCN調査ありがとうございました。』
ふぅ、焦らすな。
しかしなぜBDが、わざわざここに?
『仕事の依頼はここまで、
と直接お伝えしたかったからです。』
どっきゅーん!
キュー探偵K、これで最終回!?
(not to be continued… ? )
…………
Detective “K”についてはこちら
…………