日本の本州と同じくらいの
広さの国土を有し、酪農や牧畜、
観光が主産業として知られる
南半球の島国、ニュージーランド。
間もなく冬を迎える現地に
今年4月から滞在しているのが、
京都大学の大学生、岡崎智也さんです
(※現在は休学中)。
BDは日本で何度か岡崎さんに
お会いしたことがあり、仕事を
手伝っていただいたこともある間柄。
ビリヤードが大好きな岡崎さんは、
やはりすでにニュージーランドでも
ビリヤードを満喫していました。
でも、ニュージーランドには
どんなビリヤード場があり、
どんな競技・種目が好まれ、
どんな人達がプレーしているのか。
そもそもニュージーランドでは
ビリヤードは盛んなのか。
そういったことについて、
BDもそうですし、読者の皆さんも
ほぼ何も知識がないと思います。
そこで、岡崎さんに数回にわたって、
NZのビリヤード事情をレポートして
もらおうと思います。
まず今回は、
現地最大の9ボールイベント、
『NZオープン』についてです。
…………
岡崎智也・記:
はじめまして!
ワーキングホリデー制度を利用して
今年の4月よりニュージーランド
(以下NZ)に滞在しております、
岡崎智也(オカザキトモヤ)と申します。
これから数回にわたって、
NZのビリヤード事情を
Billiards Daysの読者の皆さんに
お伝えできればと思っております。
…………
今僕は、NZ最大の都市、
オークランドに住んでいます。
オークランドの人口はおよそ150万人
(NZ全土の人口の約1/3)。
日本で言えば札幌のような規模でしょうか。
日本からは直行便で10時間半かかります。
日本との時差は+3時間。
ちなみに、写真中央のタワーは
「Sky Tower」と言い、
南半球で一番高いタワーです(高さ328m)。
…………
そして、今回は、
5月18日~19日の2日間で行われた
『NZオープン』に参戦した時の
模様をお届けします。
(※NZオープンの正式名称は
『2019 Excellence Billiards NZ Open 9-Ball Championship』)
日本を発つ前から、
NZのビリヤード事情を調べていて
この大会の存在に気付き、
「どうせやったら出てみよか~」なんて
軽い気持ちでエントリーしました。
下の方にも書いていますが、
申し込みは『CueScore』という
サイトでワンクリックで済みます。
日本で例えると『ジャパンオープン』に
出るようなものですが、
あまりに簡単に申し込めるため、
実感は全くありませんでした。
ちなみに僕のスペックは、
・歴4年のBクラス。
JPAはスキルレベル8。
『アマローテ』B級代表経験あり。
・ハウス・BCLなど出場多数。
しかし優勝経験はなし。
・オープン戦の参加経験は
『京都オープン』の1回のみ。
・海外試合の経験なし。
といったもの。
「チャレンジ精神で頑張ろう」
なんて思っていました。
…………
今回の会場は、
オークランド中心部から車で
北に15分ほどの地域に位置する
『Pool & Blues』です。
写真中央に見える扉から入って
2階に上がります。
…………
店内には、
ポケットテーブル(9フィート)が12台、
スヌーカーテーブルが1台、
中国式8ボール(チャイニーズ8)
テーブルが1台、
そして、7フィートの
英国式8ボール(イングリッシュ8)
テーブルが3台ありました。
ポケット台は、全台おそらく
『ブランズウィックGold Crown V』の
コピーだと思います。
NZでは日本と同じく9フィートの
ポケットテーブルをよく目にしますが、
その次によく見掛けるのが
英国式8ボールテーブルです。
「ビリヤード場」では
ポケットテーブルが多いですが、
「プールバー」っぽいお店だと
英国式8ボールテーブルの方が多い印象です。
NZはイギリスの支配下にありましたが、
その名残でしょうか。
スヌーカーも1店舗に1台は
置かれているということが多いです。
残念ながらキャロムは全く見かけません。
…………
会場の『Pool & Blues』の
ポケットテーブルのうち1台は、
常にTVテーブル仕様になっていて、
試合の際にはFacebookで
ライブ配信されます。
『Pool & Blues』については、
いずれ別記事にて
より詳しく紹介したいと思います。
…………
NZオープンの優勝者と準優勝者に
贈られるトロフィー。
NZを象徴するモチーフ、
コル(シダの新芽)の形になっています。
試合要項と形式は以下の通りです。
1NZ$=75円程度と考えてください。
・優勝賞金2,000NZ$
・エントリーフィー80NZ$
※NZPA年間登録費として60NZ$が別途必要
(NZPA=New Zealand Pool Association、
日本のNBA/JPBA/JAPAのような団体。
なので”CSカード年会費”に相当するものと
考えればわかりやすいと思います)
・WPAルール9ボール(9オンフット)
・男女別トーナメント。
完全ダブルイリミネーション(決勝戦以外)
・男子9ラック先取、女子7ラック先取
今年の男子の部の参加者数は60名、
女子の部の参加者は15名でした。
日本とNZとでは24倍の人口差が
あることを考えると、非常に多く感じます。
…………
使用球はサイクロップボールの最新型、
『HYPERION』(ハイペリオン)。
このお店の経営者で、
かつ国内No.1プレイヤーの
Matt Edwards選手(マット・エドワーズ)と
Molrudee Kasemchaiyanan選手
(モルルディー・カセンチャヤナン)は、
サイクロップ、Mezz Cues、
KAMUIからスポンサードされており、
本大会もその協賛を受けています。
大会名に冠されている
『Excellence Billiards NZL』とは、
エドワーズが経営している
ビリヤード用品会社の名前です。
…………
参加申し込みや試合結果の管理は、
全て『CueScore』サイト上で行われます。
スコアもリアルタイムで反映され、
非常に便利だと思いました。
日本でもこういった仕組みを利用すると、
さらに円滑に試合進行が
できるのではないでしょうか。
…………
僕の第一試合は、
朝イチの9時からでした。
対戦相手はBrendan Ng選手。
NZ国内では5本の指に入るほどの
実力者です。日本で言うと
中堅プロレベルでしょうか。
数日前に発表された
トーナメント表を見て対戦相手を知り、
「少ないチャンスを
ものにしないといけないな」
なんて思っていたのですが……、
結果は2-9で負け。緊張したまま、
立て直すこともできず終わりました。
印象的だったのは、
途中で僕がフロックを出した後に
相手のNg選手もフロックを出した場面。
ニヤッと笑って
「これでお互い様やな!」とNg選手。
見ていたギャラリーは爆笑。
このように、軽口を叩いたり、
相手のナイスショットに声援を送るなど
和やかな雰囲気で進んで行く試合が
あちらこちらで見られました。
…………
そして、数時間後には敗者2回戦。
相手は台湾系オーストラリア人、
Karl Wong選手(写真右)。
実力はA級の中の下くらいだと思います。
この試合もサクサク取り切られ、
1-7(敗者側は7ラック先取)で
終戦となりました。
Wong選手の使用キューは『ZEN』。
「羅立文を知っていますか?」と、
彼の方から話し掛けてくれました。
(※JPBAトッププロの羅立文プロ
(国籍は台湾で横浜在住)はZEN使用プロ)
なんと、Wong選手は
大阪に住んでいた時期があり、
『アイオイステージ』に
通っていたとのこと。
僕もずっと大阪に住んでいたので、
話が弾みました。
…………
かくして僕はトーナメント最底辺の
「負け負け」となったので、
観戦モードにスイッチ。
上の写真はお店のフード。
『BBQ Bacon Burger』と
NZ名物の『Fish & Chips』です。
下の写真はNZで最も有名なビール、
『Steinlager』。
日本のアサヒみたいなものです。
『Pool & Blues』は
フードメニューも本格的で
お酒も多種揃えています。
これについてはまた別記事で
紹介したいと思います。
ちなみにですが、試合中にお酒を入れて
プレーしている人もいました。
何も言われていなかったところを見ると、
規則的にもOKのようです。
…………
大会2日目には、1日目で
敗退した人向けのサブトーナメントも。
22名の参加で、
シングルイリミネーションの5ラック先取。
僕も参加し、1回戦はこの巨人選手と。
たぶん2mはあったと思います。
驚異のシュート力と早撞き、
見かけによらない繊細なプレーで、
スパスパ行かれて3-5で敗戦。
ラックを組む時に
半ケツ出ていたのが印象的でした。
…………
今大会には、僕以外にも
日本選手が2名出ていました。
「平成最後と令和最初のオープン戦、
連続優勝」の田中裕也選手(右)。
(※2019年『四国オープン』と
『日本縦断オープン 関西』で優勝)
「グランプリウェスト
女子ミニトーナメント初回覇者」の
田岡奈々枝選手(左)。
ともに「観光ついでに参戦しました」
とのこと。
田中選手は勝者2回戦で、
NZ男子No.1プレイヤーの
エドワーズと対戦。
ギャラリーの注目を集める
ハイレベルな熱戦の結果、
9-7で田中選手が大金星を挙げました。
その後も地元の強豪選手を退けて
勝ち進みましたが、
決勝直前の敗者最終戦で、
敗者側を上がって来た
エドワーズと再度対戦。
そこで惜しくも4-9で敗れ、
3位に終わりました。
田岡選手も女子の部で健闘しましたが、
同じく決勝直前の敗者最終戦で
NZ女子No.1のカセンチャヤナンに
5-7で敗れ3位でした。
…………
男子の部は、
エドワーズ(上写真左)が
通算4度目の優勝。
女子の部は、通算3度の優勝歴がある
カセンチャヤナン(下写真中央)を、
地元のHazel Cook選手が
ヒルヒルで倒して初優勝を飾りました。
試合後には記念写真。
両選手とも気さくに応じてくれました。
…………
「負け負け」の自分が言えることでは
ないかもしれませんが、
正直なところ、エドワーズや
カセンチャヤナンといった
一部のトップ選手を除くと、
日本より全体のレベルは低いです。
日本から来た両選手も言っていましたが、
おそらく東京や大阪など強豪選手の多い県の
アマナイン予選の方がハイレベルです。
それでも、
日本に負けていない部分もあります。
それは「ビリヤード愛」。
相手のナイスショットへの掛け声や、
観客も巻き込んでの大爆笑を見ると、
「ああ、この人達は
心からビリヤードが好きなんだ」
と実感させられます。
日本から遠く離れた国でも
これほどに愛されているビリヤードの
可能性を信じずにはいれません。
…………
次回は、本大会の会場であり
僕の現時点でのホーム店でもある
『Pool & Blues』について、
さらに詳しくご紹介します!
(了)
…………
岡崎さん、ありがとうございました!
また次回もよろしくお願いします。
…………
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