〈BD〉TADの輝き vol.6「ハイグレード感漂う『8剣』」編

 

カスタムキューを多数取り扱っている

UK Corporation

 

その代表、大原秀夫氏が所蔵している

キューを見ていく本企画(※過去記事はこちら)。

 

今回も「TAD Custom Cues」

(タッドキュー)を紹介します。

 

今回は、メイプルをベースに

エボニー(黒檀)で入れられた

長剣&短剣ハギが目を引く、

高級感ある『8剣モデル』です。

 

Vol. 1

Vol. 2

Vol. 3

Vol. 4

Vol. 5

 

…………

 

トップ画像の右のキュー:

 

 

1976~1977年製と思われるモデル。

バーズアイメイプルのフォアアームに

エボニーの8剣。

奥村健プロ(現JPBF、当時JPBA)が

使っていたもの。

 

…………

 

トップ画像の中央のキュー:

 

 

1988年~1989年年製と思われるモデル。

ステイン(着色)された

バーズアイメイプルのフォアアームに

エボニーの8剣。

 

…………

 

トップ画像の左のキュー:

 

 

1986年〜1987年頃のモデルで、

シリアルNo.は887。

バーズアイメイプルのフォアアームに

エボニーの8剣。

大原氏がメインのプレーキューとして

長年使っていたもの。

 

…………

 

大原氏・談:

 

「TADの8剣と言えば、

『高級グレード』でしょう。

 

この3本のような、

メイプル(バーズアイメイプル)ベースで

エボニーの長短8剣ハギを入れたものが

8剣の基本デザインです。

 

私は特にベニア(色板)なしの

シンプルな8剣が好きで、

気に入ったものがあれば

すぐに買いたくなってしまいます(笑)。

 

3本とも、ハギの剣先には

『クローバー』が入っていますが、

これは当時はハギの先端の長さを

ピッタリ揃えるのが難しかったので、

それを誤魔化すために入れられたと

されています。

 

スリーブのデザインも3本ほぼ同じですが、

右のキューだけ木材を使っています。

年代的に右のキューが一番古く、

後に木材から樹脂に置き換わって行きました。

 

TADではもともと4剣モデルの方が

数多く作られていましたが、

徐々に8剣モデルの生産本数も多くなり、

そして、高く売れるようになりました。

 

それは恐らく工作機械の進化や

生産効率の向上で、

4剣とあまり変わらない時間と手間で

8剣が作れるようになったからだと思います。

 

1本ずつ見ていくと……、

 

まず、一番右のキューは、

奥村健プロ(当時JPBA、現JPBF)が

使っていた、1976~1977年製と

思われるモデルです。

 

入手した時には

『奥村さんが使っていたものか……』

と感動しましたね。

奥村さんはTADを3本使っていたそうで、

これはそのうちの1本です。

 

真ん中は、

フォアアームのバーズアイメイプルが

ステイン(着色)された8剣がないかと

探していた時に見付けたものです。

たしか100万円前後で購入したと思います。

 

一見すると、真ん中のキューと

左のキューは完全に同じデザインですが、

バットキャップ(キュー尻)の長さや

スリーブの長さが違っている。

 

これはタッド・コハラさんが

『TADキューは全てが一点物である』

というポリシーに基づいて

意図的にやっていたことです。

 

最後に、左のキューは、

私が27歳の頃から50歳ぐらいまで

メインで使っていたキューです。

 

私の知り合いがTADの工房を訪れて、

これを直接購入したのですが、諸事情あって

私が譲り受けることになりました。

 

私のUK Corporationの名刺に入れている

TADの画像はこのキューです。

 

1986年〜1987年頃に作られたもので、

いわゆる『TADデカロゴ』の1号機です。

シャフトの先端径は10.1mmとかなり細いです。

 

故・立花正雄プロには及びませんが、

当時は私もキュー切れに自信があり、

よく立花プロと一緒にTADキューでの

『効かせ方』を研究したものです。

 

50肩になってしまい、このキューの

性能を引き出せなくなったと感じたので、

使わなくなってしまいましたが……(苦笑)。

 

そうこうしているうちに

タッド・コハラさんが

亡くなってしまい(2013年)、

私のプレー意欲もそこまで高まることが

なかったので実現していませんが、

 

今でもたまに、

『これと全く同じデザインで、

現代的なトビが出にくい設計・スペックで

もう1本作ってもらおうかな……』と

思うことがあります。

それだけ思い入れのあるモデルです」

 

(了)

 

TAD連載:

Vol. 1

Vol. 2

Vol. 3

Vol. 4

Vol. 5

 

 

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