私の名はDetective K。
ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。
11月は、『全日本選手権』。
令和元年は、台風だ大雨だと、
自然の猛威にさらされているうちに
ビリヤード業界の年間総決算の季節が来た。
国内プレイヤーが、新元号最初の
優勝者となるのは、来年以降に持ち越しだな。
リンリンリン♪
うむ? BDからネット通話だ。
そういえば最近連絡がなかったな……。
『前回の依頼からだいぶ間があきました。』
ふっ、秋は試合が多いからな。
BDが忙しいのはわかるぜ。
『お気遣いなく。ところで最近
ハデなキューを手に入れたとか。』
すでに耳に届いているか……。
『キューの価格は、インレイで決まる、
逆に言えばインレイの数が多いと
値段が上がります。カスタムキューでは、
その傾向は一層強いはず。』
その通りだ。
『そこでインレイの数が多い、
いわゆる「キラキラキュー」について
調べて欲しいのです。』
とにかくキラキラヌルヌルした棒探しだな。
『ヌルヌルは余計ですが、そんなところです。』
よかろうBD、オレはキュー探偵K。
その依頼、引き受けた!
*****
玉を撞く道具としてのキューに、
装飾は本来必要ない。
棒のどっち側で玉を撞けば
いいのかが分かれば良い。
しかし、道具としての優劣や
プレイヤーの慣れが勝敗に影響する以上、
玉屋の「貸キュー」ではなく、
個人所有の「マイキュー」が
求められるのは当然。
誰の持ち物かが分かるよう名前を刻む、
あるいは優れたキューであることを
誇示するため、装飾を加えることは、
19世紀には行われてきたことだ。
もちろん、高性能なキューを作るためには、
素材となる木材の選定や、
より手間のかかる製作法、
プレイヤーの手間に合わせた
重量やバランスの調整など、
量産品とは異なるアプローチが必要となる。
「せっかく手間暇かけて良いキューを
作るのだから、更に一工夫して
見栄えも良くしたらいいんじゃない?」
というのが、
キューに装飾が求められるようになった理由だ。
*****
「キラキラキュー」とは、
装飾がバット全体に施されているものを指す。
デザインが細かければ細かいほどよく、
貴金属や宝石が使われているとなお良い。
良いキューに装飾を施したというより、
装飾を施しているから良いキューとも言える。
英語なら、”Glitter”とか
”Gramourus”という表現がぴったりだ。
70年代のデヴィッド・ボウイや、
T.レックスといったミュージシャンのイメージだな。
オレが最近入手したキューというのは
この『ZEN Custom Cue』だ。↓
長短6剣デザインに、シルバーや
ゴールドによる微細なインレイが、
表面を埋め尽くすように入れられている。
グリップはインレイが入れられたリングで
3分割され、上から下まで豪華絢爛なデザイン。
インレイはゴールドやシルバーが多用され、
光が当たるとまばゆく光る「キラキラキュー」だ。
「もったいなくて使えないのでは?」
などと言われたが、オレはプレーに使っている。
特性は極めて現代的。扱いやすいキューだ。
*****
さて、「キラキラキュー」は
いつ頃出現したのか?
1960年代のアメリカで、キューを飾るため
多用されるようになった「インレイ」。
「インレイ」(inlay)とは、
Season 4のepisode 03、04、08で
説明した通りだ。
当初は、真珠母貝を丸型や菱形に切り出した、
出来合いの素材を使っていた。
バット表面に丸い穴を開けたり、
菱形の溝を彫ったりするのは、
簡単な工具で可能だ。
当初は、「注文主の好みに合わせた
特別なキュー」の注文御礼として、
オマケのように入れていたであろうインレイも、
数が増えると手間になる。
インレイを増やせとリクエストがあれば、
インレイの数に応じて価格が上がるのは当然。
西海岸のジナ、東海岸のパーマー、
それぞれの最高級モデルや、
カスタムキューの代名詞、
バラブシュカのインレイ入りモデルは、
当時の「キラキラキュー」と言ってよいだろう。
*****
1970年代になると、インレイは
出来合いのパーツを入れるだけでなく、
様々な形状をキューメーカー自身が
材料から切り出すようになった。
こうなるとキューの値段は、インレイの数と
デザインで決まるようになってきた。
さらに1980年代は、空前の映画『ハスラー2』
あるいは『プールバー』ブーム。
バブル景気時代の常識として、
「高価なものほど、後から買うともっと高価になる」
とされた時代。
キューのインレイは、数や形だけでなく、
金銀宝石など高価な素材を用いたキューが出現した。
オレはこの時期を
現代「キラキラキュー」の原点とみている。
1980年代半ば、斬新なデザインで
業界をリードした「メウチ」が
1990年頃製作した、『タジマハール』。
インレイの数で価格を決める、という概念を
大きく超え、デザインの美しさや複雑さ、
トータルな完成度という、全く違う考え方の
価値観を生み出した点で画期的だった。
当時のトッププロ、ジム・レンピが
短期間所有後、90年代末に日本人所有となった
「キラキラキュー」の金字塔。
キュー好きなら一度は見ておきたい名作だな。
*****
1990年代末から2000年代は、
高価なキュー=複雑かつ高価な材料を使った
インレイ入りのキュー、
すなわちどれだけ「キラキラ」しているかは
重要な指標となった。
インレイは大きくかつ複雑な形状となり、
より高度な工作機械なしでは入れられなくなった。
幾何学模様だけでなく、不定形のインレイも増えた。
ここから「キューデザインはアートか否か」
という議論も生まれた。
「芸術」という言葉が免罪符となり、
何でもありなデザインが施されるようになったのだ。
エキスポやコレクターズショーで、
投票によってキューデザインの優劣を競う、
いわゆる「コンペ」が増え、
「キラキラ」化を促進した面もある。
受賞するためには、
とにかくハデで目立つ必要があったからだ。
「キューはキャンパス」という考えから、
デザインが施されるエリアの
拡張が進んだのもこの時代。
バットエンドが短くなり、
グリップの糸巻・革巻がなくなり、
ジョイントカラーにもインレイが
入れられるようになった。
キューのデザインに合わせた
「マッチングキューケース」も製作された。↓
バットだけでなくシャフトまでインレイが入り、
さらには、ジョイントプロテクタや
エクステンションにまで
インレイが入るようになった。↓
キューにデザインを入れる場所がなくなり、
付属品まで「キラキラ」させる状況。
やがて、チョークケースやグローブ、
メカニカルブリッジやテーブルまで
「キラキラ」になるかもしれんな。
*****
「キラキラキュー」は、
表面的な美しさだけの追求ではない。
金属や貴石など、重い素材を使っても
トータル重量を抑えられる構造の開発、
金属と木材という性質が異なる素材を
均一に研磨し塗装する技術など、
キュー製作自体の進歩も生み出している。
新たな素材を使い、
斬新かつまばゆいばかりに光る令和版
「キラキラキュー」の登場が待ち遠しいな。
次の依頼を待っているぜ!
よろしくな、BD!
(to be continued…)
…………
Detective Kについて詳しくはこちら
…………
BD Official Partners :
世界に誇るMade in Japanのキューブランド。MEZZ / EXCEED
創造性と匠の技が光る伝統の国産キュー。ADAM JAPAN
ビリヤードアイテムの品揃え、国内最大級。NewArt
末永くビリヤード場とプレイヤーのそばに。ショールームMECCA
カスタムキュー、多数取り扱い中。UK Corporation
13都道府県で開催。アマチュアビリヤードリーグ。JPA
徹底した品質の追求。信頼できる道具をその手に。KAMUI BRAND
赤狩山幸男プロ参加の平日トーナメント開催中。 BAGUS
カーボン繊維構造REVOシャフト発売中。PREDATOR JAPAN
ジャストなビリヤードアイテムが見つかる。キューショップジャパン
2018年4月大阪市淀川区西中島に移転リニューアルオープン。日勝亭
オウルグローブ新モデル「+」(プラス)発売中。SHOP FLANNEL
国内外トッププレイヤー達が信頼する国産積層タップ。斬タップ
…………
Cue Ball Samurai―ビリヤードサムライLINEスタンプ