私の名はDetective K。
ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。
平成31年と令和元年。
キューの世界では、カーボンシャフトの
普及に弾みがついた一年だったな。
令和2年は、大手メーカーだけでなく、
中堅メーカーや少量生産メーカーからも
登場することだろう。
リンリンリン♪
おお、BDからネット通話だ。
年始のあいさつか? お年賀かお年玉か?
『今年もよろしくお願いします。
昨年は、天皇陛下即位記念貨幣や
令和記念切手が発行されましたね。』
…………なんだ、
何かもらえるわけじゃないのか。
それで?
『キューの世界にも、記念キューがありますね。』
確かに。
『限定生産というだけでなく、
何らかの意味を持たせて作られるキュー。
そこに惹かれて購入する
プレイヤーやコレクターがいるはず。』
まぁ、オレもその一人だな。
『そこでKがこれまでに出会った記念キュー、
あるいはアニバーサリーキューについて
調べてもらえますか。』
旅の思い出に、
土産物屋で売っているようなヤツだな。
『そうそう、帰ったら職場で配るような……
わけないじゃないですか!』
ノリツッコミを覚えたかBD。
よかろう、オレはキュー探偵K。
その依頼、引き受けた!
*****
キューメーカーに規模の違いはあれど
「限定モデル」は、大抵のメーカーに存在する。
アメリカの大手メーカー、マクダモットは
「今月のキュー」と称して限定モデルを
2005年からほぼ毎月製作している。
そもそも、一本ものデザインしか作らない
ブラックボアやデニス・シアリングのように
全て受注生産というメーカーや、
タッドやサウスウェスト、
バリー・ザンボッティなど、
注文がこなしきれないぐらい忙しいメーカーに
「限定」という概念はあてはまらない。
早い話、定番デザインのモデルがあり、
かつ生産能力に余裕がなければ作れないのが
「限定モデル」。
更に何らかの意味を持たせた
「記念キュー」を手掛けるには、
メーカーの「格」すなわちブランド力が必要。
作っても売れない不人気メーカーでは
意味ないからな。
*****
日本国内で「記念キュー」といえば、
真っ先に思い浮かぶのが『全日本選手権モデル』。
毎年11月に実施される『全日本選手権』を
記念した特別デザインのキューが、
(株)三木と(株)アダムジャパンにより
限定生産される。
仮にオーダーすれば納期まで
かなり待たされるムサシやエクシードを、
即買いできるメリットは大きい。
ちなみにキューには全日本選手権モデルである旨の
レタリングやインレイはない。
デザインに特別な意味を持たせない分、
プレーの道具として使うには良いのだが、
コレクター的視点で言えば、
「毎年買って集めたくなる」
動機が湧かないのをどう考えるかだ。
もし、全日本選手権モデルを毎年購入している
コレクターがいたら、尊敬に値するな。
この点、アメリカのコレクターイベント
『インターナショナル・キュー・コレクターズ・ショー』
(ICCS)では徹底している。
テーマを指定した上で、
ICCS主催者が参加メーカーに製作を依頼する
「テーマキュー」に、「ICCS+年号」を
キュー尻に記すことを要求している。
後々「ICCSのために作られた」事が、
将来そのキューに「箔を付ける」ことを
目論んでいるわけだ。
*****
キューメーカー自身が、長いキャリアを
重ねてゆくと、区切りをつけたいもの。
そのために製作されるのが「〇〇周年モデル」、
すなわち「アニバーサリーキュー」。
アメリカ人は、数字を分割するとき、
二分の一や四分の一などの分数的な感覚が
あるらしく、通常は25周年とか50周年とかを
区切りとして祝うことが多い。
ところが、キューメーカーは10年ごとに
記念モデルを製作するケースが多い。
例えば、サムサラやマクウォーターは
20周年記念モデルを製作している。
限定モデルとして売れそうなキューを作りたいが、
25周年まで待っていられない
事情や背景があるのだろう。
ちなみに20周年記念モデルの草分けは、
リチャード・ブラックが
1993年から1994年にかけて製作した
『20th Commemorative Cue』。
ただ、受注生産のみで何本製作されたのかは不明。
オレすら見たのはパンフレットだけで、
実物を一度も手にしたことがない幻のキューだ。
*****
カスタムキューメーカーが記念モデルを
手掛けるきっかけを作ったのは、
ジナキューだとオレは思う。
ジナキューは、1993年に30周年モデルを
製作した後、40周年、50周年と
10年おきに限定モデルを製作した。
デザインとしてもレギュラーモデルとは異なり、
一目でわかるもの。
そして限定本数ながら通し番号を入れず、
平等に扱っているのが最大の特徴。
例えば30本製作された30周年モデルには
すべて“One of Thirty” 、
つまり「30本のうちの1本」と刻印することで、
通し番号で差がつかないようにして、
オーナーに不公平感を持たせないのが特徴だ。
常に高い人気を誇り、多くの顧客を持つ
ジナキューならではの配慮だな。
とはいえ、同一限定モデルであっても、
インレイ材やジョイント材を変えることで
「限定の中の限定」モデルが存在するのが
ニクイところだ。
ジナキューの作者、アーニー・ギュテレスは
カスタムメーカーとしては現役最長。
すでに引退を表明し、60周年モデルが
製作される可能性はまずありえない。
ジナキューの記念モデルは
長いキャリアの区切りを象徴する作品として
高い価値を持ち続けるだろう。
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この他にも、顧客自身のイベント、
例えば結婚や子供の誕生などを記念して
製作される「記念キュー」も存在する。
まぁこれは個人的な意味づけであり、
キューコレクター的視点から言えば、
デザインや素材が他のモデルと比較してどうか、
という基準しかない。
オーナーの名前などを入れて
「パーソナライズ」されたキューの価値については、
コレクターなら知っていることだ。
これについては別テーマとして
項を改めることとしよう。
*****
限られた本数の、同一デザインを持つキューに
何らかの意味を持たせて製作できるメーカーは、
それ自体がコレクターやプレイヤーから得た信頼の証。
玉を撞く道具として、何ら他のモデルと
変わることはないのに、限定生産である事実や、
製作された意味づけを共有することで、
そこに価値を認めて新たな需要が生じるという点に、
カスタムキューの「カスタム」たる本質が表れている。
機会を逃せば、永遠に手が届かない存在に
なってしまうかも、という心理をつき、
「需要と供給のバランス」を
巧みに崩したところで成立するのが
「記念キュー」「アニバーサリーキュー」なのだ。
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しょっぱなからコアな調査依頼だったな。
令和2年は、
どのようなキューとの出会いがあるだろうか?
次の依頼を待っているぜ!
よろしくな、BD!
(to be continued…)
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世界に誇るMade in Japanのキューブランド。MEZZ / EXCEED
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