私の名はDetective K。
ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。
全世界に広がるコロナウィルス。
ビリヤードの公式戦はおろか、
玉屋自体もクローズ。
そもそも日常の外出すら厳しく制約される毎日。
どうせ撞けないならと愛用のキューを
リペアに出しているプレイヤーも多いと聞く。
リンリンリン♪
おお、BDからネット通話だ。
試合がなければ、ヤツも飯の食い上げだろう。
『K、一応聞きますが、大丈夫ですか。』
問題ないさ、今のところはな。
『例年であれば、
Kは“SBE”のため渡米しているころですね。』
その通り、昨年はさぼったが、
今年は意欲マンマン……だった。
『しかし、この状況ゆえ
SBEは6月に延期されたと聞きました。』
行きたいことには変わらんぜ。
非現実的な願望だがな。
『KがそこまでこだわるSBE、単なるイベントを
超えた存在とも思えるのはなぜでしょう?』
それを語りだしたら止まらんぜ。
『このご時世ですから構いません、
と言いたいところですが簡潔にお願いします。』
よかろう、オレはキュー探偵K。
その依頼、引き受けた!
*****
スーパービリヤードエキスポは、
プロプレイヤーのアレン・ホプキンスと
その息子、ホプキンスJr.が主宰するイベント。
略して「SBE」または「SBX」とも呼ばれる。
初回の1993年以来、
年一回欠かさず実施されてきた。
よって今年、もし開催されれば28回目となる。
会期は2003年までは3日間、2004年以降4日間。
開催時期は毎年3月か4月、
場所は何度か変わっているが、
ペンシルバニア州フィラデルフィア郊外の
バレーフォージュで開催された時期が、
1994年から2011年と長い。
よって、バレーフォージュ=聖地と
されていた時代があった。
2015年以降は、バレーフォージュから
10数キロ離れたオークスという町の、
広さ約6万8千㎡もある
コンベンションセンターで開催されている。
*****
SBEのコンセプトは
“Everything under one roof”。
「ビリヤードの全てを一か所に」
という意味だな。
ざっくり言えば、
プロトーナメントとアマチュアトーナメント、
物販が同時に行われるイベントだ。
朝から晩まで会場に居続けても、飽きることはない。
そこにいるのは、ビリヤードにハマった人間
(稀に犬や猫もいるが)ばかり。
どんなにアツく語っても、変人扱いされない。
味にこだわらなければ腹いっぱい食事も出来るし、
通常の試合以外に「練習エリア」では、
「真剣勝負」が常に進行しているし、
キューの逸品や掘り出し物は、
どこに隠れているかわからない。
24時間ビリヤードのことだけ考えていれば良いのだ。
*****
しかし、SBEが全米最大の
ビリヤードイベントかといえば、違う。
試合規模からすれば、『USオープン』や
『ダービーシティクラシック』、
『APAワールドプールチャンピオンシップ』
などより小さいし、出店業者の数は
『BCAトレードエキスポ』の半分にも及ばない。
アメリカ全体から見れば、
アメリカ北東部のローカルイベントに過ぎない。
主催者、アレン・ホプキンスは、
ビリヤードにおいて「試合観戦とプレーの両立」が、
いかに重要かという点に最初から気付いていた。
プロトーナメントの観客を増やすには、
熱心に観戦してくれるアマチュアプレイヤーに
足を運んでもらえばよい。
そのためにプロ・アマ混合のオープン
トーナメントではなく、アマチュアトーナメントを
開催することで集客したのだ。
さらに人が集まればビジネスの機会も増える。
BCAトレードエキスポは業者間のビジネスだが、
SBEでは小売り。
プロ・アマそれぞれの試合を
集客のカギとしながら「エキスポ」と名付け、
業者のブース出展も重視した。
その結果が「SBE=ビリヤードなんでも市場」化。
国内外から多くの出展者と顧客が
集まるようになった。
これらの要素によりSBEは、
一つひとつの要素を見れば最大ではないものの、
全てがバランスよく揃った
イベントのカタチが出来たのだ。
*****
というわけで、SBE参加の基本は「試合出場」。
ジュニア部門やシニア部門、
レディース部門など複数のトーナメントが
時間をずらして進行するため、
重複エントリーも可能だ。
家族3代で揃って試合出場というケースも珍しくない。
試合中はアツくなっていても、
終わればフレンドリーなのがアメリカ人の良いところ。
ビリヤードに国境はないことが実感できるだろう。
さて、取引の場として捉えると、
キュー売買に関してSBEは理想的な環境。
小規模カスタムキューメーカーや
キューディーラーが出展し、それを目当てに
キューコレクターやバイヤーが集い、
取引が拡大するサイクルが生まれた。
結果的に小売りだったはずのSBEが、
1990年代後半には仕入れの場に変質した。
日本からも多くの業者が「買い付け」に訪れ、
片っ端からキューに
“Sold"の札を付けていった時期もあった。
ブースに並んでいたキューが、
翌月には国内市場に出回る。
夏のボーナスには、ちょうど良いタイミングだ。
*****
オレ自身、SBEでは
キュー購入を最大の目的としていたが、
予算と相談して後ほど……では手遅れ、
という悲劇は数限りなく経験した。
その反動で
「初日会場入り1分でコグノセンティ購入」や、
「会場入り口で、業者に渡る予定の
ザンボッティをジャッカル」など、
行動が先鋭化していた時期もあった(遠い目)。
メーカーはベテランと若手、
ディーラーやコレクターは歴戦の目利きと
素性不明の胡散臭いヤツが入り乱れ、
「誰が何を買うか」を互いに監視し、
時にはウラ情報を交換したり、
相手を牽制したりという状況。
あるメーカーの新作を手に取っていると、
隣のブースのメーカーが
「オレのキューじゃなくて、そっちかよ」
という視線を送ってくる。
ヴィンテージキュー専門のブースでは、
逸品に混じって偽物や改造歴ありのB級品など
ワナだらけ、そして価格は交渉次第。
「コレはハズレだな」と
手を出さなかったキューが、
別のブースに現れるのは「あるある」パターン。
トランプのババ抜きのように、
誰かがつかんでしまうまで転がり続ける
キューも存在するのだ。
*****
会場内でハデな買い方をしていると、
「カモ」として目を付けられる。
「もっと欲しいキューが出てくるかも」
という表情でフラフラしていると、
「あなたなら、この値段で……」
「まだ他の誰にも声をかけていないから……」
等々、不意に呼びかけられるのだ。
背後からいきなり
キューで小突かれる場面を想像してくれ。
びっくりして振り返ると、
どうしても売り払いたいらしいヤツから
「これ、ユーが以前から探していたキューだろ?」
と逸品(または駄品)を
目の前に突き付けられるのだ。
楽しくないわけがなかろう(苦笑)。
*****
SBEの最終日は、
1年で一番テンションが上がる日だ。
プロ・アマともプレイヤーが絞られるため、
試合は落ち着いてくる。
それとは対照的に、物販ブースでは熱が入る。
物品販売の売り手は
「なるべく売り切りたい」ために値下げする。
「積極的に欲しいわけではないが、
値下げされると買ってしまう」
パターンは、まあ良い。
困るのは、すでに予算が尽きているのに
「欲しいものが最終日になって出現する」ケース。
例えば、「サウスウェスト3本、
3×6のウィットンケース付で安くするよ」
などと言われて、誰がスルーできるだろうか?
しかしない袖は振れない。
泣く泣くあきらめると同時に
「来年こそ後悔のない買い物を」
と心の中で立てる誓いが、
毎年参加する原動力になってきた、というわけだ。
*****
SBEは、イキのいいプレイヤーや
製品の最新トレンドを把握するには
絶好の機会なのだが、
格式ばったものでも、アマチュアに対して
敷居が高いものでもない。
会場内は「何をするかは人それぞれ」だが、
ビリヤード好きばかり。
ただそこに居るだけでも楽しめるのだ。
気持ちを一つにして、そんなエキスポで
再び集まれる日が来るのを願ってやまない。
次の依頼を待っているぜ!
よろしくな、BD!
(to be continued…)
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2018年SBEレポート by Kはこちら
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