〈BD〉カスタムの輝き・「スキップ・ウエストン」編

 

カスタムキューを多数取り扱っている

UK Corporation。

 

その代表、大原秀夫氏が所蔵している

キューを見ていく本企画。

 

（※過去記事はこちら）

 

今回は、1990年から

ニュージャージーで製作開始、

トラディショナルスタイルのキューを作り、

米東海岸を中心に一時期注目を集めていた、

 

Skip Weston（スキップ・ウエストン）を

紹介します。

 

スキップ・ウエストンはすでに

キュー製作からリタイアしています

（※亡くなったという情報もありますが、

BDでは裏付けが取れていません）。

 

…………

 

今回ご紹介するキューの製作年度は不明。

 

フォアアームはバーズアイメイプルを

ベースにエボニーの4剣。

 

ベニアは、内側から

薄茶色、茶色、黄土色、黒。

着色していないなんらかの銘木を使っています。

 

また、このベニアは、

Seemless Veneers（シームレスベニア）、

すなわち頂点に継ぎ目がない

工法で作られていて、

スキップ・ウエストンの特徴になっています。

 

剣の根本とエボニーのスリーブに、

スロッテッドダイヤ

（切り込みの入りのひし形）と

ドットのインレイが入れられています。

 

 

大原氏・談：

 

「これは……『自分でも持っていたことを

忘れていたキューシリーズ』ですね（苦笑）。

 

スキップ・ウエストンの名前は、

 

私の友人であり、バラブシュカの

専門家でもあるキューディーラー、

マーク・カランジンから聞いていて、

 

マークのところには実際に

スキップ・ウエストンのキューも

入って来ていました。

 

『バラブシュカ～タスカレラ系統のメーカー』、

『ベニアにこだわっているメーカー』

ということはわかっていましたが、

 

個人的にはそこまで惹かれるものがなく、

アメリカで購入することはありませんでした。

スキップ・ウエストン本人に

お会いしたこともありません。

 

その後しばらく経ってから、

某オークションサイトをのぞいたら

このキューが出ていたので、

『勉強のためにも1本持っておこう』

ぐらいの気持ちで購入しました。

 

グリップの革巻きは購入時のままです。

オリジナルかどうかは不明です。

 

私の考えではもともと糸巻きだったと

思いますが、いずれにしても、

この革巻きのクオリティはかなり高いので、

日本で一回巻き替えられていると思います。

アメリカの革巻きは結構雑なので。

 

スキップ・ウエストンの特徴は、

見ての通り『バラブシュカスタイル』と

言って良い古典的なデザイン。

 

それと『ベニアおたく』だということ。

 

スキップ・ウエストンのベニアは、

本来先端部にあるはずの

『板の継ぎ目』がありません。

剣の両側のベニアが一体になっています。

 

また、ベニアには染色した色板を使わず、

銘木をスライスしたものを使っています。

 

単に『クラシカルスタイル』

というだけでは他の多くのメーカーと

差別化が出来ないということもあり、

 

飛び抜けたところを作ろうとして、

ベニアにこだわったのでしょう。

 

ある程度以上キューのことがわかる人に

このベニアを見せると驚きます。

 

しかし、細かいと言えば細かい所ですし、

それだけでは高く評価されるまでに

至らなかったということだと思います。

 

オーメンキューでも同じ手法で作られた

ベニアを採用したキューがありましたが、

それ以外では私は知りません。

 

今このやり方でベニアを作っている

メーカーはないはずです。

労多くして益少なしということでしょう。

 

スキップ・ウエストンは、

NYなど東海岸では一時期人気を博し、

所有者はそれなりにいたと思いますが、

そこから大きく広がったかというと……

そうとは言えません。

 

1990年代のアメリカのディーラーは皆

スキップ・ウエストンを知っていたけど、

コレクターの中には

名前ぐらいしか知らない人や、

名前も知らないという人もいたはずです。

 

日本に入って来た本数も少ないと思います。

 

私はこれを入手した後、

結局しまい込んでしまって、

当時のうち（UK Corporation）の

カタログにも載せ忘れ、

しまいには持っていたことを忘れました。

この取材があって良かったです（笑）。

 

正直スキップ・ウエストンに関しては、

今から値付けをしようと思っても、

私自身もう一度相場などを

調べないと価値がわかりません。

 

もう引退していて新作は出ませんし、

今はアメリカで探しても、状態が良いものは

見つかりにくくなってると思います。

 

ということで、このキューはこのまま

パーソナルコレクションになってしまいそうな

予感がしています（笑）」

 

（了）

 

 

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