8月3日に掲載した
青山和弘プロ
(JPBA/会社経営。徳島県)の
インタビューの後編をお届けします。
※前編はこちら
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取材協力:ビリヤード&ダーツ サンク(京都市伏見区)
――後編はプロ(JPBA)入りの経緯からお聞かせください。
青山和弘(以下、青):プロになったのがたしか32歳の時です。ビリヤードが大好きで、自分には伸び代がたくさんあると思っていましたし、大それた目標があった訳ではありませんが「上達するための最良の環境がプロの世界だ」と思い、プロ入りを決めました。でも、当時は『アマチュア連盟のクラブに1年間在籍』することがプロ試験を受ける条件だったので、プロ入りする1年前には決めていたということになりますね。1年間、『TPBC』(徳島ポケットビリヤードクラブ)のベストを着て活動し、それからプロになりました。ただし、プロ入り直後に先代(父親)の病が発覚して、1~2年は全く試合に出られませんでした。
――家業(有限会社青山みこし店)を継がれたのもその頃だったのですね?
青:はい、病気が見付かった時に父親が従業員を全員集めて、「和弘に代を譲ろうと思うが意見はないか?」とはかって、皆が賛成してくれたので父の生前に四代目となりました。そんな状況でプロなりたての頃は試合に出られなかったのですが、3年目くらいからは出られる試合には全て行くようになりました。同じ四国の鎌田(充昭)プロ、青木(亮二)プロにひっついて、一緒にあちこちへ出向きました。
――その頃の思い出などありましたら。
青:上手い人がいっぱいいて、勝てないのですが、面白くて仕方がなかったことは覚えています。西日本プロツアー(現在の『グランプリウエスト』)もオープン戦も、とにかく楽しくて楽しくて。過去の試合で一番印象に残っているのは、桧山プロ(春義氏。故人)が優勝された『エイトボールオープン』(2002年)。桧山プロとベスト32か予選最終で対戦し、先にリーチをかけた桧山プロがセーフティブレイクをされたんです。「取り切れるなら取り切ってごらん?」っていう配置で、それを僕が取り切れてリーチリーチにできて。
――憧れの桧山プロと互角の勝負を演じたのですね。
青:とても互角とは言えませんが、あのレベルの人を相手に自分の力を出せた喜びがありました。実はゲームボール(ラスト⑧)も撞いたんですけどね。ただしカーブショットで(笑)。ゲームボールへの出しで手球が隠れる可能性も想定しながら撞いたら、やはり隠れてしまって。カーブで⑧を狙うしかなくなったんですけど、外れました。結果も僕の実力ですが、あの場面であそこまで戦えたことは純粋に嬉しかったです。
――試合を楽しむ青山プロの懸命かつ謙虚な姿が目に浮かびます。ここで青山さんが思うビリヤードの魅力についてお願いします。
青:上手く言えないのですが、「同じ配置がない」ことでしょうか? クラスターが出来たり、取り方を限定される箇所があったり、その時々にどう組み立てるのかを考えるのが楽しいです。集中している時は時間が経つのも早くて、これは仕事にも通じていて面白いなと思います。
――お仕事との共通点など具体的にお聞かせいただけますか?
青:例えば仕事もビリヤードも集中力が大切ですが、ずっとオンでは持続できません。仕事で木を切る作業は、油断すると指を落としてしまう可能性もあるくらいに危険です。ビリヤードでもミスをしないよう確認作業が大切なので、そこが似ているというか、同じだと感じています。昔、長時間の人数撞きをしている時に集中力が続かないことに気付いて、「1時間オンにして10分間オフにする」ということを試して実践していました。
――オンとオフを意図的に切り替えると。
青:精神状態をコントロールすることで必要な集中力を必要な場面で引き出す感じです。試合ではいつ呼ばれるかわからないので、いつでもオンに出来るようになりました。今もこれは生きていると思いますし、仕事にも役立っています。車で移動をする時はオフ、お客様の所に到着したらオン。この切り替えはビリヤードも仕事も同等に求められるスキルだと思います。
――ちなみに、お仕事のお客様は青山さんがビリヤードのプロであることをご存知でしょうか?
青:いや、基本ビリヤードのことは話さないです。ただ、ものすごく驚いたことがあります。大阪の天神祭のお神輿も納めさせてもらっているのですが、そのお神輿の一つを管理されているところで「青山さんはいつの時代にプロになったんや?」って聞かれたんです。なぜ知っているのかも分からなかったのですが、「大橋(清孝プロ)とか知っとるで」と言われて、「怖っ!!」ってビックリしましたね(笑)。
――それは驚きますね(笑)。今の会社にビリヤードをされる方はおられますか?
青:今は社員で一人だけいます。ビリヤード台が設置されていた住宅を買ったんですよ(笑)。すごくないですか? まあ、そこに元々住んでいた人もビリヤードプレイヤーだったんですけどね。でも、その社員も最近はあまり撞いていないようで、奥さんが練習をしているそうです。ちなみに徳島は自宅にビリヤード台がある人が多くて、知っているだけでも5人くらいは家に台を持っています。
――徳島はホームテーブル率が高いのですね。ところで、青山さんが仕事と球を両立できる秘訣は何でしょう?
青:秘訣というほどのものはないですけど、仕事が適量であることがビリヤードの試合に行く条件という感じですね。忙しすぎても遠征に行けないし、暇過ぎるとそれどころではありませんから(笑)。
――確かに。社内の業務で社長がする仕事も多いのでしょうか?
青:それはめちゃくちゃ多いですよ(笑)。社内にいる時は一職人ですから。ウチの会社は自社で作っている商品が多くて、木工作業から装飾金具を作ったり、塗りの作業を行ったりと幅広い職人仕事をしています。例えば獅子舞に使う獅子頭という商品は皆さんもご存知だと思いますが、あれには2種類(※木彫りで作るものと張子のもの)があって、青山みこしでは両方をイチから作っています。
――社長がマルチな職人さんなのですね。
青:はい、僕の仕事は職人です。工場にいる時も納品に行く時も、年中ほぼ作業着を着ています。そして、ウチの社員も僕のことを社長だと思っていないですね。「この作業をやっとってくれるか?」と頼んだら「イヤです。忙しいので青山さんやってください」って言われることもありますからね(笑)。
――(笑)信頼関係が窺えるエピソードですね。最後にお仕事とビリヤードについて、今後の展望などなんでもお願いします。
青:ウチで取り扱っている商品は百貨店にないものがほとんどなので、「どこで頼んだらいいんだろう?」と思っている方も多いと思います。お神輿や神具のことであれば、ぜひ気軽にご相談いただけたら、何かしらお役に立てるはずです。Facebookを始めてから「お神輿屋さんなんですね。ウチの家内の実家が神社なのでまた……」といった連絡をいただくこともあります。
――青山さんなら気さくに相談に乗ってもらえそうで頼もしいです。ビリヤードの方はどうでしょう?
青:正直、この状況下では言いにくいですが、週6は検温・消毒・マスク装着をした上で練習をしています。自粛期間中は減らしましたが、プレイヤーとして高いモチベーションを維持しています。これは僕自身の年齢的なこともあり、「今年が最後か、それとも来年が最後か」くらいの気持ちで取り組んでいるからです。トーナメントプレイヤーとしてラストスパート。過去最高に気持ちが充実しています。あとはビリヤードもお祭りも次の代へ引き継ぐ重要性を考えています。
――と言いますと?
青:お祭りって、家族や地域の人が仲良く幸せになる素敵な行事です。そんな伝統文化を子の代、孫の代へと引き継ぐお手伝いをさせていただくのが僕の仕事なんですね。仕事で商品を納めた時も、お客さんから「ありがとう」と喜ばれて本当にありがたく感じています。ビリヤードも同様で、こんなに素晴らしい競技を次の代へ引き継いでいくことは僕たちの責任です。文化も球も引き継いでいくことを目標に続けていきたいと思います。ありがとうございました。
(了)
青山和弘:Kazuhiro Aoyama
年齢:取材時 52歳(1967年生まれ)
出身・在住:徳島県
血液型:B型
職業:会社経営 有限会社青山みこし店(神具製造販売)
所属団体:JPBA(34期生)
所属店:『ビリヤードKID』、TPBC
プレーキュー:『プレデター・マエストロ』(シャフトは『314-3』、タップは『斬・M』
アマチュア戦績:
『四国オープン』3位タイ(ベストアマ)
プロ戦績
2004年『中国オープン』準優勝
2011年『全日本オープンローテーション』3位タイ、『四国オープン』優勝
2017年『四国オープン』優勝
2018年『JPBAシニアオープン』優勝
憧れのプレイヤー:利川章雲プロ、桧山春義プロ(故人)
ビリヤード歴:約32年(途中合計7年くらいブランクあり)
ビリヤードを教えてくれた人(師匠):氏橋弘明プロ(元JPBA)
※青山和弘プロの戦績など詳しくはビリヲカプロ名鑑にて
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My Billiards Days :
Vol.1 今村哲也(Tetsuya Imamura)前編/後編
Vol.2 酒井大輔(Daisuke Sakai)前編/後編
Vol.3 青山和弘(Kazuhiro Aoyama)前編/後編
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