文化遺産・自然遺産やビーチリゾートなど、
観光スポット豊富な東南アジアの仏教国、タイ。
ビリヤード好きな人にとっては、
「スヌーカー強国」のイメージがあるでしょう。
ですが、プール(ポケットビリヤード)も
盛んだということはあまり知られていません。
首都バンコクだけでなく、
リゾート地として知られるパタヤにも
著名ビリヤード場が複数あり、
ローカルプレイヤーだけでなく、
海外からも多くのプレイヤーが訪れています。
(※コロナ禍の今は観光業も
現地ビリヤード場も
苦戦を強いられているとのこと)
そんなパタヤに住む日本人、
「Ian」(イアン)さんから、
5ヶ月ぶりに「最後の現地レポ」を
寄稿いただきました。
5回目となる今回は、Ianさんが
ホーム店の『Mega Break』で受けた
レッスンの体験記をお届けします。
…………
Ian記:
サワディーカップ(こんにちは)。
タイはパタヤのIanです。
ご無沙汰しています。
前回紹介した『Mega Break』の
オーナーであるOllyに引き続いて、
今回はもう1人のキーパーソン、
Scottの紹介と、私が彼から受けた
レッスンの話をさせていただきます
(※レッスンはコロナ禍以前に
受けました)。
…………
向かって右側が『Mega Break』の
オーナー、Oliver Downey、
通称、Olly(オリー)。
左が『Mega Break』所属
インストラクター/コーチ、
Scott Cooney
(スコット・クーニー)。
日本のビリヤードファンの中には
Scottのことを知っている、あるいは
実際に彼とプレーしたことのある方も
いるかもしれません。
以前はイングランドのプレイヤーとして
WPA公認トーナメントに参加し、
プレイヤーとして活躍していました。
レッスンとコーチングにも定評があり、
人間味のある素晴らしい人物です。
まずは簡単なインタビューから。
…………
――スコット、まずあなた自身のことを聞かせてください。年齢と出身地は?
Scott : 1972年生まれの48歳。イングランドのダービー出身だ。
――プレーキャリアのスタートは?
Scott : 12歳から。まずスヌーカーだった。2002年にプールに切り替えたんだ。
――スヌーカーからプールへのアジャストは容易でしたか?
Scott : プールはポケットが大きいから簡単だね。ただ、キューボールを正確にコントロールする訓練が必要だ。
――次にあなたが主宰しているレッスンについてですが、拝見すると様々なプレイヤーがいますね(※初心者から日本で言うプロレベルのプレイヤー達も彼のレッスンを受けている)。
Scott : そうだね。あらゆるレベルやタイプに応じて教えられるよ。
↑こちらは定期的にレッスンを
受けられてる初心者の方。
どんどん上達されていました。
↑こちらはタイのトップ女子プレイヤー、
Phaa Hmaunpao。
以前パタヤに住んでいて、
Scottのレッスンを受けていました
(※参考映像はこちら)
――生徒の国籍とかは気にしない?
Scott : 誰でもウェルカム。もちろん日本人でもね。英語が堪能でなくても簡単な単語でレッスンできるから(定期的に訪れ、彼のコーチングを受けてる日本人も見かけます)。僕は最初の10分ぐらいでそのプレイヤーの全てを理解できるんだ。そして、基本となるメソッドはスヌーカーではなくプールのものだ。
上達を本当に願うのなら大事なことは、ただレッスンを受けるだけでなく、自分で練習する必要があるということ。例えば、1~2時間レッスンを受けたら、6~10時間の練習が必要だ。
――わかりました。ありがとう。
…………
レッスン時間は、1時間、1.5時間、
2時間など選択可能。
料金は日本のプロによるレッスンの
相場より安いと思います。
ただハイシーズンは毎日予約で
一杯のため、早めの申し込みが必要です。
ここからは、私自身の体験談を
お届けします(※レッスン内容に
関してはあまり細かく書いていません。
また、感想も私個人のものである
という事を理解していただけたらと思います)。
ちなみに私自身、それまで
レッスンというものを受けた事はなく、
これが初めてでした。
ですが、普段からお互いを知っており、
私はScottを信頼しているので
すごく楽しみでした。
まず最初に、Scottから
「ストロークの際に呼吸をしているか」
と聞かれ、ブリッジ側の
腕(左腕)を掴まれました。
当然呼吸はしていますが、
左腕に力が入りすぎて、
ストロークに悪い影響が出ていたのを、
すぐScottに見抜かれたようです。
要は呼吸一つにしても
身体は全てリンクしていると。
私は何かの情報で得た
「ブリッジ側の掌や腕や肩をロックする」
ということを、その意味を
よく知らずにやっていた訳です。
こんなふうに、Scottのたった一言の
助言で、今までわかっていなかった
数多くの事がクリアになりました。
その他にも絶対にやってはダメな事や、
逆に気にしなくても良い事も
ハッキリしました。
レッスンを受けて良かったと思うのは、
まずこういった自分が取り入れるべき
情報や知識の整理ができたことです。
例えば、
私はフォローショットが苦手です。
Scottからは、
「苦手なショットをする時、
どんな精神状態なのか正直に話してくれ」
と言われたのでその通りに伝えたところ、
私のメンタルに問題があることを
指摘してくれ、克服のためのヒントを
与えてくれました。
そしてScottは、私が理解しやすい様に、
私の知っているプレイヤーに
例えて伝えてくれることもよくあります。
プレイヤーのあの人は身体のこの部分に
余計な力が入ってしまっているとか。
実はスヌーカートッププレイヤーの
あの人は真っ直ぐキューが出ていない、など。
そんな話も交えながら、
ストロークの基本的な事はもちろん、
メンタル面にまで的確なアドバイスをくれます
(ちなみにストロークをビデオに撮って
送ってくれました)。
そして、Scottはその優れた観察眼から、
各プレイヤーに適した
練習方法を提案してくれます。
私の場合は、初めに
ウォーミングアップでストップ、
ドロー、フォローの各ショットの
チェックから始まり、
その後にその日の課題に入るという流れでした。
前回の復習をする事もあります。
…………
Scottの指導のもと、
数多くのドリルもやりました。
ご存知のものもあると思いますが、
少しだけ紹介しておきます。
これは最初に覚えるべき形です。
手球の位置はここに固定して、
短クッション寄りにある
フリのついた的球(ここでは14番)を
ポケットして、
撞点を変えて手球のラインを
コントロールして、1番から5番の
各ボールに当てに行きます。
1番と5番は、1クッション
(短クッションのみ)と
2クッション(短→長)の両方で
当てることが求められます。
…………
手球フリーで始める
8個取り切りの配置。
手球をソリッド(1番~7番)に
当てないように動かしながら、
ストライプ(9番~15番)だけを
落として行き、最後に8番を入れます。
…………
これは定番のドリルですので、
特に説明はいりませんね。
…………
これはランダムな配置で、
狙う的球、手球の置き場所、
手球を入れるクッションなど、
全てコーチの指示通りに
ショットするという練習です。
例えばこの画像で言うと、
この手球位置からサイドポケット近くの
5番を入れて、手球を長→短の
2クッションでこの白い紙の上に
ポジションしてみよう
という指示が出るので、
その通りに撞いてみるという訓練です。
…………
この他、特に私とScottがよく
一緒に撞いたのが「カイルン」です
(※プールテーブルでプレーする
台湾式キャロムゲームのこと)。
私自身はそれまで本場・台湾の
カイルンは知らず、
やった事もありませんでした。
ですが、Scottはカイルンを
細かな手球のコントロールを学ぶのに
適した練習だと考えているようです。
どのドリルをやる時も、
手球の動かし方が分からない時は、
聞けばその都度、撞点や撞き方を
細かく教えてくれます。
日本とは違って、撞点による
手球の動きやコントロールなどを、
初心者向けレッスンなど、
早い段階から教えている印象です。
…………
時にScottの存在がプレッシャーに
なる時もありましたが、私にとっては
毎回のトレーニングが楽しい時間でした。
ここタイでは、スヌーカー/プール共に
確立された方法論があり、
それをレッスン/コーチングする
ポジションが存在します。
色々な方に教わるよりも、
信頼出来る1人のコーチに継続して
教えてもらうのがベストだと思いました。
…………
現在は皆さん周知の通り、
世界的に難しい状況にあります。
先の事は分かりませんが、
日本を含め世界中の方がまたタイを
訪れる日が早く来ることを願っています。
実のところ、
私のホーム『Mega Break』は、
コロナの影響で現在は
再オープンを見合わせています
(※6~7月頃から営業を再開した
プールホールもあります)。
パタヤが観光都市であり、
外国人観光客が入国出来ない状況では
全ての業種がオープンという訳には
いかないのが現状です。
そして私自身は、現在パタヤを離れ
タイの別の地で暮らしています。
これまでパタヤのビリヤード事情を
ご紹介してきたこの寄稿も、
今回で最後になります。
もとはと言えば、
日本のビリヤードファンの皆さんに、
他の国のビリヤードの状況を
知ってもらいたい思いで
寄稿させていただきました。
本稿を含め、
パタヤのビリヤード事情について
記した5本の記事が少しでも
参考になれば幸いです。
最後に、パタヤでお世話になった皆、
読んでくださった全ての方々に感謝して、
この寄稿を締めさせていただきます。
コップンカップ!
ありがとうございました!
…………
Ianさん、これまでご寄稿いただき、
誠にありがとうございました。
今後また何かタイやパタヤの
ビリヤードシーンで
大きな動きがありましたら
ぜひ教えてください!
…………
◆ Vol.1 タイ・パタヤ、トーナメント参戦記
◆ Vol.2 パタヤの『Mega Break』はこんなお店
◆ Vol.3 日本と違う? 似てる? パタヤのビリヤード事情
◆ Vol.4 現地ビリヤード場オーナーにインタビュー
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