私の名はDetective K。
ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。
例年なら『全日本選手権』が終了し、
年末セールに向けてビリヤード用品に
対する物欲が高まる時期。
しかし、2020年はコロナウィルスの
影響で盛り上がりに欠ける。
「キュー1本いっとく?」
的なノリが出しにくい。
何をするにも気が重いな。
リンリンリン♪
BDからネット通話だ。
『最近、Kがキューを手に入れた
という話が伝わってきませんね。』
まあな。
エキスポやコレクターズショーなどの
イベントで、衝撃的な出会いがなければ
物欲も湧きづらいものだ。
『では、キューケースはどうですか?』
軽量コンパクトな、
3secondsのケースを昨年手に入れた。
素材持ち込みの特注を
まだ受けていた時期だったな。
『キュー同様、ケースもプレイヤーや
コレクターの好みが出るもの。
Kは限定製作や特注のケースなど、
これまでたくさん見てきましたよね?』
もちろんだ。
見てきたキューの本数よりは少ないがな。
『では、その中からBD読者に
知ってもらいたいケースを
見つくろってください。』
そいつは、素材やデザイン、
収納本数など色々な切り口があるぜ?
『それは任せます。』
わかった、俺はキュー探偵K。
その依頼、引き受けた!
まず今回は概論。
キューケースの変遷を
オレの主観でザックリと見ていこう。
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キューの持ち運びや
保管に欠かせないキューケース。
第一の目的は「キューの保護」であり、
それを満たさないケースは
ケースと呼べない。
逆に言えば、キューが
守られるのであれば何でも良い。
1950年代~1960年代の日本では、
キューを新聞紙で巻いて持ち運んでいた
プレイヤーもいたと聞く。
1980年代半ばまでは、皮革や合皮を
縫い合わせたソフトケースか、
角型のハードケースで、
1バット・1シャフトが主流。
複数本収納できるケースを使っていたのは、
よほどの上級者かプロぐらいだったろう。
プレーキューとブレイクキューを
別にするとか、スペアシャフトを持つとか、
さほど考えていない時代だった。
そもそも、
玉は馴染みの店で撞くものであって、
キューは店に預けておくのが掟。
玉屋からキューを持ち出すのは、
試合に出るレベルの上級者だけで、
普通の常連なら、
キューを持ち出す=その店からの離脱=
他店へ移る=裏切り
と思われかねない問題行動だった。
ありていに言えば、
昭和末期まで、キューケースは
なくても良い存在だったのだ。
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その状況が一変したのが、
映画『ハスラー2』ブーム。
酒類やしゃれた食事メニューを提供する、
『プールバー』などと呼ばれた店が乱立し、
プレイヤー人口が一気に増え、
普通の玉屋にも客が押し寄せた。
その結果起きたのがプレイヤーの流動化。
待ち時間の短さや台のコンディションなど、
少しでも良い環境を求め、一つの玉屋に
留まらず渡り歩くようになった。
ここで初めて、
キューケースは大半のプレイヤーが
必要とするアイテムになったと言える。
そして「ブランドキュー」と当時呼ばれた
高級カスタムキューだけでなく、
様々なキューケースも
輸入されるようになった。
当時としては軽量かつ丈夫な構造の
『ジョー・ポーパーケース』や、
高級皮革を用いた、
ショルダーストラップ付チューブ型の
『ジョージケース』が人気となった。
もっとも、『フラワーケース』
『タッドケース』等の革ケースになると、
本当の上級者のみが持つ別格であり、
気軽に所持できるシロモノではなかった。
ブーム絶頂期には、
これらのキューケースを
担いで歩くだけでトレンディ。
プレイヤーをファッショナブルかつ
スタイリッシュな存在に仕立てる
アイテムだったのだ。
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『ハスラー2』ブーム終焉後の1990年代、
カスタムキューの需要は無くならず、
むしろメーカーの数が増え、
同時にキューケースメーカーも多数出現した。
ジナなどの高級カスタムキューに
付属することで知られた
『ウィットンケース』。
正統派皮革ケースの定番となった
『ジャスティス』や『インストローク』。
古き良き時代のケースを再現した
『ロン・トーマス』。
ハンドバッグやベルトなどの
革製品を作っていたメーカーが手掛けた
『ニューヨークケース』。
格闘技の防具メーカーがその技術を
生かした『ムーナック』など、
多彩なメーカーが競い合った。
↑余談となるが、ムーナックはオレの知る限りダブルストラップケースの元祖。そして、作者のジム・ムーナックはNYPDの警官に護身術を教えていたという。それも頷ける剣呑な雰囲気をまとっていた。
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また、キューとデザインを統一した
「マッチングデザインケース」が、
高級カスタムキューの世界で広まった。
その元祖と言えば、
1960年代に作られた『ジナ』の
シルバーキューとケース。
21世紀に入ると、
『リチャード・ブラック』や
『ビル・シック』などの
カスタムキューメーカーが、
キューとケースを同時に製作し、
セット販売するようになった。
しかし、
ケースとの「抱き合わせ販売」は、
高級カスタムキューの
価値を高めるためであり、
玉を撞く道具としての性能を
向上させるものではない。
ケースはプレーに影響しない、
あくまでも付属品だからだ。
結局のところ、
高級カスタムキューの限界を
自ら表したようなものだとオレは思う。
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販売促進のために、
業者やキューメーカーが、
キューのオマケにケースを付けるなら、
コストが低いに越したことはない。
そのため、
大量生産による安価なケースも増えた。
ケースがないよりマシ、
という程度であればそれで十分なのだが、
2010年代になると大手キューメーカーは、
総合ビリヤード用品メーカーと
呼んだ方が良いような変化を遂げてきた。
プレデターやマクダモット、
そしてメッヅ/エクシードなどは、
より良いプレーを実現するために、
キューだけでなくグローブやチョーク、
そしてキューケースも自社ブランドで
販売するようになったのだ。
こうなると、単に安い製品を
仕入れてロゴを入れただけの
キューケースでは不十分。
キューの保護だけでなく、
プレイヤーにとっての使いやすさや
メーカーのイメージを損なわない
デザイン、そして品質を追求した
製品作りが求められる。
早いハナシ、
他スポーツの用品メーカーと
同等のレベルにまで成長したと
考えれば、わかりやすいだろう。
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キューケースは、
楽器やスポーツ用具などの
他分野に見られないほど
バリエーションに富んでいる。
次回では、
キューを保護し持ち運ぶという、
基本的な機能を満たした上で生まれた、
様々なキューケースを紹介してゆくぜ。
それじゃ、またなBD!
※近日公開の【後編】へ続く。
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BD Official Partners :
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