私の名はDetective K。
ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。
2021年日本でも再び緊急事態宣言が
いくつかの都府県に出されるなか、
1月18日、
ジョー・ポーパー(Joe Porper)
逝去の報がアメリカからもたらされた。
詳細不明だが、
新型コロナウィルスによるものとの事。
身近にある危機を、改めて実感させられた。
クリエイティブ・インベンションズ
(Creative Inventions)社長
というより氏名の方に聞き覚えがあるだろう。
近年は、手品用アイテムの開発や販売に注力し、
ビリヤード関連ビジネスからは
引いていたジョー・ポーパー。
しかし1980年代半ばから約30年に渡り、
数多くのプロダクトを生み出し、
影響を与えてきたことを忘れてはならない。
ご冥福をお祈りする。
今回は、彼のプロフィールとプロダクトを
振り返ることで、追悼としたい。
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ジョー・ポーパーは、1937年5月生まれ。
生まれ故郷は現在のイスラエル。
おそらく第一次中東戦争の戦禍から
逃れるため、イスラエル建国の前後、
1940年代後半にアメリカの
カリフォルニア州へ移住したらしい。
父親の影響で、早くから金属加工に
慣れ親しんでいた彼は、
自動車修理と手品用アイテムの製作で
生計を立てつつ、趣味はビリヤード。
そのため、手品の世界では
「ビリヤードするマジシャン」
と呼ばれていたようだ。
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◆ ポーパーケース
1970年代末、ジョー・ポーパーは、
カリフォルニア在住のキューメーカー、
故バート・シュレーガーのキューを入手。
そのキューを持ち運ぶためのケースを
探してみたが、彼が望んだ軽量で堅牢な
キューケースは見つけられなかった。
そこでケースを自作してみたところ、
通っていたビリヤード場で他の
プレイヤーたちから「同じものが欲しい」と
注文を受けるようになった。
これが、主に合皮と合成樹脂、
そして布で作られ、
「軽いが自動車に踏まれても壊れない」
と言われるほどの堅牢さを持つ
『ポーパーケース』の始まりだ。
オレ自身が1988年に買った2×4のモデルは、
当時としては最先端のキューケースであり、
かつ品質も良くいまだに現役だ。
また、3×6、4×8、12×24など、
バリエーション豊かなモデルがラインナップし、
キューを数多く持ち運ぶ業者や
コレクター御用達のケースでもあった。
だがジョー・ポーパーは、
その特許を取らなかったため、
1990年代半ばごろから
コピー品が大量に出回り、
一気に低価格化してしまった。
今やその本家を入手するのは困難だが、
いわゆる「ポーパータイプ」ケースと呼ばれる、
一つのジャンルを確立したという点で、
偉大なキューケースメーカーと言える。
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◆ ジョー・ポーパーキュー
ジョー・ポーパーは
キューメーカーでもあった。
ジョー・ポーパーは、
プレイヤーとしてシャフトとバットの
ジョイントに不満を持っていた。
それが具体的に、工作精度の甘さなのか、
打感なのかは分からん。
1980年代初め、彼はより優れた構造を持つ、
と自分が信じる部品を、
得意の金属加工を生かして製作してみた。
ところが、キュー製作の経験がないため
キュー自体は作れない。
そこで、友人だったサウスウェストの
故ジェリー・フランクリンに
この部品を持ち込み、
組み込んだキューを製作してもらった。
彼はその結果に満足し自信を持ったことで、
キュー製作を決意する。
1985年、キューメーカーとして最初の1本を
完成させると、改良を加えながら製作。
1990年代半ばからは、凝ったインレイの
高級モデルを手掛けるようになり、
『カスタムキューカレンダー1995年版』に
登場するメーカーとなった。
彼は独創的なインレイの高級モデルや
手ごろな価格のモデルを、自らの手で
2010年代初めごろまで製作していたようだ。
日本では、当初ケースメーカーと
認識されていたこともあり、
キューが輸入されるようになったのは
2000年前後。現在では大変レアな存在だ。
オレが手に入れたのも、
折れ曲がるジョイントを持つ
『ショットガン』だけだった。
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◆ キュー用旋盤 Q-Lathe
↑Q-Latheを使うリペアマン達
ジョー・ポーパーは、キュー製作と
メンテナンスにおいても大きく貢献している。
それが『Q-Lathe』(キューレース)
と名付けられた旋盤だ。
キューメーカーは、据置型で重量1トン前後、
卓上型でも200kgから300kgぐらいの
金属加工用の旋盤を
カスタマイズして使用している。
知識や経験のない素人が扱えるものではない。
ジョー・ポーパーは、
キュー製作に必要な機能を一通り備え、
かつ重さが約70kgの卓上型旋盤を開発し、
教則ビデオとマニュアルを添付し市販したのだ。
つまりキュー製作のノウハウと機械・工具を
セット販売する、画期的なアイディアだった。
結果として、ごく少量のキューを
日曜大工的に作る、いわゆる
ガレージメーカーが生まれる素地となった。
またシャフトのメンテナンスや
グリップの糸巻交換など、
リペアやメンテンナンス作業にも使用でき、
ビリヤード場の片隅や、出張リペアの
ブース内で使われる定番の旋盤ともなった。
アメリカのエキスポでは、
この旋盤特有の軽やかな回転音を響かせる
リペアブースがいくつも見られる。
日本にも輸入され設置されているのを
見たことがあり、
キューのメンテナンスを支える、
縁の下の力持ちとして活躍している。
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◆ もろもろのアクセサリ類
金属加工のノウハウと設備があるためか、
アルミや樹脂削り出しで作れる
アクセサリのバリエーションはとにかく多い。
タップメンテナンスツールの類は特に多く、
オレ自身も『ビッグシェイバー』と
『マッシュルームグレーザー』は
長年使ってきた。
ジョイントプロテクタ―もアルミ削り出しで、
プラスチック製より重いが高級感があった。
また、新製品を開発・発売するまでの
スピードも速く、1996年初めには、
モーリタップの向こうを張る
積層タップ(牛革製だったが)の
『ラマティップ』、
9.11テロによりキューおよびキューケースの
飛行機内持ち込みが禁止された2001年末には、
預け荷物にするためキューケースを入れる
『キューケースバッグ』を発売している。
1990年代半ばのカタログには
プレイヤー用エプロンや
トレーニングデバイスも掲載されており、
ジョー・ポーパーは
「思いついたら即実行」タイプの
アイディアマンだったことが良く分かる。
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ジョー・ポーパーと
クリエイティブ・インベンションズ社は、
2010年代半ばには生産を停止したが、
最後まで「メイド・イン・USA」に
こだわっていた。
ただ、製品に関する特許や意匠権を
法的に保護せず、コピー品があふれたことは
痛恨の極みと思っていたようだ。
エキスポやトレードショーでは、
製品の写真撮影を極端に嫌っており、
そのアイディアが模倣され
製品がコピーされることを常に警戒していた。
オレ自身が撮影した過去の
画像アーカイブにも、ブースの画像は皆無。
とはいえ、
「誰に対しても正直であれ」がモットーで、
話をする際はいつも穏やかで
笑顔だったことは忘れられない。
すでに新品は入手できないが、
旋盤やタップメンテナンスツールの
部品や刃物は、アメリカのDIY店でも
入手できる汎用品を多く使っていて、
今でも修理可能。
ポーパーケースはインナーが
劣化しているものもあるが、
外装はおおむねしっかりしている。
ジョー・ポーパーが生み出した
製品群とそのコンセプト、
そしてその名は、これからも
ビリヤード界で生き続けることだろう。
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