~【Part 2】(4月11日掲載)から続く~
私の名はDetective K。
ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。
2021年初夏、コロナ禍は収束どころか
拡大している今日このごろ。
ビリヤード界においても、
開催予定の大会がキャンセルされるなど
出口が未だ見えない。
まずは感染防止が大切とはいえ、
我慢にも限界があるというものだ。
今回は色の話パート3、かつ完結編。
前回は、バット素材が工法の多様化により、
メイプル以外の銘木、色の濃い黒檀や
ローズウッド系がポピュラーになった
2000年代初頭まで述べた。
その後、キューの色が現代まで
どのように変化し、発展したかを述べたい。
俺はキュー探偵。
健康な限り、受けた依頼は全うするぜ!
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まずは2000年代の続きだ。
高級カスタムキューにおける
定番のカタチとなった、黒檀バット。
ターコイズ、マラカイト、スギライト、
コーラルなどのカラフルな素材
(大半は人造石だが)やシルバーが、
漆黒に映えるインレイ素材として多用された。
あえて色を排除し、黒檀バットに
白色の素材のみをインレイに使った
「タキシードデザイン」と
呼ばれるスタイルも登場したほどだ。
相対的に、バーズアイメイプルを
バット材として使用したキューは、
「クラシックなデザイン」と
認識されるようになった。
前回述べた「コア」構造により、
撞き味は黒檀でもメイプルでも
大きな差異がなくなり、
かえって、様々な銘木を
「そのまま」バットに用いる
サウスウェストやコグノセンティなどは、
「素材本来の撞き味を生かす」キューとして
認識されるようになったほどだ。
素材の選択が撞き味に影響するという
考えが薄らぎ、木材の持つ色や木目で
選べる時代になったと言ってもいいだろう。
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その一方、黒檀を使わない
黒色バットのキューが登場する。
それはプレデター社が2000年に
発売した『P2』(黒色仕上げ)、
および2001年に発売した
ブレイクキュー『BK』。
いずれも黒檀を使わず、
塗装やコーティングによって
黒色に仕上げられた、
メイプル材貼り合わせのバットだ。
表面を塗りつぶした仕上げを、
キュー自体のハイパフォーマンスを
表す証としたキューの登場だ。
それまで、プレーキューの価格と序列は、
ハギやインレイの数で決まっていた。
デザインをインレイによらず、
印刷や塗装で入れたキューは、
まとめて「プリントキュー」などと呼ばれ、
「安物」と捉えられていた。
また、ブレイクキューは、
使い込んだプレーキューの転用が普通であり、
わざわざ購入することは考えられなかった。
しかし、プレデター社の製品群を、
プレイヤーたちは評価する。
「ただ黒いだけのバット」の
キューをこぞって手にしたのは、
「見た目より性能に対価を払う」
という考えがプレイヤー達の間に
生まれたことを意味する。
黒いキューは、
「高級の証」から「高性能の証」へと
価値観が変わったのが、2000年代前半の
大きな変化と言えるだろう。
アダムジャパンの『MUSASHI』や
三木の『Exceed』など、
大手メーカーのハイテクシャフト装備の
高性能キューが相次いで
登場した時代でもあるな。
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2000年代後半からは、
【少量生産のカスタムキュー=高価=高性能】
という概念が徐々に薄らいでいった。
必然的にカスタムキューメーカーは、
コレクター重視の高級化・先鋭化に
舵を切ることとなる。
キューメーカーたちは、
コレクターズショーやエキスポなどの
イベントで、作品を競い合わせることで、
「ビリヤードに関心がない人にも
美しいと思わせる」
キュー製作に突き進んだのだ。
キューの色合いは、もはや何でもアリ状態。
天然素材、人工素材、貴金属、宝石……
使えるものは全て使いデザインを競いあった。
シャフトやジョイントからキュー尻に至るまで、
デザインを施すためのスペースとして使われ、
それでも足りなければ
ジョイントプロテクタやキューケース、
果ては、エクステンションにまで
デザインが入れられた。
↑ ジャコビーのエクステンションやプロテクタなど(左)。右のキュー用のもの
また、1970年代~1980年代までの
クラシックなデザインにも
根強い需要があった。
剣ハギは伝統的なキューを
表現する有効な手法だが、
重ねるベニヤ枚数を増やしたり
(7層以上は「多層ベニヤ」と
オレは呼んでいる)、
蛍光色のベニヤを用いたりと、
「単なる古き良き時代とは違う何か」
を表現する
「ネオ・クラシック」デザインだ。
2000年~2010年代は、
カスタムキューの価格は上昇を続け、
プレーの道具から「鑑賞する作品」に
変貌していった時代と言えるだろう。
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「高性能」か「高級」という二分化が進む中、
2016年、キュー業界を揺るがす製品が
突如登場する。
それがプレデター社の『REVO』(レボ)、
いわゆる「カーボンシャフト」だ。
キュー全長の半分を占めるシャフトが
黒くなったことで、デザインのセオリーも
大きく影響を受けることとなった。
例えば、バーズアイメイプルが
使われたバットに、
カーボンシャフトを装着すると、
キュー全体の色合いに違和感を覚えるだろう。
もっとも、1960年代~1990年代に
製作されたヴィンテージキューに
「ハイテクシャフト」を
装着することすら
「キューに対する冒涜だ!」
と憤るマニアには、
カーボンシャフト自体が許しがたい存在。
ますますメイプル材のシャフトに
対するこだわりが強くなるだろう。
しかし、カーボンシャフト装着を
前提としたキューは、バット側も
黒もしくは濃い色のデザインが
求められるようになったのだ。
プレデター社が『P2』や『BK』を
黒色で発売した約20年前、
カーボンシャフトの登場を
見越していたからかもしれんな。
2020年代のキューは、
もはや「木の棒」というイメージはなく
「スポーツギア」とでも呼ぶべき
カラーリングを施したキューが登場している。
一方、カスタムキューでも黒檀や
濃い色の銘木が使われたバットに
カーボンシャフトを装着すると、
デザイン的に統一感が生まれ、
引き締まった印象を与える。
ヴィンテージキューと組み合わせることで、
新たなデザインテイストと
ハイパフォーマンスの両方が
手に入るかもしれないな。
今後製作される高級カスタムキューでも、
カーボンシャフトが標準装備となるような
モデルが、いつか登場することだろう。
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キューは、本来プレーに
使用されているときこそ
美しく映えるデザインであるべきもの。
台上の照明しかない、
ほの暗い玉屋でプレイヤーが撞く瞬間、
わずかな光を反射するキュー、
あるいは明るい特設会場で
テンポよく撞くプレイヤーの手で輝くキュー。
これからどのような色合い、あるいは
デザインのキューが生み出されるだろうか。
技術的に可能であれば、
カーボンに限らず人工素材製で、
しかも金色とか蛍光色とか、
カラフルなシャフトが登場して欲しいものだ。
ビリヤードのイメージそのものを変える
キューの登場を、オレは期待している。
また依頼を待っているぜ、BD!
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