私の名はDetective K。
ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。
ここ2年は、探偵にとって苦難の連続。
新しいキューに出会う機会、
エキスポやコレクターズショー、
そして全日本選手権とジャパンオープンも
軒並み中止となった。
金は使わずに済むが、ストレスはたまる。
ブミョーン♪
おお、BDからの連絡だ。
ヤツも忙しそうだから久しぶりだな。
『K、生きていますか?』
問題ない。
ワクチン打ったのも、遠い夏の思い出だ。
『公式戦も徐々に再開され、
玉屋にも人が戻りつつあります。
プレイヤーに必要な実用品と言えば何ですか?』
それはキューだろう。
『アタリマエです(苦笑)。』
では美人プレイヤーだな。
『プレイヤーは品物ではありません(怒)。
キューの他にあると便利なものと言えば?』
スマン……、
キューエクステンションや
ジョイントプロテクタか。
『そうです!
なくても良いがあると助かる、
エクステンションやプロテクタについて
調べて欲しいのです。』
わかった、オレはキュー探偵。
その依頼、引き受けた。
シーズン7 開始だぜ!
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手玉が遠くにあり撞きづらい配置は、
えてして試合を左右するカギとなる
ポイントとなるもの。
無理な体勢からのショットがミスを誘発し、
痛い目を見たプレイヤーは多いはず。
キューが長ければ届くのだが、
標準的な58インチより長いキューを
常用すると、普通のショットにも影響する。
第一、長いキューはケースに
収まらないこともあるから厄介だ。
そのため、一時的にキューの全長を伸ばす
「エクステンション」が考案された。
ポケットビリヤードの世界で
いつ頃から存在していたのは定かではないが、
キューの後端をはめ込む汎用型の
エクステンションをオレが最初に見たのは
1994年の『スーパービリヤードエキスポ』。
伸縮可能なメカニカルブリッジとの
セットで販売されていた。
ただ当時は“虹色商品”的な扱いで、
わざわざお金を払って買うほどの
ものではないという印象だった。
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その空気を変えたのが、
1998年、スヌーカーから
ポケットへ転向したカレン・コー
(イギリス。北アイルランド)の登場。
特注のビル・マクダニエルのキューは、
キュー尻にバンパーゴムがなく、
ネジで脱着する専用のエクステンションを
装着できるようになっていた。
ポケットよりテーブルサイズが大きい
スヌーカーは、撞きづらくなる配置が多く、
古くからキューエクステンションが
普及していた。
カレン・コーはそれを
ポケット用キューに応用したのだ。
また、アメリカでは車いすプレイヤーが
届きにくい配置に対応するため、
エクステンションを使用することもあり、
全く新しいデバイスでもなかったと言える。
単にオレが知らなかっただけなのだ。
もっとも、同じくスヌーカーから転向した
アリソン・フィッシャー(イギリス)は、
エクステンションを使わず、
56インチのプレーキューと
メカニカルブリッジ、
エフレン・レイズ(フィリピン)は
60インチのキューと
背面撞きで対応していた。
エクステンションを使わない
トッププロがいれば、
「なくとも何とかなる」と考える
プレイヤーが多かったのも確かだ。
ましてや、どのキューにも対応可能な
汎用のキュー尻にスポッとハメるタイプは、
着脱を繰り返すとキューにスリ傷が付く、
専用のネジ脱着タイプは、
キュー尻を保護するラバーバンパーが
付かないというデメリットがあり、
使用をためらう要素もあった。
2000年代初めまで、
エクステンションはなかなか
普及しなかったと言っても良いだろう。
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その状況を変えたのは日本の(株)三木。
2003年2月、
自社のキュー尻構造を生かし、
中心にネジを組み合わせた
MEZZ『Xラバーバンパー』を発売。
無改造のままエクステンション装着と
ラバーバンパーを両立させた
画期的構造だった。
その後も軽量型エクステンションや、
伸縮可能なテレスコピック型
エクステンションなど、
相次いで製品をリリース、
エクステンションの普及に大きく貢献した。
2016年末には、
全長を延長するだけでなく、
パフォーマンスの改善を目的とした
『EXCEED 2インチエクステンダー』を発売。
「常時装着」という新たなデバイス、
しかも「極力バランスポイントや
重量を変えないのが良い」
という考えとは真逆の、
「積極的にキューのバランスを変える」
というコペルニクス的転回だ。
2インチと4インチの2種類が用意され、
更にエクステンションを付けることも可能。
「エクステンダー」という名称には、
「エクステンションとは違う」という
思いが込められているのだろう。
さらに2020年には、
ジャンプキュー用の
エクステンションも発売。
既製品のAIR DRIVE 2に装着し、
ロングジャンプ時の飛距離と
手球コントロールの向上を図るという、
特性を改善するためのデバイス。
(株)三木のエクステンションに対する
こだわりは、おそらく世界一だろう。
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一方、(株)アダムジャパンは全く異なる
常時装着タイプを2015年に発売する。
それが、シャフトエクステンション
『シャフトSB・EX』。
長さは65mm、シャフトと
バットの間に挟み込んで使用する。
重量のバランスポイントが
シャフト側に移動するため、
撞きづらショット時のストロークが安定、
しかもバット前半部を延長しても、
シャフト自体の特性には影響を与えず、
通常のショットでもパフォーマンスを
向上させる効果もあるだろう。
装着にはシャフトとバットのネジ規格
(現在ADAM JAPANのキューで
よく使われる「3/8-10山」のみ対応)が
一致している必要がある。
発展させれば、異なるネジ規格の
バットとシャフトを接続する
「コンバーター」の役割も果たせる。
ネジ規格に関係なくバットとシャフトを
組み合わせられたら、さぞ楽しかろう。
ただし、仮に5種類のネジ規格があれば、
その全て対応するためには
25種類ものシャフトエクステンションを
作らなければならないな。
******
日本のメーカーがエクステンションの
開発にしのぎを削るなか、
アメリカの少量生産カスタムキューにおいても、
エクステンションが後付けで
装着可能なオプションが登場している。
プレーサー社が、アルミネジ付きバンパーと
オスネジを部品として供給し、
メーカーはそれぞれ独自に
エクステンションを製作しているのだ。
また、アメリカでは、
我が道を行くプレイヤーが
独特の常設装着タイプを愛用している。
それがアール・ストリックランド。
構造は不明だが、キュー後部に
かなり長いエクステンションを付け、
さらにグリップを巻いて固定している。
おそらくエクステンションを
プレー中に着脱するのが面倒なのだろう。
道具には神経質なはずだが、
キューが長くなっても多少重たくなっても
苦にせず使いこなすのが
我らがストちゃんらしい。
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さてパート1の最後に、
オレが10年以上前から使う
エクステンションを紹介しよう。
全長64インチとなるキューは、
ポケット台のどこでも届き、
撞きづらい配置は存在しない
(標準的なキューより
6インチ=約15.2センチ長い)。
実はコレ、オレが試合中に思いついた、
プレデター社のブレイクキュー
『BK2』のバットと、
ジャンプキュー『AIR』の
後部ハンドルを外して繋げた
即席エクステンション。
どちらもジョイントがユニロックだからこそ
可能となった組み合わせだ。
欠点はジャンプキューのタップで
撞かなければならないことだけだ(笑)。
次回はパート2。
ジョイントプロテクタについて調べるぜ。
よろしくな、BD!
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