「三井川」。
直線だけで構成された
シンボリックなロゴを目にしたことが
ある読者もすでにいると思います。
2020年9月に
東京都昭島市で生まれた
三井川（みついかわ）製作所。
JR八高線の線路脇にある
工場を訪れてみると、
そこでは3名のスタッフが
きびきびと立ち働いていました。
「キュー作りが好きで経験を持った3人が集まりました。3人のキャリアを足すと80年オーバーになります」
と朗らかに笑うのは
同所の広報も担う永井博明さん。
永井さんは、
2013年『球聖戦』の
西日本代表になった経験を持つ
ポケットプレイヤーでもあります。
いただいた名刺には
「三井川製作所
ビリヤードキュー 製作・
修理・木工加工全般」の文字。
「8割以上がキュー製作。月産10本ペースで、年間120本が目標です。割合はキャロム3：ポケット1ぐらいだと思います。あとはキューの修理やその他の仕事という感じですが、特にビンテージキューの目利きと修理には自信がありますので、古いカスタムキューのリペアなどもできる限り相談にお応えしています」（永井）
三井川製作所製のキャロムキューと
後述するオリジナル5分割シャフトは
すでにお隣のキャロム強国、
韓国にも入っていて、彼の地で
高い評価を得ていると言います。
無骨で飾り気のない製作所内には
古い旋盤からコンピュータ制御の
マシンまで様々な工作機械が並んでいます。
作業台や壁際には完成を待つ
キュー達や作成途中のハギなどが
並べられていますが、
どれも銘木の風合いを活かした
華やかかつ繊細な姿に仕上がりそうで
興味がそそられます。
↑「種板」（カラードベニア）も豊富にストックしている
豊富な種板のストックが表すように、
三井川製作所のキューは
木材の切削・重ね合わせ・継ぎ接ぎによる
色表現の妙が魅力の一つ。
金属・樹脂・貴石・貝などは
あまり使われていません。
「木工全般に精通したスタッフもいますし、伝統的なスタイルから工芸的なものまで、時に新しいアイディアを落とし込みながら木製キューの可能性を追求しています。キューの材料はできるだけ国内の木材屋から調達するようにしていて、何種類かの銘木だけ海外から入れています。タップとネジとバンパーといった一部のパーツ以外ほぼ全て自所製作なのでメイドイン昭島キューですね（笑）。製作所の立ち上げから約1年が経ち、ようやく生産体制が整ってきたところです。今に至るまで、滋賀の早川工房さんにはアドバイスをいただいたり色々と助けていただきました」（永井）
…………
工場内を巡りながら
製作途中のキューを
いくつか見せていただきました。
ひと目見て驚いた
通称「超長ハギ」シリーズ。
極限まで長い剣ハギ（両サイドの2本）と
タケノコハギ（中央）。
「超長ハギのキューは三井川の売りの一つ。ハギなど各部材がシームレス（繋ぎなし）なので、1本作るのに長大な材料が必要ですし、時間と技術も求められます」（永井）
…………
こちらはまだ生産数が少ないという
通称「5タケ」。
5剣タケノコハギ・五角芯構造。
…………
名匠、ジョン・デイビスの
キュー（手前の完成品）に
インスパイアされたという
4剣＋ダブル”V”スプライスハンドルモデル。
…………
こちらはオーソドックスな
4剣ハギポケットキュー。
種板も含めると
カラーバリエーションはほぼ無限。
スリーブもボックスインレイをはじめ、
様々なデザインができるとのこと。
…………
……と、技巧と趣向を凝らした
様々なバットを手掛けている
三井川製作所ですが、
シャフト開発にも力を入れています。
「これを見てください」
と手渡されたのは、
1本の真新しいシャフトと構造模型。
こちらは三井川製作所の
オリジナル商品として
すでに製作発売を始めている
『72-5』（ななに・ご）シャフト。
その名の通り、
72度にカットしたメイプル材を
5ピース組み合わせています。
いわゆる「貼り合わせタイプ
ハイテクシャフト」です。
「剛性が強く、曲がりが出にくいのが特徴です。ピースが奇数の方が断面で見た時に継ぎ目が真っ直ぐにならないので安定しますし、5ピース全て同じ板材から取っていて比重なども揃っているのでピースごとのばらつきはかなり少ないと思います。よく自然界のものの構造には意外と『5』が多く、理に叶った強さがあると言いますよね。そこから着想を得ています」（永井）
すでに日韓のプロプレイヤーを
含めた複数人が
この『72-5』シャフトを
試打あるいは実戦投入していて、
評価は「とても良い」とのこと。
「現在いただいているオーダーは全てキャロム用ですが、ポケット用も製作出来ますのでお問い合わせください」（永井）
…………
キューを知り、木工に通じた
クラフトマン達が集結した
新進気鋭のキューメーカー、
三井川製作所。
今後三井川ロゴを
目にすることが増えると思いますので、
この名をお忘れなく。
三井川製作所の最新情報、日常風景、
製作秘話などは永井さんのFacebookで
不定期に公開されていますのでご覧ください。
三井川製作所の
キュー（キャロム／ポケット）、
72-5シャフト、リペアの相談などは
下記までお問い合わせください。
●メール：
mitsuikawacues@hotmail.com
●永井博明Facebook：
https://www.facebook.com/nagai.hiroaki.10
…………
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