〈BD〉「エクステ&プロテクタ、愛棹アクセサリPart 2」――Detective “K” season7 episode 02 

 

私の名はDetective K。

 

ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。

 

2021年最後の調査は、

『エクステンション&プロテクタ』のPart 2。

 

キューのバットとシャフトを保護する、

ジョイントプロテクタ編だぜ。

 

(→エクステンション編はこちら

 

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1987年購入のダイモンドウッド製プロテクタ
1987年購入のダイモンドウッド製プロテクタ

 

オレが、ジョイントプロテクタの

存在を知ったのは、1987年12月。

 

いまはなきプールバー、

『ロサンゼルスクラブ武蔵小山店』の

ショップで、ショーンR6を購入した、

まさにその日だ。

 

当時、オレは世の中にそんなものがあるとは、

想像もしていなかった。

 

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店員:キュー買ったのなら、ジョイントプロテクタもあった方が良いですよ。

 

K:はぁ。それ何?

 

店員:バットやシャフトを落とすとジョイント部分にダメージを与えるから、あった方が良いです。

 

K:なるほど。じゃそれも買うぜ。

 

店員:4,000円になります。毎度あり!

 

K:……(心の声:キューだけでも大変なのにプロテクタまで買わされるとは、キツイぜ。だが、コレを付けると、キューがカッコよく見える)……。

 

~~~

 

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ジョイントプロテクタの目的は、

その名の通りキューのジョイント保護。

 

その起源は定かではないが、

アルミ削り出しのプロテクタが

1980年代には市販されていたことから、

多分1970年代には存在していたと思われる。

 

1980年~1990年代製のアルミ製ジョイントプロテクタ
1980年~1990年代製のアルミ製ジョイントプロテクタ

 

その目的は、バットとシャフトを

結合しない状態でぶつけたり、

落としたりした際のダメージ回避。

 

特にオスネジのピンが重要で、

曲がったり木部にヒビが入ったりすると、

修理には多大な手間と費用がかかる。

 

メスネジ側は落とした時の保護より、

ジョイント面をふさぐことで

湿度の変化から守るという面の方が大きい。

 

プロテクタとは、プレー中は取り去るが、

普段は大事な部分を守るという、

下着的アイテムなのだ。

 

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形だけでわかるメーカー純正樹脂プロテクタ
形だけでわかるメーカー純正樹脂プロテクタ

 

キューメーカーは、

ジョイントプロテクタを自身の

キュー生産数数に合わせて製作すればよい。

 

そのため、少量生産メーカーは旋盤を使い、

様々な素材からひとつひとつ削り出していた。

 

中には、ケースから取り出す際

つまみやすくするため、

独自の形状を持たせたプロテクタを

製作するメーカーもある。

 

結果、プロテクタを見ただけで、

そのキューのメーカーを特定できるのだ。

 

また、メーカーのちょっとした気遣いや

遊び心が発揮されることもある。

 

かつて一世を風靡したコグノセンティは、

キューのデザインに合わせてプロテクタの

色を変えていた。僅かな違いが、

スペシャルな雰囲気を演出するのだ。

 

コグノセンティ純正のアノダイズド加工されたアルミプロテクタ
コグノセンティ純正のアノダイズド加工されたアルミプロテクタ

 

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メーカー名入りプロテクタ
メーカー名入りプロテクタ

 

プロテクタが、キューメーカーを特定する

要素になるのであれば、メーカーにとっても

それを利用しない手はない。

 

やがて、プロテクタの天面にメーカー名や

ロゴを入れたものが作られるようになる。

 

これはある種のプロモーションでもあり、

複数メーカーのキューを

所有するコレクターにとっては、

保管時のキューを見分ける目印ともなる。

 

何よりも、キューメーカー自身が

製作したプロテクタであれば、

それはもはやキューの一部であり、

保護という役割以上の意味がある。

 

高級モデルを入手したオーナーの

気持ちを満たす小道具ともなる。

 

さらに、キュー製作時に使用した銘木を

使用したり、飾りリングを合わせたりした

「マッチングデザイン」のプロテクタも

製作されるようになる。

 

メーカーにとっては、貴重な銘木の

端材を有効活用できるのだが、

製作には手間がかかるもの。

 

少量生産メーカーの中には、多忙を理由に

あまり積極的ではないところもある。

 

それゆえ、メーカー名入りや

銘木製のサードパーティ製

プロテクタが製作されており、

純正のプラスチック製プロテクタと

交換しているオーナーもいるのだ。

 

マッチングデザインのプロテクタ(ポール・デイトン)
マッチングデザインのプロテクタ(ポール・デイトン)

 

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一方、高級モデル1本ごとに、

そのキューのデザインコンセプト全体を

表現するほど凝ったプロテクタを

製作してきたのが、リチャード・ブラック。

 

もはやプロテクタそのものを

保護しなければならないシロモノだ。

 

マッチングデザインのプロテクタ(リチャード・ブラック)
マッチングデザインのプロテクタ(リチャード・ブラック)

 

一連の超高級モデルは、プロテクタを

装着して初めてデザインが完成するともいえ、

プロテクタを外し、バットとシャフトを

繋ぐことすら躊躇する。

 

プレーに持ち出さなければトラブルも

起きない。ある意味、究極の

キュー保護と言えるかもしれんな。

 

特に、『The Force』と名付けられた

作品のプロテクタ(およびバットの

キュー尻部分)は、もはや玉を撞く

気持ちすら起させないものだ。

 

変態キューの極み、リチャード・ブラック作『The Force』プロテクタ。このカタチは……
変態キューの極み、リチャード・ブラック作『The Force』プロテクタ。このカタチは……

 

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最後に、オレのささやかな自慢をひとつ。

 

ザンボッティ純正の、

イニシャル”K”入りプロテクタ。

 

バリー・ザンボッティが

オレのために作ってくれたものだ。

 

オーナー名などをキューに刻むのを

好まないのがバリーなのだが、

日ごろの愛顧に感謝して(笑)、

作ってもらえたものだ。

 

探偵Kのイニシャル入り純正ザンボッティプロテクタ
探偵Kのイニシャル入り純正ザンボッティプロテクタ

 

プレーには影響しないが、

キューの大事な部分を隠し、

時には過激な装飾が施され、

着けたり外したりするたびに

オーナーがときめくアイテム、

それがプロテクタ。

 

大切なパートナーとの密かな愉しみを

味わえる小道具なのだ。

 

かつて酔爺は

「キューの価値はプロテクタで決まる」

と言っていた。けだし名言だな。

 

さて間もなく2022年。

 

来年は、ビリヤードにかつてのような

活気が戻るのを期待している。

 

よろしくな、BD!

 

(→エクステンション編はこちら

 

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