私の名はDetective K。
ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。
前回の一枚革タップ編に引き続き
キューメーカーの標準タップ考察。
今回は積層タップ編。幅が広いぜ。
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キューにタップが無ければ、
玉を撞くことができず、
道具として成立しない。
よって新品のキューには、
タップが必ず取り付けられているもの。
メーカーやモデルにより、
装着されているタップは様々で、
その選択には必ず何らかの理由が存在する。
では、キューメーカーはどのような考えで
タップを選んでいるのだろうか?
今回は積層タップの歴史と重ねて、
紹介しよう。
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積層タップを標準装備する
キューメーカーは多い。
というより、現在はこちらが主流だ。
その起源は明らか。
『毛利タップ』がジナキューの
標準装備タップとなったことだ。
1990年代半ば、『モーリ』が
アメリカ西海岸に持ち込まれた。
日系人のキューメーカー、
故タッド・コハラが仲介したと
思われるのだが、正確には、
いつ、どういうルートだったのか、
分からない。
オレが知る限り1995年には、
ジナキューの標準装備タップとなっており、
同年の『BCAトレードエキスポ』では、
カリフォルニアのビリヤード用品
販売業者が、サンプルすらないのに、
『MOORI』を大々的に宣伝していた。
アメリカにおける
当時の『モーリ』の人気、
というより需要と供給の
アンバランスはすさまじかった。
エキスポだろうが
コレクターズショーであろうが、
日本人であれば
「モーリタップを持っているか?」と
必ず声をかけられたほどだ。
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ジナキューと『モーリ』。
人気の高級カスタムキューと
入手困難なタップの組み合わせは、
それぞれのステータス向上に大きく寄与した。
もともと、タップに要求される性能が
よりシビアな、スリークッションの
世界で研究・開発された『モーリ』。
アメリカではポケット用として
「横に膨らまない」「長持ちする」
「個体差が少ない」という、
品質面で評価された。
当時、『モーリ』と一枚革の
プロフェッショナルの価格差は、
10倍以上。
標準装備された高価な積層タップを
試し撞きもせず、一枚革タップに
交換する勇気を持つプレイヤーは皆無。
結果的に使い続けることで
積層タップの評判を広めることとなった。
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1990年代末には、
(株)アダムジャパンと(株)三木は、
国産メーカーの利点を生かし、
一部のシリーズに『モーリ』を標準装備した。
一方、海外では、2000年代に入っても
プレデター社の314シャフトですら、
当時の標準装備は一枚革タップ。
海外量産メーカーが『モーリ』を
標準装備するには、必要数を調達できず、
少量生産メーカーは、製作本数に見合った
個数を様々なルートで調達し、
オプション装備とするぐらいだった。
この時期、プレイヤーもメーカーも、
積層タップの特徴を理解し、
投資を惜しまなくなったのは大きい。
タイガー社やクリエイティブ・
インヴェンション社をはじめ、
積層タップ製作を手掛けるメーカーが
矢継ぎ早に誕生した。
当初それらの積層タップは
「積層であること」自体が重要であり、
高性能を追及するより、
いかに「モーリ」より安く、
かつ安定供給できるかを競っていた。
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2000年代半ばになると、積層タップは
製品数において一枚革タップを上回り、
量産・カスタム問わず多くのメーカーが、
多種多様な積層タップを装着するようになった。
例えばプレデター社は『エベレスト』を標準、
『スナイパー』と『モーリ』をオプション、
マクダモット社も自社のハイテクシャフト
「インティミディエーター」には、
『モーリ』を装備していた。
この時代、日本製の積層タップに対する
評価が高く、怪しい日本語を付けた
非日本製の積層タップもあったほど(苦笑)。
そんな状況で頭角を現したのは、
2003年に販売開始した『カムイ』タップ。
安定した品質と供給量により、
急速に世界中へ普及。数年後には
日本国内の大手キューメーカーも含め、
多くが『モーリ』に代わり『カムイ』を
標準装備するようになった。
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2010年代に入ると、積層タップの
価格競争は落ち着き、耐久性だけでなく
性能面での競争が生まれた。
その背景には、数々のハイテクシャフト
開発・製品化が挙げられる。
目標とするキューの性能を実現するためには、
タップも含めて設計しなければならないからだ。
特に2010年代後半、続々と開発された
カーボンシャフトに装着する標準タップの
選択に、各メーカーは相当悩んだはずだ。
そのため、プレデター社やゼンキュー、
ハオキューなど、自社で開発した
積層タップを標準装備するメーカーも現れた。
ちなみに、キューメーカーブランドの
タップの元祖は、「サムサラ」。
プレーキュー用と
ブレイクキュー用タップを
2000年代初めから標準装備、
さらに単品販売も行っていた。
また、自社ブランドタップを持たない
キューメーカーも、現在は
それぞれ異なるブランドを選んでいる。
例えばマクダモット社はシリーズごとに
異なるモデルの『ナビゲーター』を採用。
メウチ社は『ファイア・ウルトラスキン』
というなんだかアレな(笑)名称の
豚革積層タップを標準装備。
オレはこれらのシャフトを密かに愛用中だ。
キューテック社のカーボンシャフト、
シナジーはタイガー社の『エベレスト』、
MIKI((株)三木)の
イグナイトは『斬』を採用。
今や「シャフトを選ぶとはタップも選ぶ事」
と言えるな。
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現在は、削ってテーパーを変えることが
推奨されないハイテクシャフトや、
そもそも変えようがない
カーボンシャフトに対して、
プレイヤー自身がカスタマイズしようと
思うなら、タップ交換しかない時代になった。
しかし、プレイヤーが新しいキューを
手に入れた際、撞きもせずに標準タップを
他のタップに交換するのは勧めない。
各キューメーカーの標準タップは、
「まず撞いてみて、撞き味が合わなかったら
少し硬め、あるいは柔らかめに交換して」
というための基準となるものだからだ。
これまで述べたタップの他、
日本国内では、『BIZEN』や
『NISHIKI』、そして新素材の
『YUME』など、幅広い選択肢がある。
標準装備タップとは異なるものに
交換して違いを追求するのも、
標準タップにこだわるのもアリだぜ。
さていよいよ春到来。
ビリヤードに活気が戻るのを期待している。
タップを交換し、
新しいプレー環境に臨むとしよう!
よろしくな、BD!
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