〈BD〉53年前の3月→「第一回全日本プロ・ボウラード選手権、開催」。【シリーズ・日本ビリヤード新聞 vol.7】

 

ビリヤード珍品コレクター」の

I氏(あいし)が所蔵している、

 

約半世紀前の月刊紙、

『日本ビリヤード新聞』から、

当時のビリヤード事情を読み解く

企画の第7回。

 

今回採り上げるのは

昭和44年(1969年)4月号(第48号)。

 

現在国内で普及し、プロテストの

実技種目にもなっている「ボウラード」。

約半世紀前にそのボウラードで

初のプロトーナメントが行われました。

 

…………

 

I氏・記:

 

ビリヤードをこよなく愛する皆様、こんにちは。今回は1969年3月のビリヤード・ニュースを紹介します。

 

上の画像は当方が所有している『日本ビリヤード新聞』昭和44年(1969年)4月号(第48号)の記事の写真です。

 

その見出しには『第一回全日本プロ・ボウラード・ゲーム選手権 藤間一男選手晴れの優勝』とあります。

 

現在の日本でも広くプレーされている「ボウラード(ボーラード)」の公式試合が初めて開催されました。この大会の、開催に至った経緯と試合結果をご紹介しましょう。

 

…………

 

日本でのプール(ポケットビリヤード)は、昭和初期に普及して以来長らくローテーションの競技が中心でした。

 

そんな中、日本のプール界の第一人者である藤間一男選手が1960年代後半にアメリカを訪問した際に、現地の書店で手にした『Chalk up!』という雑誌の中でボウラードの記事を見つけました。

 

この競技の将来性を感じ取った藤間選手が帰国後にそのルールを紹介したところ、京都を中心に愛好者が増えてきました。ちなみに当初は、ボウラードは「ボウリング・ビリヤード」とか「ビリヤード・ボウリング」などとも呼ばれていたようです。

 

『日本ビリヤード新聞』昭和44年(1969年)1月号(第45号)に掲載された、藤間選手によるボウラード紹介のコラム
『日本ビリヤード新聞』昭和44年(1969年)1月号(第45号)に掲載された、藤間選手によるボウラード紹介のコラム

 

あらためてボウラードという競技を紹介しますと、的球10個を使って、ポケットしたボールの数をボウリングで倒れたピンの数に見立てて、これを10回繰り返す競技です(ボウリングと同じ計算をしますので、最高得点は300点になります)。

 

現在ではJPBAのプロテストにも採用されており、また一般のプールプレイヤーのスキルを測る競技として、広く普及しているのはご承知の通りかと思います。その「ボウラード(BOWLARDS)」の名称も、「ボウリング(BOWLING)」と「ビリヤード(BILLIRADS)」を組み合わせたものです。

 

さて、このようにボウラードの競技人口が増えたことに伴い、その大会が行われる機運が高まってきました。

 

そして『第一回全日本プロ・ボウラード・ゲーム選手権』が、昭和44年(1969年)3月23日に大阪府藤井寺市の『藤井寺パールレーン』で開催されました。出場選手は当時のプールのプロ選手12名で、予選では各選手が2ゲームのボウラードをプレイして、その合計得点の多い上位6名が決勝トーナメントに進み、最後に1ゲームを行って、最終的に3ゲームの合計得点で成績を決めました。

 

試合結果は以下の通りです(敬称略:得点は3ゲームの合計得点)。

 

優勝:藤間一男 697点

準優勝:太田紘治 597点

3位:花谷勝 578点

4位:大橋公平 576点

5位:森口信幸 571点

6位:野山修司 531点

 

『日本ビリヤード新聞』昭和44年(1969年)4月号(第48号)に掲載された、本大会の決勝トーナメントの成績表
『日本ビリヤード新聞』昭和44年(1969年)4月号(第48号)に掲載された、本大会の決勝トーナメントの成績表

 

その成績は、ボウラードの提唱者である藤間選手の圧勝という感じでした。

 

ところで、現在のJPBAでは、男子のトーナメントプロの合格ラインは3ゲームで630点以上です。それに比べるとこの第1回大会の成績に関しては、藤間選手以外は“合格”とならないのですが、それは仕方がないと思います。

 

その原因として、現在と比べてテーブルコンディションが安定していなかったこと、またボウラードという競技が日本に持ち込まれて間もない頃であったために高得点を取るための定石や戦略がまだ一般化していなかったことなどが推測されます。

 

ちなみに同年11月には兵庫県西宮市の『甲子園ビリヤード』で、アマチュア選手にも門戸を開いた『第一回全日本オープン・ボウラード・ゲーム選手権』が開催されたのですが、この大会ではアマチュアの大橋忠雄選手が初めて300点(パーフェクト・ゲーム)を達成しました。

 

この結果は『日本ビリヤード新聞』昭和44年(1969年)11月号(第55号)の第一面で大きく取り上げられました。

 

『日本ビリヤード新聞』昭和44年(1969年)11月号(第55号)に掲載された、大橋忠雄選手による公式戦初のパーフェクト・ゲームを伝える記事)
『日本ビリヤード新聞』昭和44年(1969年)11月号(第55号)に掲載された、大橋忠雄選手による公式戦初のパーフェクト・ゲームを伝える記事)

 

…………

 

最近の日本国内でのプールの公式試合で採用される競技種目は、ナインボールやテンボールがほとんどで、他にはローテーション(全日本選手権、全日本アマチュア選手権など)や14-1(全日本選手権)の試合が開催されているぐらいでしょうか。

 

ボウラードは10個のボールを順番に関係なくポケットする……という単純なルールですが、得点によってプレイヤー自身の実力が分かりますし、ビギナークラスでも取り組みやすい競技だと思います。

 

レベルが向上した現在のビリヤード界では、ボウラードが公式試合に採用されることはないかと思われますが、これからも多くの方に愛好されていくことを望みます(久しぶりにI氏もボウラードをやってみようと思いますが、はたして何点取れるやら……)。

 

…………

 

I氏、ありがとうございました。

 

また来月、約半世紀前の4月の

日本ビリヤード界のニュースを

解説していただきます。

 

…………

 

※シリーズ・日本ビリヤード新聞の

過去記事はこちら

 

 

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