〈BD〉「嬉しいのと恥ずかしいの両方です」――『GPW-3』優勝・原口俊行の談話

 

8月28日の

GPW-3 in 佐賀セッション』で、

プロ公式戦15年ぶりの優勝を飾った

原口俊行プロ。

 

大会2日後の談話をお届けします。

 

…………

 

――ルーキーイヤーの2007年『東海9ボールグランプリ』以来、15年ぶりの優勝です。

 

原口:15年……もう前回のことを忘れるぐらい間が空きましたね(笑)。今回、めちゃくちゃ嬉しいんですけど、最後のマスであれ(2番で球間違いファウル)をやってしまったので……。決勝戦の上がり際であんなことするヤツおらんでしょう?(苦笑) 嬉しいのと恥ずかしいの両方です。

 

――球間違いについてはまた後ほど(笑)。この15年、優勝への思いを募らせてきたと思います。

 

原口:ずっと優勝目指して練習を続けてきましたけど、長いこと状態が上向かず悩んでました。前回のグランプリ(『GPW-2 in 佐賀セッション』)の後、日頃親しくさせてもらっている稲川雄一プロから、「前、そんな撞き方じゃなかったと思うんです」と言ってもらえて、それが撞き方を見直すきっかけになりました。試合までの1ヶ月である程度改善できて、今回ちょうど上手いことはまった感じです。

 

――それはストロークとか技術的なものですか?

 

原口:そうです。以前はもう構えている時から先球が外れそうな気がしていて、入った時も入れた気がしなかった。自信がないまま何年もごまかしながら撞いてたと言って過言ではないです。あのままだったら今回もっと球が外れてたと思います。今もまだ完璧じゃないですけど、だいぶ自信を持って撞けるようになりました。そこが勝因の一つです。

 

――今回、1日で6試合しました。トータルの自己評価を100点満点で言うと?

 

原口:良くないところもありましたけど、優勝してますから……70~80点ぐらいですかね。

 

――足りない20~30点は?

 

原口:「終始ずっと良かった」という試合がなかったです。全体的に立ち上がりが悪かったですし、自分がリードしていた試合も終盤にミスしてもたついて相手に反撃を許してました。たぶんそれはメンタル的に自信のなさがまだちょっと残ってたからそういう展開を招いたと思います。でも、1回戦(vs 原田次朗アマ)、準決勝(vs 山川英樹)、決勝戦(大塚雄豊アマ)のように、終盤のもう後がない状況でなんとかしのぎきれたという試合もあります。展開にも助けられましたけど、試合中にだんだん落ち着いて撞けるようになったのは良かったです。準決勝のあの8番空クッションみたいに、普通成功しないようなショットが決まったりとかツキもありました。

 

↑原口プロの2つのスーパーショットが生まれた準決勝。2レールキックショットは1h03m頃から。前クッション2-10コンビは1h16m頃から

 

 

――あれはスーパーでした。たくさんの人に言われたのでは?(※3-6の相手リーチで迎えた準決勝第10ラック、バタバタ空クッション〈2クッション〉で8番を入れた)

 

原口:言われました。あれは心の中では「入ってくれ」ってお願いしまくりながら撞いてました(笑)。

 

――あの8番、選択肢はあれだけでしたか?

 

原口:いや、9番の右側から、長クッションからの左ヒネリ1クッションで当てられます。ただ、当てた後の配置(8番と手球の位置関係)はコントロール出来なくて、相手に難しい配置を残せるかどうかは運任せです。相手にもう1点もあげられない状況で簡単な球を残したくなかったし、「なんとかチャンスに変えられないか」と考えて浮かんだのがあれでした。普段やらないショットだからダダ狂いするかもしれないし、ファウルしたら恥ずかしいけど、もし厚く当たれば入るし、入れば取り切れるだろうと。

 

――クッションの狙いと撞点は?

 

原口:狙いは完全に勘です。あんなクッションシステムは知りません(笑)。撞点は上だけでヒネってません。撞いた瞬間「弱いかな」と思ったけど、クッションが速かったおかげでギリギリ届きましたね。あれは出来すぎです。

 

――その後、第12ラックの2番でセーフティされた後、前クッションで2-10コンビを決めました。あれもナイスでした。

 

原口:たまたまクッションコンビのラインがギリギリ見えて、見れば見るほど入りそうな気がしてきたんで10番をコールしました。行けるかもと思える配置が回って来ること自体、ツキがあったと思います。あの空クッションもそうですけど、10回撞いて何回入るんだという球なので全く実力だとは思ってないです。

 

――大事な局面で実力以上のものを出せた理由は?

 

原口:なんでしょう……1日を通してちゃんとしたショット、力のあるショットが出来ていたからですかね。以前は手首でコネてごまかしながら撞いてた時があって、ちゃんと回転が乗ってなかったと思います。でも、撞き方を改善したおかげでプレッシャーがかかる場面でもしっかり撞けるようになったのかなと。それでイメージ通りにボールが動いてくれたんだと思います。

 

――決勝戦も接戦になりました。序盤は相手(大塚雄豊アマ)がリード。

 

原口:見ての通り、相手の方がいっぱい球を入れてるのになぜか競ってました(苦笑)。相手は素晴らしいショットを続けていて、見ていても球が抜ける感じがなかったです。ただ、速いクッションでのポジションには苦しんでいたのかもしれません。それでハイボールをミスしてくれてスコア的には競った展開になりました。

 

――中盤までは相手のプレーを見る時間が長かったですが、焦りませんでしたか?

 

原口:今までならすごく焦ったと思うんですけど、今回はなぜか落ち着いていて、回って来たらなんとかなる気がしてました。今年、西のグランプリでは今回含めて3回連続でアマチュアさんが決勝戦を撞いているので、「プロのメンツを保たなあかん」という思いは少しありました。でも、「負けたくない」「苦しい」と感じることはなく、前向きな気持ちでいられました。

 

決勝戦での原口プロの球間違いファウル。1番を入れて2番を忘れて3番にポジション。3番キスインから上手く4番に繋いだがもちろんこれはファウル
決勝戦での原口プロの球間違いファウル。1番を入れて2番を忘れて3番にポジション。3番キスインから上手く4番に繋いだがもちろんこれはファウル

 

――最後の2番の球間違いファウルについてお聞きします。6-5リーチで迎えた第12ラック。原口プロはブレイク5番インの後、1番を入れてテーブル中央へ手球を出しました。1番を撞く時すでに頭に2番はなく、3番にポジションしたんですか?

 

原口:そうです。ブレイク直後に配置全体を見た時は2番はあったんです。あの配置は4番が難しかったじゃないですか、6番が近くにあって。ただ、3番から上手く繋げば4番は単品で近い方のコーナーに取れるなと。それで「3番3番……」と意識していたら……2番がいなくなりました(苦笑)。

 

――日本中のビリヤードファンがライブ配信を見ながら「2番2番!」と言っていたと思いますが、原口プロは集中しきった様子で3番に構えていました。

 

原口:僕には皆さんの声が聞こえず(笑)。なんなら「3番への出しが短かったからプラン変更。3-6キスインで6番をどかして4番を逆コーナーに取ろう。……よし、そこそこ上手いこと3番撞けたな」って思ってました。そうしたら相手に「あの、2番が……」と。

 

――「まさか」ですね。

 

原口:「ウソやろ!? こんな場面で普通やる?」と恥ずかしいやら何やら色んな気持ちで……。ひょっとしたら相手も動揺していたかもしれません。

 

――相手が4番でミス。そこから原口プロが取り切って上がりました。

 

原口:取り切られてヒルヒル(6-6)になるだろうと思っていたので、ターンが回って来て単純に「やっぱり今日はツイてる」と思いました。そこから取り切れたのは……試合後に「球間違いした後、よく気持ち切らさず撞けたな」と人に言われたんですが、なんというか、もう突き抜けてしまってるじゃないですか(笑)。「どんなミスでも、上がりのマスで球を間違うこと以上に恥ずかしいことはないな」と思ったらだいぶ落ち着けました。

 

――ゲームボールを入れた瞬間は?

 

原口:15年ぶりだし、優勝したらガッツポーズしたいなと少し思ってたんですけど、さすがに気恥ずかしくて……(※配信を見ると遠慮がちに腕を挙げていた)。たぶんこれからもあの球間違いのことは言われると思いますが、話のネタにもなったし、優勝できたし、全てひっくるめて良い試合だったと思います。

 

――わかりました。今後の目標は?

 

原口:まだ優勝したことのない試合は全部優勝したいです。すぐに『ジャパンオープン』があるので(原口プロは関西一次予選〈9月3日〉に出場)勝ちたいですし、もちろん『全日本選手権』も勝ちたいです。

 

――最後に、応援してくれた人達に一言。

 

原口:まずは、コロナ禍の中でグランプリ開催に尽力してくださった会場の『セッション』様と大会関係者の皆様に感謝しています。感染対策も含め、準備段階から色々とご苦労があったと思います。ありがとうございました。そして、日頃から応援してくれているスポンサー様やお店のお客さん、家族・友人知人の皆さんにもありがとうございましたと伝えたいです。また早く優勝して、BDさんにもまた談話を載せてもらえるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。

 

(了)

 

Toshiyuki Haraguchi

1980年9月8日

奈良県出身・愛知県在住

JPBA41期生(2007年)

2007年『東海グランプリ』優勝

2022年『GPW-3 in 佐賀セッション』優勝

使用キューはPREDATOR

使用タップはKAMUI Tip

専属:ビリヤード&ダーツカフェ R.T.B(愛知県犬山市)

 

 

…………

 

2022 GPW:

 

5月 GPW-1 in 愛知ダマデノッチェ(神箸渓心アマ/竹中寛)

7月 GPW-2 in 佐賀セッション(北谷好宏/重田寛之アマ)

今回→ 8月 GPW-3 in 佐賀セッション(原口俊行/大塚雄豊アマ)

 

 

 

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